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コミュニケーション

リーダーなら。人の心を動かすコミュニケーションの大要諦

人の心を動かすコミュニケーションには要諦があります。

テクニックとしてとらえても構いませんが、ただし、相手のいることですので、そのココロをよく落と仕込むことが大切だ、ということだけは念頭においてお聞きください。

目次

自分勝手なあなたという人間

あなたは自分勝手な人間ですよね。

わたしもそうです。
自分の目からしか見えないし、自分の耳からしか聞こえません。
自分の脳みそで考えたことで生きています。

わたしたちは、人間存在という構造上、どうしても「自分が主役」になってしまう生き物です。

だからふだんのわたしたちのコミュニケーションも、自分が主役のコミュニケーションにどうしてもなってしまいます。

もしあなたが経営者だったりリーダーだったりしたら、社員やグループメンバーがいることでしょう。
あなた経営者やリーダーの立場として、社員やメンバーに話をします。

「あれは、どうなった? いついつまでにやってくれよ。」
「そういうことじゃない。これはこういうことなんだ。」
「会社は危機だ。みんな一丸となって頑張ろう。」

そんなコミュニケーションをしながら、なんとか社員やメンバーをまとめて目的にむかって行動を促そうとします。

しかし…

社員やメンバーにはなかなか響かない。
動きが未熟だけならまだしも、右から左に言葉が抜けているようで意欲さえ感じない。

どうしたことだ。
そこであなたはさまざまなコミュニケーション方法を学びます。

理念を掲げよう、理念を伝えて、みんなで斉唱しよう。
アサーティブコミュニケーションだ。リーダーのコミュニケーションスキルを学ぼう。
目標管理だ。行動管理をちゃんとやれば、社員やメンバーは動くんだ。

しかし、それらをいくらやってもダメだったとしたら、、、

前提の違いによるコミュニケーションの修羅場

問題はコミュニケーション方法にあるのではありません。
コミュニケーションの前提、つまり「在り方」に問題がある、そう言えます。

わたしたち人間は自分勝手でした。
いつでも自分が主役であり、自分の関心で動く生き物です。
だから、いつでも周りの人間は「脇役」です。
わたしの人生を取り巻いて、わたしの人生のために役立ってくれる生き物です。

あえて冷たい言い方をしています。
でもこの事実をよくよく噛みしめていないと、真の温かさが生まれないのです。

どういうことか。

社員やメンバー、あなたにとって「脇役」である人間たちも、彼らの身になりきってみれば彼ら自身「自分が主役」と思って生きているのです。
彼らにとってあなたこそが脇役であり、彼ら自身の人生をよくしてくれるための存在です。

でもだからこそ、彼らも悩んだり、ときには苦しんだりしています。
自分が主役の世界に、自分より権限が上のひとが勝手を押し付けてくるのです。

「あのひとたちは経営者やリーダーと名乗っているが、わたしの世界ではわたしの世界をかき乱す悪役なのだ。」

社員やメンバーが動かないときにあなたが彼らに悪感情をもつように、社員やメンバーからしても彼らの欲求を理解してくれないときあなたたちに悪感情を持ちます。

ここに自分勝手同士の対立が生まれ、お互いがお互いの正しさを主張し合う修羅場が生まれます。

この「自分が主役」同士がいる組織では、

「これを達成しないと評価がどうなるかわかっているだろうな」
と経営者やリーダーが言えば、社員やメンバーは
「働き方改革を守れないなんて。それは●●ハラスメントではないですか?」

そんな、そこにあるのはパワーゲームや管理・強制・操作・脅迫・妥協がはびこってしまいます。
これでは組織はどうしても幸せになれません。
「自分が主役」という前提に立った組織では、いくら〇〇コミュニケーションや方法や仕組みづくりをやっても、本質はまるで変らないのです。

わたしたちは、前提そのものを考え直す必要があります。
組織においては、それを意識してまっさきにできるのは経営者でありリーダーしかありません。ですので、ここにこそ、経営者やリーダーの役割があると言えます。

経営者やリーダーの役割

それが「相手を主役」にすること。
そう、コミュニケーションの前提を「相手が主役」にする必要があります。
経営者やリーダーは、社員やメンバーを主役にするという前提をもってコミュニケーションすることが最大の役割なのです。

あなたから発するコミュニケーションによって、それを聞いた社員やメンバーが「自分は主役なのだ」と感じられるようにしていくことが求められます。
もうすこしいえば、社員やメンバーの自己肯定感が自己重要感が高まるコミュニケーションの在り方が必要です。

たとえば、

「あれは、どうなった? いついつまでにやってくれよ。」
「そういうことじゃない。これはこういうことなんだ。」
「会社は危機だ。みんな一丸となって頑張ろう。」

これらのコミュニケーションの前提にあるのは、「経営者やリーダーの言うことを聞いてくれ」に尽きます。
信頼関係の組織ならばその言わんとすることは充分伝わりますが、前提が「自分が主役」のパワーゲーム組織であれば、「上から下への(半)強制的コミュニケーション」として受け取られるのです。

しかし、もし、ほんのちょっとこう変えたらどうでしょうか。

「あれは、どうなった? いついつまでにやってくれよ。」
→「あれはどうなった。いついつまでにやってくれたらうれしいが、どうだろうか。」

「そういうことじゃない。これはこういうことなんだ。」
→「そうか、君はそう考えたのか。それもある。ただこの場合はこう考えるとよりよくできるんだ。」

「会社は危機だ。みんな一丸となって頑張ろう。」
→「会社は危機だ。君たちにも厳しい想いをさせて申し訳ない。ただ君たちの力が必要だ。力を貸してくれないか。」

コミュニケーションの中に、「社員やメンバーの立場・視点」が入っていることに気づいたかと思います。
社員やメンバーに対して「あなたという存在を尊重している」という意思が伝わってきます。

「相手を主役」にするといっても、社員やメンバーの立場や権限が変わっているわけではありません。ただ「相手が主役であるという相手自身の思い」を受け止め、尊重しているだけです。

だけです、と申し上げましたが、これがむちゃくちゃ大事なことで、だからこそ「要諦」なのですね。もしいままであまり意識してやってこなかったとしたら、これを意識してやるだけで、あなたの接する社員やメンバーの雰囲気がまるで変ってくることに気づくはずです。
それくらい、「相手を主役」にすることは相手にとって自分の存在を尊重してくれているよろこびを感じることなのです。

「自分は主役でいたい」

これはどんな立場の人間であっても切望していることです。
主役として活躍したいし、役に立ちたいし、認めらたいし、誇らしく思いたい。
それは時には、涙が出るくらいに切実な願いです。

会社や組織は、利潤を追求する効率機械という側面がありますが、そこで働いているのは、体温がありひとつひとつに呼吸する人間です。

わたしも今まで幾多の経営者やリーダーにも、社員やメンバーにもさまざまなお話を聞いてきましたが、その「本当の思い」をお話されたとたん涙を流すひとたちを多く見てきました。

会社や組織が利潤を追求する効率機械であるからこそ、とくにその経営者やリーダーは、そこにいる「本当の思い」をもつ社員やメンバーの体温や呼吸に耳を傾ける必要があります。
それは経営者やリーダーという立場だからこそできる大切な役割でもあります。

ココロが伝わる。ココロがないと…

ただ、ここで申し上げておかなければなりません。

冒頭で
「テクニックとしてとらえても構いませんが、ただし、相手のいることですので、そのココロをよく落と仕込むことが大切だ、ということだけは念頭においてお聞きください。」
と、お話しました。

今回上げた会話の例は、それだけみれば「コミュニケーションテクニック」としてとらえることもできます。実際、はじめのうちはそれだけでもうまくいったと感じるでしょう。
しかしその表面上の言葉を通して社員やメンバーに本当に伝わっているのは「あなたを主役にしたい」という相手への尊重の念、ココロです。

だからそのココロが伴っていないことがわかれば、とたんに失望へと変わってしまいます。
「わたしを主役として尊重してくれている」というよろこびが高かった分、裏切られた思いは以前よりも激しくなってしまいます。

「相手を主役」にするを「前提」と申し上げたのは、時によってやったりやらなかったりするものではなくて、決めたからにはいつでもそういう「在り方」の人間でいるという意味だったからなのです。

もちろん完璧なひとはいないです。
間違いも失敗もあることでしょう。わたしだって失敗してばかりです。
でも、「相手を主役にしていこう」という意思だけは持ち続けることはできます。
そうすると、未熟なわたしたちであっても、「わたしを主役にしてくれようと努力しているのだ」というココロは相手は受け止めてくれます。

大切なのは、「相手を主役にする」という前提で、そう在ろうとし続けることなのですね。

経営者やリーダーの仕事とは

わたしは「在り方」と「スキル」をひとつにする方法をお伝えしていますが、「要諦」はまさに今日のお話。

人は本来いい仕事をしたい、いい人生を送りたい。

そんな「本当の思い」に耳を傾ける。

それが経営者やリーダーの仕事だと思っています。

P.S
これからもブログをお届けしますので
お忘れないようブックマークしてくださいね。

執筆者紹介

オフィスオントロジー
代表 友成治由

人と組織の可能性と創造性を引き出すメンター
人と会社を伸ばすメンタリングの専門家

10年超にわたる起業家育成や変革人財育成経験から得た実践知と、意欲心理学によるチェンジメンタリングで人が本来持っている意欲、可能性、価値を引き出す。
主体性/リーダーシップ開発、メンター育成、メンター制度構築、チーム活性化などを支援。

哲学存在論専攻。
宮崎県出身。今もなまりはとれない。

経営メディア『経営プロ』にて執筆コラム掲載。
コラム「メンタリングで人や組織の可能性を引き出す」など

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