突破する最強集団。会社変革ならホットグループを生み出せ。
そう強く言ってもいいでしょう。
それくらい、ホットグループを生み出せるかどうかは、とくに人のエネルギーこそが会社のエネルギーとなる中小企業では重要です。
市場も社会情勢も急激に変わり、また社員自体が「辞めることが普通の考え」になっている現在では、いかに人の力を結集できるかにかかっています。
重要キーワードである「ホットグループ」とは何か、どうしたら生み出せるのか。
今回は、それをご紹介します。
目次
なぜ今ホットグループなのか?
「ホットグループ」は、とりわけ着目されてきたのは二十一世紀に入ってからです。
ジーン・リップマンブルーメンとハロルド・J・レヴィットによる『最強集団ホットグループ奇跡の法則』(以下、『HG』)が、あのピーター・ドラッカーの翻訳でも有名な上田惇生さんの編訳によって紹介されました。実際ドラッカーも「これは重要な本だ」と評したそうです。
この記事は上記書籍に基づいています。
ホットグループは、文字通り「熱い集団」です。
いつの時代でも現れてきたグループではありますが、現代はとくにこれを生み出せるかどうかが、企業の分かれ目とも言っていいでしょう。
それには3つの理由があります。
一つには、イノベーションの重要性が高まっていること
二つには、知識労働者が中心的存在となり、あらゆる組織が知識労働者による献身的なグループ活動を必要とするになったこと。
三つには、あらゆることが複雑化したこと。
です。
いかに差別化され、独自化された商品、サービス、オペレーションで存在感を発揮するか。
イノベーションの劣る企業は、急速に淘汰されてしまいます。
そんな現代では、社長ばかりにぶらさがって、管理だけ強化して社員たちは言うことを聞くだけという組織では、対応しようがありません。
また情報量が莫大になり、見知らぬところが突然競合になり、社会情勢も複雑怪奇。
そんな中で必要なのは、「ひとりひとりの創造力、突破力」をいかに結集するかにかかっています。
上記は現代に特有な理由ですが、どの時代でも、また国を問わず似たような状況はありました。
組織が危機に陥ったとき、または新しい突破口が必要なとき、どうそれを乗り越えるか、突破するのか。
このような「課題解決」のための手引きになるのが、「ホットグループ」です。
大企業はもちろんですが、中小企業にこそ切実な、そして効果が非常に高いキーワードと言えるでしょう。
ホットグループとは何か?
「ホットグループ」とは、単なる会社の中の一組織ではありません。
または、単にタスクフォースやプロジェクトメンバーでもありません。
もちろん、上記グループが「ホットグループ」になることもありますが、まず記憶しておいてほしいのは、「ホットグループ」とは、会社上の一単位としてただ人を集めて組織化、チーム化すればできあがりというものではないということです。
「ホットグループ」は、本来いわゆる会社組織体の話ではなく、おそらく人類が共同で何かをしようとしたときから現れてきた、人間の共同体制の一つであるということです。
ですので、『HG』を読んだわたしの解釈ではありますが、「組織論」というよりも「人間論」として受け止めた方が、本質をつかむことができます。
「ホットグループ」とは、
「義務感あるいは帰属意識ではなく、仕事そのものによって動機づけられた自生的かつ随時的の生きた存在である…(中略)彼らが全身を投げ打つのは、好きな仕事、創造的な仕事に対してである。」
もしあなたが創業社長ならば、まさに創業時はこれではなかったでしょうか。
仕事そのもの、これを成功させることそのものがおもしろく、楽しく、そして真剣に情熱を傾けてきたことでしょう。
他の例では、ガレージではじめたAPPLE創業時のスティーブ・ジョブズやスティーブ・ウォズニアックたちも挙げられています。
腐敗した修道院に抵抗してあたらしい組織を立ち上げた修道女たち、アメリカとソ連の核戦争危機であったキューバ危機に対応したひとたちなどが挙げられています。
NHKで放映された板プロジェクトXは、ホットグループを紹介してきた番組とも言えます。
『HG』ではさらに、その意味をより明確にのべています。
「ホットグループとは組織図上の一単位ではない。それは、メンバーに共有されるミッション中心の心のあり方である」と。
情熱をもって成果を挙げる、もっといえば「ミッションへの信念と献身」それがホットグループの特性であり、要はホットグループとは
「ミッション至上主義集団」
のことを言います。
「ホットグループをホットグループたらしめるものは呼び名ではない。それは重要と信ずるものへの脇目もふらぬ献身である。」
「燃え上がるやつら」であり、「熱き魂が伝染」し、「世界を背負っている感じ」を持ち、そこには人を「惹きつけてやまない地場」をもっています。
ただし、永続的な組織単位ではないため、ミッションが完了すると「風のごとく消える」ものでもあります。
しかし、一度でも「ホットグループ」を経験した人は、その経験を一生の思い出として思い出せる「黄金の時間」となるのです。
「ホットグループ」。もうイメージはつかめることと思います。
わたしにももちろん思い出があります。あなたにはもっとあるかもしれませんね。
ほとんどの日常は流れていくだけかもしれませんが、「ホットグループ」であった時間は「伝説」の時間としていつまでも語り草とし続けることでしょう。
組織が危機に陥ったとき、または新しい突破口が必要なとき、どうそれを乗り越えるか、突破するのか。
「ホットグループ」を生み出せる能力は、人で成り立つ会社にとって最強の能力の一つとなります。
ホットグループの作り方
さて、そんな「ホットグループ」ですが、どうやったら作れるのか。
実は『HG』には、このステップを踏めばホットグループの出来上がりといった具体的なレシピが書かかれているわけではありません。
ですので、ざっと読んだだけでは「結局どうすればいいかわからない」という破目になりがちです。(そんな感想を残している人もいます。だから、amazonの評価は意外に高くない。)
でもそれは「ホットグループ」がいわゆるハウツーではなく、「人間のあり方」だと証明しているともいえるでしょう。「ホットグループ」を会社の中に生み出したければ、わたしたち自身にホットグループを生み出そうとする明確な意志と勇気が必要です。
そう、勇気、です。
なぜならば、「ホットグループは帰属意識(会社)にではなく、ミッションに奉ずる」からです。『HG』でも何度も言葉を変えて述べられていますが、ホットグループは、嵐であり異質であり、管理の枠に収まらないものです。
激走列車とも言われており、『HG』曰く「激走列車を止めるな」。
それでも、ホットグループを求めるのか。
まずここがわたしたちに問われています。
その前提で、以下、たしかにレシピはありませんが、ホットグループを生み出しやすい促進行動や環境については述べられています。
「ホットグループを生み熱を持たせるには、第一に制約を和らげ、第二に刺激することである。」
そして
「組織をかき回し、切迫した感覚と目的意識を植え付ける。窓とドアを開け外の世界で吹き荒れる乱気流を感じさせ、オフィスの外に出して嵐の中へ誘い出さなければならない。顧客、取引先、提携先、競争相手のいる現場の最前線へ出て行かせる。こうすることで何かが起こる。」
環境面でいえば、以下のようになります。
「ホットグループは自由で開放的な環境でよく育つ。緊急時に活躍する。危機の際に奇跡を起こす。任務へのコミットがあるために、外部から強いられる最小限のルール以外、決まりごとは無用である。」
「ホットグループ」は、こういうやつらなのです。
運営上必要な制約や管理は自分たちでつくり上げる。
自由と挑戦を好む。
緊急性があって自由と活気のある環境で活躍する。
階層のきつい息苦しい風土では元気をなくす。
いかがでしょうか?
あなたの会社で、そんな促進行動や環境をつくり出せてあげられるでしょうか。
そう、勇気の問題なのです。
ホットグループのリーダーであるとは?
中小企業の場合、ホットグループでは経営者自身がリーダーとなることがほとんどでしょう。
大企業であっても、みずからがホットグループのリーダーとなってチームを率いなければならないこともあるでしょう。
そのため『HG』では、ホットグループのリーダーの条件もお話されています。
もう容易にわかるでしょうが、ホットグループのリーダーの必要条件には、階級や勲章なんてものはありません。
端的にいって、ホットグループの「リーダーの一流と二流を分けるもの」とは、「気力、献身、情熱、そして何といっても、メンバーをしてともに働きたいと思わせる力」です。
わたしたち自身がホットであることによって、メンバーを惹きつける力を持たなければなりません。
これがどんなタイプであっても、一流のリーダーになる絶対条件です。
ミッション至上主義集団のリーダーになるとは、リーダー自身がもっともミッションを信じ、身をささげる存在であるということなのですね。
そのうえで、個々人の個性や立場によって、「指揮者型(自分がプレイング・マネージャーとしてひっぱっていく)」「パトロン型(見守りながらメンバーを導いていく)」「炎の番人型(自分自身がぜったいあきらめない)」と別れていきます。
タイプ別になるとどれが優れているというわけではなく、より自分に適合するタイプを選びとっていく形になるでしょう。
上記でいえば、指揮者型リーダーとパトロン型については、心得がそれぞれ十二条、十条とありますので、興味あれば本にあたってみてくださいね。
あなたの会社の現状は?
企業にいる「嵐のようなやつらが集まった」ものがホットグループ。
そんな嵐が結果的に多くの人を巻き込み、ときには世界を変えていくことになります。
ホットグループはたしかにミッション集団なのですが、ミッションを分析してミッション実現に必要な人材を配置するというやり方では失敗します。
そうではなく、「ミッションに惚れて一緒にやってくれる人は誰か」からはじめなければならないと説いてます。
つまりミッションに必要な人ではなく、ミッションに奉じてくれる人こそがホットグループのメンバーであり、それは、あなた自身のミッションの伝道によって探し、集めなければなりません。
もうおわかりしょうが、これを経営理念と言い換えても、ビジョンと言い換えても同じです。
ミッション(経営理念、ビジョン…)は、ただ掲げるものではないのです。
また、あれとこれを用意すればうまい料理の出来上がりでもありません。
あなた自身が、熱をもって共鳴させ、共感や感動や使命感を呼び起こすことによって、社員たちの熱い心に火をつけていくことが必要なのです。
はじめのうちは、ミッションに惚れ共鳴していくのは、ほんの数名でしょう。
もしかしてその数名は実力者ではなく、まだまだ未熟な社員かもしれません。
しかしまさに、その心で共鳴した数名こそが「ホットグループ」なのです。
仮に能力はまだまだ未熟であっても「ホットグループ」であるならば、それをプロジェクトとして成功へ導くのはリーダーの役割ですから、自分の役割として覚悟を決めればいいだけですね。
「ホットグループ」は会社を変えます。
「ホットグループ」は不可能だと思われたことを成し遂げます。
「ホットグループ」は自分たちとそこに巻き込む人たちを、一段も二段も高く成長させます。
もし、あなたの会社の現状が、
「組織が危機に陥ったとき、または新しい突破口が必要なとき、どうそれを乗り越えるか、突破するのか。」
であるならば、ホットグループ作りは真剣に考えてもいい優先課題だと提案したいと思います。
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執筆者紹介
オフィスオントロジー
代表 友成治由
人と組織の可能性と創造性を引き出すメンター
人と会社を伸ばすメンタリングの専門家
10年超にわたる起業家育成や変革人財育成経験から得た実践知と、意欲心理学によるメンターメンタリングで人が本来持っている意欲、可能性、価値を引き出す。
主体性/リーダーシップ開発、メンター育成、メンター制度構築、チーム活性化などを支援。
哲学存在論専攻。
宮崎県出身。今もなまりはとれない。
経営メディア『経営プロ』にて執筆コラム掲載。
コラム「メンタリングで人や組織の可能性を引き出す」など
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