理念経営が現実になる。「非」現実的な夢のパワー。
とくに、現状を変えたいと願い、または再興したいと願うならば、そんなときこそ非現実的なほどの夢をもちましょう。
非現実的な夢は、経営の大きなパワーになり、あなたが見ている風景が変わってきます。
目次
- ○ 非現実的な夢が必要な現実的な3つの理由
- ・1、ひとは自己概念で生きている
- ・2、解決策のレベルは持っている概念で決まる
- ・3、やりたくなければやれないから
- ○ なんのために経営しているのか?
- ・執筆者紹介
非現実的な夢が必要な現実的な3つの理由
非現実的な夢を持つことをすすめるのは、現実的な3つの理由があります。
ひとつには、ひとは自己概念で生きているから。
ふたつには、解決策のレベルは持っている概念で決まるから
みっつめには、やりたくなければやれないから
1、ひとは自己概念で生きている
わたしたちは、おそろしいほどに、自分をどう思っているか、という自己概念で生きている生き物です。
なぜおそろしいほどなのか?
有名な「スタンフォード監獄実験」というものがあります。
これは、まったく普通の学生をふたつにわけて行われました。
ひとつのグループは「看守」、もうひとつのグループは「囚人」とします。
看守には看守服を着せて看守口調で囚人に接してもらいます。
逆に囚人には囚人服を着せ、あたかも本当に罪を犯したかのように受刑者としてのふるまいをしてもらいます。
そんなリアルな環境を整えたのですが、もちろん実験ですから、全部「演技」です。
しかし、演技だったはずの「看守」や「囚人」は、次第に本物のように、いや本物の「看守」「囚人」となっていき、看守役の学生は囚人役への懲罰を何事もなく行えるようになり、囚人役は、おかれた立場に耐え切れず気がふれてしまうほどになってしまいました。
結果、本来2週間だった実験は、6日間で打ち切られるほどになりました。
わたしたちは、自分自身や自分の置かれた環境をどう認識するかで、自分自身の意識や行動もそのように変わってしまう生き物です。
非現実的な夢は、これまで現状を変えられなかった、変えようとしても悩んでいた「自分という枠」を超えて、あたらしい「自己概念」を獲得することができます。
現実的な目標しか掲げられないのは、「今の現実的な自分」の枠でしか物事を見ていないからであり、「今の現実にふさわしい」自己概念になっているからです。
現状を変えて突破するには、突破にふさわしい自己概念をもつ必要があります。
非現実的な夢は、現実的ではありません。
だからこそ、自己概念をひろげることができます。
今認識している現実という足かせがはずれて、もっと自由に、もっと幅広い視点でいまの会社の状況や問題点を見つめ直すことができるのです。
非現実的な夢を持てる、ということは、「今の現実」という足かせを自分で外してあげられることなのです。
2、解決策のレベルは持っている概念で決まる
現状を突破するためには、現状の問題を解決して、さらに新しい道を見つけていく必要があります。
が、しかし、今までの問題解決策で解決できなかったから、現状があるわけです。
問題解決策は、現状のレベル沿ったものしか生まれません。
経営者ならよくわかるかと思いますが、たとえば会社で問題が起こった場合には、営業マンは営業の立場での問題解決策になりますでしょうし、製造は製造部門からの問題解決になります。
もちろん個々だけみれば筋は通っているのですが、経営視点から見るとどうにもバラバラでレベルが低く感じてしまう。そんなことありませんか?
問題解決策は、現状のレベルに沿ったものしか現れないのです。
見ている風景によって出てくるものが変わってきます。
同じ問題でも、世界レベルで見ている人もいれば、単に現場処理レベルで見ている人もいます。出てくる解決策の発想もまるで違ってきますよね。
非現実的な夢は、まさにあなたや会社自身のレベルを大きく高くするものです。
非現実的だから、一見すると解決策は浮かびません。しかし、だからこそ、現状の発想の枠を超えた、ブレークスルーとなる創造力を発揮したり、意欲を発揮したりするのです。
かつて本田宗一郎氏は、まだ小さい中小企業のころにミカン箱の上にのって、「世界一のオートバイレースで一位を取る」と宣言しました。
どうやればいいかなんて、当時の状態はわかりようもありません。当時の現実に即せば「無理だ」としか言いようがありません。
しかし、それでもその非現実的な夢をなんとかしようとするからこそ、発想や行動のレベルが全社で変わり、技術は発展し営業はパワーを発揮したのです。
問題解決の世界で、「売上高10%改善よりも、売上高2倍の方が簡単だ」ということもありますが、それは、後者の方が発想や行動レベルがまるで変ってくるからなのですね。
3、やりたくなければやれないから
そして3番目がもっとも重要なのですが、そもそも人間は、やりたくないものはやれないからです。
「やりたい!」と思えば、どんな困難な状況でもイキイキと没頭することができます。
しかし「やりたくない」と思ってしまったら、どんなにお金も人脈もあっても、心の奥はつらいだけで本来の10%もパフォーマンスは出ないものです。
心理学的に言えば、人間は欲求充足を求めて生きている、といえます。
「やりたい」という欲求は人間の本能であり、自然と100%の力が出せますが、「やりたくない」というのは欲求充足を傷つけている状態ですから、生身(なまみ)の存在として痛みしか伴いません。
つまり「やらされ感」、もっとも人間が、意欲の減退を起こしてしまいます。
現実的な目標が「やりたい!」と思えることの延長だったら、もちろんどんどん現実的にやっていくことをお勧めします。
しかし現実的な目標にやる気がまったく怒らなかったとしたら、やはり人間という自然な存在として、どこかその設定が間違っているのですね。
こんなときに「それでもそれが経営だから」と自分自身にウソをついてしまっては、痛みは伴いますしパフォーマンスは10%程度しか出ませんし、いいことは全くありません。かえって、経営者のその痛みやねじれが社員に伝わり、組織がギスギスして崩壊しかねません。
非現実的な夢とは、小さい大きいではなく、あなたが純粋にワクワクする夢、です。
叶えることがワクワクというよりも、思い浮かべるだけでワクワクしてしまうようなものです。
少年の頃の夢かもしれませんし、家族をもって、社員をもって出てきた夢もしれません。
すなおに膨らんでいき思い描いて行けるもの。それが非現実的な夢です。
今、非現実的な夢、とは述べましたが、そんな夢を描けているときはその夢は本人にとって何よりもリアルで何よりも生きる目的になります。
だから、目の前の現実的な問題に、彩りがうまれ、解決しようという発想や意欲がわいていくのです。
非現実的な夢は、あなたがワクワクするためにあります。
ワクワクするからこそ、現実的な課題に、イキイキと取り組むことができるのです。
ワクワクが先、現実は後。
これを強調します。
なんのために経営しているのか?
あなたはなんのために経営しているのでしょうか?
売上を上げるため? 利益を上げるため?
いえ、それは「手段」ではないですか?
売上を上げることによって、収益を上げることによって、「本当は」何を実現したいのでしょうか? どんな夢や幸せを感じたいのでしょうか?
「本当は」の部分こそが、人間を前に進める原動力です。
現実操作的な経営論は、たしかに高度で知的で冷静に見えますが、それが「主」となることで苦しんでいる経営者は本当に多いものです。
それはあくまで「従」。
わたしたちは生身の人間です。
「主」とすべきは、生身の人間としての取り組みです。
非現実的な夢はそんな生身の人間が心からワクワクして、経営、いや、この世界に取り組むためにあるのです。
P.S
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執筆者紹介
オフィスオントロジー
代表 友成治由
人と組織の可能性と創造性を引き出すメンター
人と会社を伸ばすメンタリングの専門家
10年超にわたる起業家育成や変革人財育成経験から得た実践知と、意欲心理学によるチェンジメンタリングで人が本来持っている意欲、可能性、価値を引き出す。
主体性/リーダーシップ開発、メンター育成、メンター制度構築、チーム活性化などを支援。
哲学存在論専攻。
宮崎県出身。今もなまりはとれない。
経営メディア『経営プロ』にて執筆コラム掲載。
コラム「メンタリングで人や組織の可能性を引き出す」など
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