変革に成功する企業は「歴史」のとらえ方が違う
「変わり成長する会社」と「変われずきっかけをつかめない会社」には、根本的といっていい違いがあります。ぜひその違いに気づいてください。
目次
変わるきっかけをつかめない会社こそが考えるべき視点
かならずしも革新的な企業だけでなく、積み重ねがあったり、歴史がある企業こそ、「過去を絶つ」ことが必要です。
革新的な企業は、これまで世の中になかった商品やサービスやコンセプトで勝負していますので、そもそも過去というものを意識することはないかもしれません。
しかし歴史がある企業は違います。
社歴もそうですし、商品やサービスも長年愛されており、人や組織に対する考え方や在り方にも「これだ」というものがあるでしょう。
そんな、積み重ね・大事にしてきた理念は、これからも永く大切にされるべきものです。
わたしも、そんな企業や経営者や社員たちと出会うとうれしくなってしまいます。
ここでいう歴史とは100年200年までいきません。企業の生存率は10年で6.3%ですから、もう10年も市場で支持され続けられてきたら立派な歴史ある誇りある企業です。
そんな歴史ある企業は永く支持されてきただけに、「変化すること」の大切さはよくわかっており、理念を守りつつ変化し続けることをモットーとしている話はよく聞きます。
でも、それが「成功物語」として世の中に知られているのは、ごく一部であり、多くの歴史ある会社は、なかなか変革・復興・成長のきっかけをつかめていないことも事実です。
細かいレベルで見ていけば、さまざまな個別の理由があります。
今回考えたいのは、根本的なところでの、過去への対処の仕方、なのです。
変われない会社のもつ根深い観念
過去への対処とは、いくつかの意味を含みます。
積み重なる問題へ対処はもちろんですが、商品やサービスへのこだわり、理念を守り続けることもそうです。
こだわりや理念を「過去」と言うのは抵抗あるでしょうが、事実として、今よりも昔に現れたものです。
そんな「過去」の対処には、対処するわたしたち側の「考え方」がモロに現れるのです。
成長する会社も、きっかけをつかめない会社も、どちらもそんな「過去」を大切にしています。
こだわりや理念は会社の軸となりますから重要です。
しかし両者には違いがあります。
「過去を大切にする」の意味が180度違っているのです。
成長する会社は、実は、時間というものを過去から流れてくるものととらえていません。
通常、一般的には、時間とは、過去-現在-未来の順番で流れていると思われています。
過去の原因が現在になり、現在の行為が未来をつくる、と。
さまざまな問題対処法は、一般的にこの時間観にしたがって行われています。
・原因を過去にさかのぼって見つける
・過去の過ちを改善する
・過去からの努力を積み重ねる
などですね。
この対処法は、平時の状態では有効でしょう。なぜならば平時とは、昨日も今日も明日もそれほどの変わりはない状態であるからです。
前提として、同じ毎日、またはそれほど変わらない毎日がずっとつづくことが前提となっています。過去と現在は、同じ平面上にあるのですね。
だから、過去に重要だったこだわりや理念は、そのまま形を残して保存されており、現在も「同じように」重要であるという前提になります。
きっかけをつかめない会社は、この「一般的時間観」で対処をしているのです。
問題の対処法は、固定された過去からの延長にとらわれてしまっています。
・過去の原因は変えられないものだ
・過去の過ちは変えられないものだ
・過去の努力は変えられないものだ
そういう固定されたものから問題解決法や価値創造が発想されているため、見えている幅が狭くなります。たしかにこだわりや理念に対する思いは強く頑固になりますが、錆び続けていく鏡をいつまでも抱きしめているようなものです。
変わり成長する会社のもつ180度違う観念
成長する会社は、発想が逆なのです。
成長する会社は、過去とは現在・未来が作るものと思っています。
よくよく考えて見れば、過去というモノはもうありません。
あるのは、過去に対する記憶や認識しかないわけです。
そして、そんな記憶や認識は、現在や未来がどうであるかによってまるで変ってきます。
・過去の過ちも、現在がよければ、「成長のための踏み台」になります
・過去の原因は、現在がよければ、気づくこともありません
・過去の努力は、現在がよければ、つねに未来をみて更新し続けようと思います。
つまり、過去というものは、自分たちが現在、そして未来を輝かせることによってはじめて大いなる意味をもつことをわかっているのです。
だから、こだわりや理念というものを、未来の視点からみています。
大切にしているこだわりや理念が、未来になお一層輝くためには、今どうあるべきなのか?
こだわりや理念が、今ここでこそ活かされるためには、わたしたちは今どうあるべきなのか?
つねに「未来-現在-過去」の順番で、ものごとをとらえ、対処しているのです。
子育てのようなものだと考えたらわかりやすいでしょう。
子育ては、その子の将来をみて今必要なことをしていくはずです。
たとえ幼児期はどんなにかわいかったからといったって、幼児期と同じであれ、と、成長してからも接する人はいないはずです。
子供が大切だということは全く変わりません。
しかしながら、子供を未来の視点から今どうしてあげるべきかを考えることによって、つねにその対処法は「変化・変容」し続けているはずです。
会社の変革、改革も、会社を大切に思うからこそ、過去ではなく、まず思いっきり未来を見るのです。未来の姿をありありと想像し、こうありたい、こうなりたいという未来を描くことによって、大切にしているこだわりや理念をどうすればもっと輝かせることができるかが見えてきます。
この視点をもつことによって、それ以外の「変なプライド」は捨て去っていいことに気づくでしょうし、より大切なものを大切にしたくなるでしょう。
観る視点の定め方で現在も過去も変わる
未来の一点が定まれば、これからの生き方や過去の意味が一瞬にして変わる(たとえば、自分の死を自覚した時など)ことがあります。
わたしたちとは、実のところ、そんな未来というものをどう認識しているかで、現在や過去を決めている存在なのです。ふだんは、それほど意識していないだけで、構造はいつでもおなじです。
だからこそ、ちょっと意識して「未来の観点から見て、いまどうあるべきか」という視点を持つと、問題の見え方や考え方までが変わってきます。
変化しつづける、というのは、過去や現在がよろしくないからではなく、あなたやあなたの会社らしい未来のためにするものなのですね。
最後に蛇足。
物理学的に哲学的にも、時間というものが「過去-現在-未来」で流れているのは、錯覚であることがわかってきています。「時間観」というものは、ふだん意識されないですが、“ものすごく”わたしたちの日常生活に影響を与えています。
ときには、ふと、未来に、過去に自由に意識を飛ばして考えるのは楽しいものです。
P.S
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こちらも役に立ちます(「一言で社員のやる気を変えられるリーダーの言葉術とその秘訣とは」)
執筆者紹介
オフィスオントロジー
代表 友成治由
人と組織の可能性と創造性を引き出すメンター
人と会社を伸ばすメンタリングの専門家
10年超にわたる起業家育成や変革人財育成経験から得た実践知と、意欲心理学によるメンターメンタリングで人が本来持っている意欲、可能性、価値を引き出す。
主体性/リーダーシップ開発、メンター育成、メンター制度構築、チーム活性化などを支援。
哲学存在論専攻。
宮崎県出身。今もなまりはとれない。
経営メディア『経営プロ』にて執筆コラム掲載。
コラム「メンタリングで人や組織の可能性を引き出す」など
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