信頼と共感のリーダーになる必須教科書。「サーバント・リーダーシップ」
その組織(コミュニティ)が小さいか、大きいかは関係なく、人間がふたりあつまる場所にいるならば、もうリーダーです。
ロバート・K・グリーンリープの「サーバント・リーダーシップ」は、わたしの見立てでは、わたしたち日本人こそ、しっくりくるリーダーの在り方ではないかと考えます。
目次
- ○ 現代で必須修得事項のリーダーシップ
- ○ 「サーバント・リーダーシップ」は弱いのか?
- ○ 日本人と「サーバント・リーダーシップ」
- ○ 「サーバント・リーダー」13の資質
- ○ 「サーバント・リーダーシップ」組織をはじめよう
- ・執筆者紹介
現代で必須修得事項のリーダーシップ
いわゆる西洋的なリーダーシップ、ストロングでハードなものがリーダーと思われがちです。たしかにそれも重要な要素のひとつだす。
それ以上に、この時代の人間の集まりとしての組織のためのリーダーシップ。
つまり、そこにいるメンバー全員が納得し、かがやき、協力し合うような、これからの変化の時代、創造性の時代、「いかにひとりひとりの可能を引き出せるか」の時代の、リーダーシップならばサーバント・リーダーシップは必須修得事項です。
サーバント(” servant” )とは、辞書的には「召使い」と書かれていますが、ここではもう少し本質的な意味で、「奉仕する」「献身する」といった意味です。
ですので、サーバント・リーダーシップとは、トップに立って自分がみんなを引っ張っていく、というよりも自分は組織のために奉仕する、献身する(以下、奉仕する)役割を与えられたひと、いうリーダーの在り方です。
たしかに形式的な立場は一番トップでありそれなりの権限ももっている。
では、その立場や権限はなんのためにあるのか?
それは、
「顧客を幸せにし、社員を幸せにするためにある」
というものです。
いいかえれば、リーダーとはもっとも顧客や社員を幸せにできる立場や権限を与えられている人なのです。
Amazonのおける「サーバント・リーダーシップ」の紹介文にはこう書かれています。
自らの良心に従い、より良い世界へ導くことを自身の責務と信じ、周囲の人々にとって、組織にとって、優先されるべきことが為されているか、常に心をくだく――そうした「サーバント」としてのリーダー像を描いた本書は、混迷の時代の中、いっそうその輝きを増している
要にして肝たる紹介だと感じました。
わたしは組織活性化、社員活性化に使うためにこのようにも言い換えて伝えています。
「組織やメンバー全員の人間としての成長と成功のために、サーバント(奉仕する人)として、信頼と共感にもとづいて導くリーダーの在り方」
リーダーでも、ではなくリーダーだからこそ、つねに組織全体・つねにひとりひとりのために良心に問いかけ続け、自分のあり方を決め続ける存在です。
「サーバント・リーダーシップ」は弱いのか?
重要性をわかりながらあえて「旧来型」と呼びますが、旧来型のストロングでハードなリーダーシップとくらべて、「サーバント・リーダーシップ」は弱いのではないか? もっといえば甘いのではないか? と思わるかもしれません。それでは組織をまとめることはできないのではないか、と。
たしかに「サーバント・リーダーシップ」は簡単なものではありません。
「サーバント・リーダーシップ」が組織を動かす“武器”であり原理は「信頼と共感」だからです。
旧来型リーダーシップの武器は「立場と権限」であり、それが有効である原理は「欲と恐怖」になります。つまり、強いものに弱いものが従うといった構図です。
このリーダーシップには利点があるのですね。
つまり、わかりやすく・動かしやすく・即効性があります。
だから多くの場合、旧来型リーダーシップを選びますし、効果があるように見えます。
しかし旧来型リーダーシップの、もとにあるメンバーにとってはみずから動いているというよりも「動かされている」感覚を持ち続けますから、「立場と権限」から解放された瞬間、その関係は終わってしまいます。現代の組織におけるさまざまな不満、ストレス、ときには心の問題はこういった根本的な「人間を軽視した」ズレにあるのではないでしょうか。
一方「サーバント・リーダーシップ」は「信頼と共感」です。
クサい言葉でいえば「心」でつながるリーダーシップです。
メンバーは、リーダーがどれだけ自分たちのために心を砕いているかをわかっています。リーダーは最後は自分たちのために責任を引き受けてくれることがわかっています。だからリーダーを信頼し、尊敬します。
リーダーはみんなのためにと思いながらも、メンバーこそがリーダーのためにとまとまり続けるのです。
だからこそ「サーバント・リーダーシップ」は決して簡単なことではありません。もしかして“真に強い”人のためのものかもしれません。
「サーバント・リーダーシップ」は、つねに自分自身の在り方に問いかけてくるものですから、より謙虚に、より信念をもって自分自身に向き合い続ける必要があります。
日本人と「サーバント・リーダーシップ」
とはいえ、わたしたち日本人は、実のところ、自然にその“核”はつかめるのではないかとも感じています。
そもそもこの本が西洋で絶賛されたのは、西洋には旧来型リーダーシップを良しとする風潮があったから、一見すると真逆に見えるような「サーバント・リーダーシップ」が新鮮にも映ったのでしょう。
しかし日本においては、見渡せば意外にそんな方が多くいることに気づきませんか?
主張はしなくてもいつもチームのために心配りをしている人や、地域のために黙々と活動をしている人、何か悩んでいる人がいればお人よしともいえるほど「大丈夫?」と声をかけて励ましてくれる人などなど。
単純に日本良し、西洋悪しと二分論で区別するものではないのですが、すなおに「どうしたらこの場、この人たちが輝くかな」と考えた場合に、わたしたちが古来持ってきた中にも大いに再度学び直すものがあるのではないか? というきっかけにはなります。
とはいえ、リーダーですから、「率先する」つまり「リードする」という組織全体の先頭にたって未来を指し示すという役割もしっかり自覚しているも「サーバント・リーダーシップ」です。
ごくごく単純に言えば、旧来型のストロングでハードなリーダーシップと、日本が大切にしてきたような「みんなのために」「黙々と」「やわらかく、笑顔で」のようなものの良さを同時に認めながら、より現代にふわさしいものとして探究したのが「サーバント・リーダーシップ」と言えるでしょう。
「サーバント・リーダー」13の資質
「サーバント・リーダーシップ」では、「サーバント・リーダー」の資質として13の項目を挙げています。
1,より良き方向へ導く創造的な意思
2、不安、不明確な状況でもみずから率先する
3、大きな夢がある、大きな夢を示す
4、他者の声に耳を傾け、理解する
5、想像力を喚起する
6、俯瞰しながら最良の奉仕をする
7、他者を受容し、共感する
8、知ることができないものを感じ取り、予見する
9、ありのままを見つめ、気づきをえる
10、ときには一人ずつ説得する
11、道中の挫折に関わらず、ひとつひとつ成し遂げる
12、概念化する
13、問題は外にあるのではなく、つねに自分自身にある
そして「サーバーント・リーダーシップ」が決して旧来型リーダーシップに劣らず、ストロングでハードだとわたしが思うのは、この言葉があるからです。
すなわり、サーバント・リーダーとは、
「ひとを傷つける能力がありながら、そうはすまいと思う人々」
立場も権限も、ひとによっては性格的な強さもありながら、それをみずから、とことん顧客やメンバーの幸せのために奉仕しようとする意思。
人間的な弱さを知っているからこその、強さです。
ここには、ピーター・ドラッカーのいう、Integrity(真摯さ、高潔なる人格をともなった責任)とも通じるものがあります。(同じ、ですよね。)
「サーバント・リーダーシップ」組織をはじめよう
「サーバント・リーダーシップ」、ぜひ一度お読みください。
事例がたっぷりの本ですので、分厚いですが読みやすい本です。
先にも書きましたが、わたしたちにとっては、身近な実感としても理解しやすい本だと思います。
大企業であれ、ほんの数人の小企業であれ、「サーバント・リーダー」の“割合”が多い企業が発展し続ける企業だと確信しています。
上下関係なく「サーバーント・リーダー」同士がお互いに「サーバント」しあう組織。
はじめてみませんか?
P.S
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執筆者紹介
オフィスオントロジー
代表 友成治由
人と組織の可能性と創造性を引き出すメンター
人と会社を伸ばすメンタリングの専門家
10年超にわたる起業家育成や変革人財育成経験から得た実践知と、意欲心理学によるチェンジメンタリングで人が本来持っている意欲、可能性、価値を引き出す。
主体性/リーダーシップ開発、メンター育成、メンター制度構築、チーム活性化などを支援。
哲学存在論専攻。
宮崎県出身。今もなまりはとれない。
経営メディア『経営プロ』にて執筆コラム掲載。
コラム「メンタリングで人や組織の可能性を引き出す」など
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