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価値力/提案力

売上増加なら「お客様のために」はやめよう。

目次

「お客様のために」のおかげでお客様が離れていった話

もしあなたの会社で

「お客様のために」

という言葉で営業や販売、サービスを
していたとしたら、
ちょっとお待ちください。

もしかして、
その言葉を変えれば、
もっとよい結果が生まれる可能性が高いのです。

「お客様のために」は、
かえってお客を離れさせていっている
原因かもしれません。

お客様中心で行くならば、
別の言葉を使う必要があります。

学生時代の話です。

わたしは、一時期
デパートの物産展で、
魚の干物屋さんでアルバイトをしていました。

干物の屋台づくりや商品ならべなど、
裏方の準備もやりながら、

「いらっしゃい、いらっしゃい」

メインとなって販売していました。

こっそり自慢すると、
相当売れまして、
干物屋のご主人からも
「卒業したらうちに来い」と
“内定”までもらっていたくらいです。

売れた理由としては、
ひとつには若いお兄ちゃんが一生懸命、
大きな声で売っていたから
ということがあるでしょう。

お客さまはデパートに来る
主婦がほとんどでした。

「頑張ってるね」と声をかけてくれたのは
うれしいものでした。

もうひとつは、痛いお叱りを受けて
気づいた、“ある発見”のおかげです。

当時はわたしも若いなりに

「お客様のために」

と、思ってやっていました。

がんばっていこう、
お客様もよろこんでくれている。
そう思いながらやっていました。

あるとき、干物屋の主人に
裏へと呼ばれました。

主人は言いました。

「複数のお客様から、
きついクレームをもらった」

と。

「え? なんで?」

わたしはどうしてクレームが来て
自分が叱られなければならないのか。
戸惑ってしまいました。

わたしにはまったく心当たりがなかったのです。
売り場に立っていて、お客さまから
不満や文句を言われた記憶もありませんでした。

思い返しても全くわかりません。
戸惑いから混乱状態になりました。

そんな混乱ぶりを主人は見ていましたが、
答えの出せそうのないわたしの姿をみて
こう教えてくれたのです。

「おまえは、
販売ケースに置いてある商品ではなく、
裏にある保存ボックスから取って、
お客さまに渡しただろう?」

「はい。それはやっています。」
 
「それだよ。
お客様は、
『古い商品を渡された』
とクレームを言ってきたんだよ。」

わたしは、ハッとしました。

物産展でもデパ地下でも、
販売ケースには
見栄え良く商品が並べられています。

スポットライトにも照らされて、
いかにもおいしそうですよね。

その並べ方にも各お店の工夫があり、
お客様もその魅力的なディスプレイに
惹かれて「おいしそうだな」と思って
買ってくださいます。

わたしもきれいに干物を並べ、
販売していました。
そのうまそうな干物の展示を見て、
「そのウルメイワシ、ちょうだい」
と買ってくれるわけです。

そこまではよかったのです。
そのあとがダメだったんですね。

こういうことです。

展示ケースに並べられた干物は、
売れたら売れた分だけ、
保存ボックスから補充して追加してきます。

お客様回転の速い時間は、
並べたらすぐに売れていきますので、
問題は全くありません。

しかし一日の中では
人通りも少なくなり、
回転がゆるい時間帯もあります。

わたしはその時間帯に
こんなことを考えました。

回転のゆるい時間は、
展示ケースの商品は並べて外にさらされたままだ。

ライトに照らされ続けて、温まるかもしれない。
またデパートの中とはいえ、
漂う細かいほこりも気になってしまう。

「お客様のために」

を思うと、このままでよくないのではないか。

ならば、
温度管理もしっかりされて、
ライトにもホコリにもさらされていない
保存ボックスから直接わたせばいいのではないか。

そうしたら新鮮できれいなまま、
商品をお渡しできるはずだ。

これはいい!
「お客様のために」いいことができる。
そんな風に考えていました。

ところが、です。

この考えは。
お客様の考えとは
全く違っていました。

お客様はこう思っていたのです・

「わたしは、
このきれいに並べられた、
このおいしそうな干物がほしいのだ。

しかし、あのお兄ちゃんは、
わけのわからない箱から干物を取り出した。
わたしはきっと、古い商品をわたされたのだ。」

お客様の考えと全く違うことに
びっくりしましたが、
たしかに売り場でのお客様の様子を思い出すと、
納得することができました。

お客様は商品を選ぶ際に、

「これはおいしそうだね。」
「いい魚だね」
「どう食べたらおいしい?」

そんな声をかけてくれていました。

お客さまは、
目の前に並べられた干物を見ながら、
あれこれ想像していたのです。

きっとその日の夕食や
次の日の朝食のことを思い浮かべていたのでしょう。
家族が「おいしい」とよろこぶ姿を
思い浮かべていたのでしょう。

お客様の目で見れば、
展示ケースの干物のおいしそうな様子こそが
お客様が買いたい理由になっていたのです。

ところが
実際に買おうとすると
若い兄ちゃんがもってきたのは。

わけのわからない箱から取り出した
「おいしそうでもなんでもないただの干物」です。

その瞬間、
お客様が買いたかった理由は
打ち砕かれ、失望を味わったのです。

わたしの考えた「お客様のために」は、
ひとりよがりだったことに気づかされました。

ひとりよがりの
「お客様のために」の代わりに
必要な言葉は、

「お客様の立場で」

でした。

お客様の立場で、
あたかもお客さまと一心同体になったように
お客様の目線になることが大切だったのです。

どういうことでしょうか。

「お客様のために」の主人公は、
「わたし」です。
それは一歩間違うと

「ひとりよがり」
「押し付け」
「勘違い」

に転換してしまいやすいものです。

しかも本人はいいことをしていると
思っていますから、
よけいにたちが悪く、気づくのも遅い。

一方

「お客様の立場で」

は、主人公はお客様です。

「お客様の立場で」考えることによって、
お客様側の視点や、考え方を理解しようとします。

「お客様のために」の場合、
自分の目は自分にくっついていますが、
「お客様の立場で」の場合、
自分の目はお客様側にくっついているのでs。

一流の営業マンやマーケッターは、
自分が売るだけでなく、
自分もお金を出して買う、
ことをよくやります。

自分もお客さまの立場になることで、
実際に商品を選ぶ感覚、
サービスを受けたときの感覚、
買った後の感覚
など、お客様のリアルな感覚を
理解し、吸収しているわけです。

「お客様のために」から「お客様の立場で」。

もし社員は一生懸命にやっているのに
どうして空振り感があって
成果につながらない場合、
言葉を変えてみると
いい結果に生まれる可能性が高いです。

ちょっとした言葉の違いに見えますが、
自分目線からお客様目線へと
思考の向きが真逆になります。
だから発想や行動が変わり、
結果も変わってくるからです。

一度見直してみることを
オススメします。

ちなみに、クレームを受けたわたしは、
その後どうしたかと言えば・・・

やっぱり保存ボックスから渡していました。

でも、一点、
違いがありました。

展示ケースの中で時間がたった干物。
それをそのまま渡すのはやっぱり忍びない。

だから、そんな干物を選ばうとされている場合は、

「そちらは時間がたっていますから、
こちらの新鮮な方をおわたししますね。」

一言添えてから、渡すようにしたのです。

もうそれだけで、クレームはなくなりました。
かえって、

「わたしもそれをちょうだい!」

他のお客さまも
追加で買って販売数が増えていったのです。

「いい勉強をしてるなあ」

と思ったものです。

★補足

最強は、

「お客様のために」一生懸命になろう

そのためにも、

「お客様の立場で」考えよう。

ですね。

P.S.
これからもブログをお届けしますので
お忘れないようブックマークしてくださいね。

執筆者紹介

オフィスオントロジー
代表 友成治由

人と組織の可能性と創造性を引き出すメンター
人と会社を伸ばすメンタリングの専門家

10年超にわたる起業家育成や変革人財育成経験から得た実践知と、意欲心理学によるメンターメンタリングで人が本来持っている意欲、可能性、価値を引き出す。
主体性/リーダーシップ開発、メンター育成、メンター制度構築、チーム活性化などを支援。

哲学存在論専攻。
宮崎県出身。今もなまりはとれない。

経営メディア『経営プロ』にて執筆コラム掲載。
コラム「メンタリングで人や組織の可能性を引き出す」など

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