必読。理念経営を成功させる理念浸透の本質
といえば、当然のように必要なもの、と思われていますが、本当でしょうか?
問いから、その本質は見えてきます。
「本当に必要なのか?」。
「必要ならばなぜなのか?」。
経営理念とはどういうものかを見ていき、
その必要性やその存在理由などをみていきましょう。
「理念浸透」に生かせるヒントがあるはずです。
目次
- ○ 経営理念の定義と役割
- ○ 理念浸透に必要なファーストクエスチョン
- ○ ビジネスと経営理念は歴史視点で想像するとわかりやすい
- ○ 経営理念が必要な真の理由
- ○ 経営理念を「形」にする必要性
- ○ 理念浸透活動はなんのためにやるものなのか?
- ○ 経営理念にいのちを吹き込む
- ○ 動機善なりや? 私心なかりしか?
- ○ まとめ~経営理念浸透を実現するために問い続ける
- ・執筆者紹介
経営理念の定義と役割
経営理念とは、一般的には
「経営者の経営哲学や信念、行動指針や目的などを明文化し、その企業が果たすべき使命や、基本姿勢などを社内外に向けて表明するものである」
と説明されています。
細かい補足説明はなくても、会社にとって軸となる大切なもの、ということはわかります。
このような経営理念には、大きく3つの機能(役に立つこと)があります。
1、どの方向へ進むのかがわかる(Where)
2、どんな基準で企業活動をするのかがわかる(How)
3、迷ったときに立ち戻れる場所となる(What)
社員とともにいるという観点から言えば、
1、社員に対して、会社の進むべき方向を示す(Where)
2、社員に対して、どれくらいの意識の高さ、行動のレベルを求めるかを示す(How)
3、社員に対して、本来やるべき仕事を示す(What)
を共有することができます。
これにより社員全員の意識、行動をひとつにします。
ひとつになった仕事が現れた結果として、お客様や社会への商品・製品・サービスとなり、会社全体の存続や発展につながります。
社会側の観点から言えば
1、この会社が目指している社会のありかたがわかる(Where)
2、この会社がどのように責任を果たそうとしているかがわかる(How)
3、この会社がどんな責任を果たそうとしているかがわかる(What)
社会側から見ると、会社を信頼する源でもあり、会社をチェックする基準でもあります。
経営理念には、会社が社員とともに、社会とともに現代社会で成り立つために、大きな役割があることがわかります。
理念浸透に必要なファーストクエスチョン
さて、そんな経営理念ですが、
やはり悩みとしては、せっかくあるにもかかわらず、「経営理念が社員に浸透していない」ことが大きい。
これまで見たような素晴らしい機能があるにもかかわらず、活かしきることが難しいのも経営理念です。
浸透させるための「やり方」はいろいろあります。
標語、スローガン、研修、サークル活動…などなど。
とはいえ経営理念は会社の軸になるもの。
それほど大切ならば、「やり方」を求める前に、
もうすこし経営理念そのものに向き合ってみましょう。
経営理念たるものの正体がもうすこしはっきりすれば、さまざまな「やり方」もこれまで以上に効果を発揮するのではないのでしょうか。
逆にいうと正体がわからなければ、経営理念“なんて”、蜃気楼のようなぼんやりしたあいまいなもの。決して浸透しないからです。
だから、この問いが重要です。
「経営理念は本当に必要なのか?」
たしかに、大きな役割を果たすことはわかりました。
(だからわたしも、経営理念浸透のお手伝いをしています。)
しかし、日本だけでも約400万社の企業がありますが、経営理念なんて意識しなくても、浸透させようとしていなくても、「儲けている」会社も数多くあります。経営理念をつくっていない会社さえもあります。
それでも経営理念は、本当に必要なのでしょうか?
社会的に法的に様々な監視の目にさらされている
上場企業だけでいいのではないでしょうか?
こんな風に改めて問いかけてみると、
「必要ではないかなあ。でも、無いというのもなあ。」
こんな気持ちを抱くのではないかと思います。
結論を先に述べると、実は、わたしは、その素朴な気持ちが大切だと考えています。
が、それはもう少し見てからにします。
ビジネスと経営理念は歴史視点で想像するとわかりやすい
まずはビジネスというものから、わかりやすいかたちで見ていきましょう。
そもそも、ビジネス、というのは、その構造はシンプルなものです。
必要なものを、必要な人同士で交換し合う。
これだけです
遺物の語るところでも、縄文時代でも、九州の太平洋側の小さな離島のピンク色の黒曜石が、北陸、東北などの日本海側の遺跡で見つかったりしています。
もちろん東北の人間が九州まで採掘しにいったわけではなく、当時から、人と人、地域と地域の、必要なもの同士の交換のネットワークが存在していたのです。
現代でも全く一緒ですよね。
多少、身の回りのことが高度になっているだけ。
必要なものを、必要な人同士での交換がなりたてば、ビジネスは成り立つわけです。
縄文時代から数千年もたつと、
資本主義がはじまりました。
はじまり(諸説ありますが)と言われるオランダやイギリスでは、株式会社というものができました。
多くの人から資金を集めて、大きくなった資金を元手に商売を行い、得た利益を投資家と山分けする。
という仕組みです。
それにより一人で抱えるリスクは減りますので、資本主義に参加する人がますます増えて発展し、現代へいたります。
一方投資家のお金を預かる責任が生じますので、やろうとしているビジネスや自分たちがつくる会社のことをきちんと説明する必要があります。
投資家としても、危ないビジネスや危ない人にはお金を預けようとは思えませんので、このあたりの説明責任は、経営理念の一種と言えるでしょう。
日本の歴史も振り返ってみると、やはりありました。
近いものとしては戦国大名が定めていた、戦国家法があります。
武田信玄の「家訓十二箇条」ですとか、
北条早雲の「早雲寺殿廿一箇条」、
朝倉家の「朝倉孝景条々」などは有名です。
かれらは領国の経営者ですし、家法には信念や心構えも書かれていてこれも経営理念の一つと言えます。
もちろん、大名ではなく、商人たちにも、代々経営理念、家訓は伝わってきました。
近江商人の「三方良し」もあれば、三井家などは有名です。
これらは、家臣や奉公人、子々孫々が守るべきものとして意識や行動をひとつにまとめるものとして活用されていました。
戦国大名でも、昔の商人たちでも、生きるか死ぬかレベルでの危険度ははるかにリスクの高い時代ですからかかわる人々がバラバラの状態は存続できません。
ただ、バラバラの意識や行動を一つにしたいからだけではありません。
一見荒っぽいように思える戦国時代でも、多くの大名は領民のことを気にかけていました。
力だけで支配していたのではないのですね。
米や麦の取れ高の面倒、収穫の時期の戦は避ける、戦で傷ついた兵士の家族への補償、災害への対処など、さまざまに気にかけていたことがうかがわれます。
領民は元ですので、国・領民全体が健全に発展しないと、戦国大名そのものも存在できないわけです。そのためにも、大小さまざまに家法がつくられました。
領民や領民がつくる国全体を守るためにも家法はあったのですね。
経営理念が必要な真の理由
ここまで、いったんまとめます。
必要なものを交換し合えれば、たしかにビジネスは成り立ちます。
交換の仕組みをうまくつくれたら、交換の数や規模も増え、効率的にできますので、結果“儲け”も増えていきます。
しかし見過ごしてはならないのは、交換し合うのは「人同士」だということ。
交換は一人だけで成り立ちません。
だれかがいて(投資家、領民、奉公人、お客様…)はじめて、交換はなりたち、存続も発展もできます。
だから、だれかとともにいるということ、人と人同士が接し、交換しあうことがなりたつためには、「信用・信頼がある」ことが必須なのです。
縄文時代でも、「この人や部族は信頼できるだろうか?」「よし、このブツは、品質がいいことを示そう。」こんな信用や信頼を確かめるやりとりはあったはずです。
子ども時代でも、「〇〇ちゃんにゲームを貸しても返ってこないから、もう貸さない!」「ごめん、次はぜったいに返すから」なんて、やりとりはよく見かけますし、あなたもいろんな経験もしていませんか?
経営理念は、だから
「人と人との信頼のやりとりのためにある」
と言っていいでしょう。
経営理念を文章では掲げていないところでも、「信頼のやりとり」は必ず行っています。そうでないと、交換自体が成り立たないからです。
その場合に信頼になりうるものは、文章になっているものだけではありません。
「これまでの付き合いからの人柄の良さ」であったり、「約束を守ってきた実績」であったり、形にならないものも多数あります。
これらは目に見えない経営理念といえます。
そういった意味で経営理念は文章に表さなくてはいけないものでもありませんがビジネスを成り立たせ続けるために、「信頼のやりとりのために」必要なのです。
なお、ここでいう人と人とは、
会社とお客様、
会社と取引先、
会社と社会
経営者と社員、
経営者や社員とその家族、etc…
その会社やビジネスにまつわる人すべてです。
全員がそれぞれの立場で、自分と相手のために必要なものを交換し合っている同士ですから、経営理念はこれらと信頼をつなぐものでもあります。
「人と人との信頼のやりとりのためにある。」
これがまずは経営理念が必要な理由です。
経営理念は文章であることもあれば、人柄や示してきた実績であったりもしました。
その信頼を土台として交換はますますスムーズに進むようになります。
経営理念を「形」にする必要性
社員のいる会社はさらに、経営者、社員、、、、かかわるひと全員が信頼関係で結ばれる必要があります。
それにより、経営者と社員が全員で一体となった「会社」と「お客/社会」という信頼関係も結ばれていきます。
もちろん人は考えていることがそれぞれ違いますので、仕事に対する考え方も向き合い方も違います。
また形に見えない経営理念、「人柄」や「実績」といったようなものやその都度のつどの口での訓示は、とらえ方も人によって違います。
だから経営理念は、形にしておくほうが好ましいですし、「何が自分たちの信頼になるのか」が明確になり共有されるので、経営者―社員一体の「会社」として、長く存続、発展することができます。
理念浸透活動はなんのためにやるものなのか?
ここまで見てくると、社員に対する経営理念浸透も再考する必要がありそうです。
経営理念を、会社をまとめるものや、社員の意識を変えるものとだけとらえるのは、間違いとはいえませんが、一方向のみに傾いています。
それではなかなか浸透しない。なぜなら理念を定めたり、浸透させようとすることで実現させようとしているのは、「信頼」だから。
信頼というのは双方向のできごと。お互いに信頼をつくりあうための経営理念です。
経営者にとってみれば、ともに進む仲間として「理解や共感」をもってもらい、社員にとってみれば、自分がはたらくべき場所として「理解や共感」を感じるものとして。
この「理解と共感」=「意味」をお互いに感じられないとき、それぞれがバラバラになりますし、―お金のやりとりだけが信頼というより信用をつなぐもの―ひどい場合には、信頼のシステムとしての会社は崩壊です。
経営理念は、
「人と人との信頼のやりとりのためにある。」
この本質こそが、理念経営には重要です。
「この経営理念、この理念の浸透活動は果たして社員(お客、社会…)との信頼を強くするものになっているのか?」
そう問いかけ続けることが経営理念を浸透、言い換えれば“経営理念を活かす”ために大切だということがわかります。
経営理念にいのちを吹き込む
さて、そのうえで、
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「必要ではないかなあ。でも、無いというのもなあ。」
こんな気持ちを抱くのではないかと思います。
結論を先に述べると、実は、わたしは、
その素朴な気持ちが大切だと考えています。
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こんなことを先にのべました。
実は「人と人の信頼」には忘れてはいけない「人」がいるのです。
「この人」にまで踏み込むことで、“経営理念を活かす”から、“経営理念にいのちを吹き込む”になります。
「この人」とはだれか。
そう、自分自身です。
そもそも、この理念で経営しよう、こういった信頼関係を結ぼうと志した自分自身です。
経営は、さまざまな問題の連続です。そのさまざまな問題を乗り越えながら、ただ生活する、だけでなく社員やお客さまを幸せにしようとする。
自分自身の人生の責任を引き受ける自分自身です。
「経営者」という「人」と、「自分自身」という人の関係です。
そんな自分自身は、
どうしてその理念に至ったのでしょうか?
なぜその理念を大切にするのでしょうか?
すなおで、直接的に、偽りのないものは何でしょうか?
この
「魂(あえてこう呼びます。こう表現しか言いようがない)」
ともいうべき、ものは何でしょうか?
これが「自分自身」にとってすなおでまっすぐで力強いものであるほど、経営理念は、その「魂」が吹き込まれたものになります。
本来である「自分自身」と、社会的役割である「経営者」が経営理念を通して、一致、または一直線につながるとき、それはどうしてもやりとげなければならない「ミッション」となるのです。
つまり「自分自身」との信頼関係の強さが、問題や困難を乗り越えながら、さらに成長し、かかわる人たちみなとの信頼関係を結ぼうというエンジン、情熱になります。
動機善なりや? 私心なかりしか?
縄文時代であっても、「愛する家族や部族をもっとよく生活させたい」という思いが、遠くの部族とも交換をしていくためのエネルギーの元となったでしょう。
この「自分自身」との信頼関係がなければ、弱ければそんな問題や困難に向かおうという気もなくなります。
改善、進歩、向上、成長、、、、そんな気もなくなってきます。
それはまずは身近な社員たちへ、そして社員たちが届ける製品やサービスへもつながり、結局会社全体がそうなっていくことになります。
稲盛和夫氏は、事業を始めるとき
「動機善なりや、私心なかりしか」
と必ず問いかけて、「自分自身」が「善し」と心の底から答えられないとやらないといいます。
「経営者」と「自分自身」の信頼関係を結べる人は、「社員」と「(社員の)自分自身」の信頼関係にも心を向けられる人です。
それが社員に届いたとき、社員にとって会社は、仕事をして給料をもらう場所から、大切な人生を過ごす場所になります。
こういった思いは、過ごした会社への誇りですとか、伝説となったりして、代がかわっても受け継がれることになります。
まとめ~経営理念浸透を実現するために問い続ける
経営理念は、「人と人との信頼のやりとりのためにある。」
経営理念の浸透活動は、
つねにこの本質を念頭に入れておく必要があります。
この本質を深めるには、
経営理念への「理解と共感」=「意味」を
深めていくことが大切になります。
そんな経営理念の原点には、「自分自身」がいます。
「自分自身」の「魂」が経営理念となり、
「経営者」とつながるとき、
「自分自身」との信頼ができていきます。
それは、ひいては、
社員たちの「自分自身」とつながり、社員にとっては人生の大切な場。
顧客にとっても、顧客の「自分自身」につながった感覚を覚え、
感動や深いロイヤリティや応援となって現れることとなります。
経営理念は、ほとんどの人が必要だと答え普通の答えはありますが、
これからのわたしたちは、
「本当に必要か?」
「必要ならばそれはなぜか?」
そこまで、つねに問い続けることで、理念経営が実現するといえます。
P.S.
経営理念浸透のトピックをこれからも
ブログでお届けしますので
お忘れないようブックマークしてくださいね。
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執筆者紹介
オフィスオントロジー
代表 友成治由
人と組織の可能性と創造性を引き出すメンター
人と会社を伸ばすメンタリングの専門家
10年超にわたる起業家育成や変革人財育成経験から得た実践知と、意欲心理学によるメンターメンタリングで人が本来持っている意欲、可能性、価値を引き出す。
主体性/リーダーシップ開発、メンター育成、メンター制度構築、チーム活性化などを支援。
哲学存在論専攻。
宮崎県出身。今もなまりはとれない。
経営メディア『経営プロ』にて執筆コラム掲載。
コラム「メンタリングで人や組織の可能性を引き出す」など
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