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思考法/意識法

思考の盲点を見つける練習問題。「江戸城の正門はどこだ?」

目次

江戸城に学ぶ経営者やリーダーの気づかぬ先入見

知らぬ知らぬ間に
わたしたちは、
“悪い意味”で賢くなってしまいます。

そのため、
本来わかっていたはずのことがわからなくなり、
見かけの重要さに振り回されてしまいます。

つい最近、わたしも、
そんな「振り回され」に気づかされたのは、
「江戸城」のおかげでした。

『土地の文明』という竹村公太郎さんのこの本は、
とにかく知的刺激がいっぱいでした。

ここで質問です。

あなたは、
江戸城、つまり今の皇居は、どこが正門だと思いますか?

皇居を訪れたことのある方や、
テレビでの一般参賀風景を見たことがある方ならば、
東京駅から皇居を見た、
あの二重橋前の広場の門や
同じ通りの大手町の大手門を思い浮かべるでしょう。

わたしもそうでした。
そちらが正面であり、その門こそが正門であると。

しかしながら、
天皇陛下、皇后陛下が外出なさるときに出る門は、
そちらではなく、二重橋や大手門からすると少し外れの、
石垣ではなく土手の上にたっている半蔵門だというのです。

しかも半蔵門は、皇太子夫妻でさえ、
普段通ることはない。

皇太子夫妻が通るときは、
御子がお生まれになったときのご報告や、
外国外遊時のご報告という
特別な場合のみ。

半蔵門こそが、
その城の“城主”が通る門だったのです。

半蔵門をわたしももちろん何度も見ていますが、
にわかに信じがたい。
どう見ても、大手門や二重橋方面の方が正面でしょ、と。

そう思っていると、
その謎の答えは、
江戸城の古地図にありました。

江戸時代に書かれた江戸城は
「御城」と書かれています。

ところがよくよく地図を見ると、
違和感がぬぐえません。

わたしたちが普段イメージする地図からすると
その「向き」が違っていることに気づくのです。

ふつうわたしたちが見る
地図の感覚からすると、ちょっと変です。

「御城」の文字が、
東が御、西が城という風に
90度傾いて表示されているのでした。

わたしたちも顔を傾けて眺めないと、
「御城」と書いているとはわからないくらい。

ところが、
「ちょっと変」だったのは、
わたしの方だったのです。

竹村さんに教えられました。

わたしたちは、
もう、なんにも意識することなく、
地図は北が上であると思っています。

説明されなくてもあたりまえのように
地図とはそういうものだと思っています。

しかし、北が上、という地図方式は、
実はあくまでも西欧渡来の考え方なのです。

昔の西欧人は自国を中心として、
自国が上に表示されるようにして地図を作りました。

その西欧人が大航海時代など、
世界中を探検して世界地図を作って
世界にひろめていって
今のデファクトスタンダードになりました。

しかしながら、
かつての世界の国々は、もちろん日本も、
いろんな地図を自分たちが理解しやすいように作っていました

江戸の古地図もそうです。
もっとも大切なものを中心として
土地の様子がわかるように作られています。

そうすると、
すなおにありのままに見ると、
古地図に書かれている方角こそが
当時の人の方角です。

つまり、
この古地図の通り、
新宿という西の方から
東の江戸城の方角を望む方角こそが
「当時の正しい方角」であり、
その方角の門こそが「半蔵門」だったのです。

実際に歩いてみても、
半蔵門から新宿方面には青梅街道が通っています。

それは当時の「尾根道」。
見晴らしがよく、水はけもいい安全な道。

徳川家康が、三河という西から
東の関東にはいったときに見えた光景こそが、
尾根道の高台の向こうそびえる江戸城だったのです。

大手門は、
大名や旗本たちが出入りする門なのですが、
実は大手門がある大手町周辺は、
「低地」にあたります。

だから大名や旗本たちは、
いつも「将軍を見上げる形」で
頭を下げて門くぐるようにできているのです。

土地の形をたくみに利用して、
江戸城や将軍のご威光を自然自然に見せつける。

歴史とは、まことに人間の知恵の集積だなあと、
びっくりしつつ、興奮しました。

大手門前を通る時には、
わたしはご威光にふれふす大名になった気分で、
よろこんで江戸城を見上げたくらいです。

皇居の穏やかな雰囲気はわたしも大好きで、
大手門から入れる皇居のお庭には
ときどき昼寝をしに行くくらいです。

歴史の重みとともに、
まったくあたらしい見方を知ったことにより、
ますますまた皇居に行きたくなりました。

わたしたちは、
あたりまえのことだったり、
外から持ち出されてきた「標準だろう」というものに
ずいぶん侵されています。

もちろんそれらは
便利だから受け入れているわけですが、
一方、

「本来、自分たちにとって大切なこと、
大切な『正門の方角』ってどっちだったっけ?」

ということを忘れるもとにもなります。

しかも、古地図をみて
古地図の方がちょっと変だと思ってしまうくらい、
「自分都合の解釈」でものごとをみてしまいます。

その「自分都合の解釈」でさえ、
どこかのだれかの解釈に侵されていることも
意識することなく。

大切な事実は、
すでにわたしたちの目の前にあるものです。

わたしたち、自分自身が、
目の前にあるものを見えなくしているだけです。

「ありのまますなおに」

というのは、実に難しい。

サングラスをかけて世界を見ても、
サングラスそのものに気づかないようなもの。

それくらいわたしたちの普段の
「あたりまえ」は、
わたしたちの「思考」や「感情」を規定しており、
ものごとを見えなくさせています。

ではどうするか。

わたしたちは、幸い、
意識することを努力することはできます。

「ありのまますなおに」は、
難しいことであると意識しておくこと。

そうすることで、
すくなくとも
「わたしはサングラスをかけている」
ことは意識することができます。


そのように意識しながら、
「本来の正門の方角」
を見つめていくと、
あるときサングラスの存在に気づき、
見えていなかったものが、
見えるようになってくるものです。

考える、感じるというとき、
<外>を見るのではなく、
<内>を見るのは、
そんなサングラスに気づくための方法。

「大切なものは目に見えない(星の王子さま)」

のであったとしても、

いつもすでにそこにあるのです。

江戸城写真は、「いちの足跡」より転載
https://ichi-ashiato.at.webry.info/200902/article_18.html


P.S.
これからもブログをお届けしますので
お忘れないようブックマークしてくださいね。

執筆者紹介

オフィスオントロジー
代表 友成治由

人と組織の可能性と創造性を引き出すメンター
人と会社を伸ばすメンタリングの専門家

10年超にわたる起業家育成や変革人財育成経験から得た実践知と、意欲心理学によるチェンジメンタリングで人が本来持っている意欲、可能性、価値を引き出す。
主体性/リーダーシップ開発、メンター育成、メンター制度構築、チーム活性化などを支援。

哲学存在論専攻。
宮崎県出身。今もなまりはとれない。

経営メディア『経営プロ』にて執筆コラム掲載。
コラム「メンタリングで人や組織の可能性を引き出す」など

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