高市早苗さんに見る心を動かすプレゼンテーション
もし総裁選選挙に勝たれて、衆院選にも勝たれたら、第100代日本国総理大臣になられます。今後の趨勢はわたしにはわかりませんが、8日の立候補記者会見は、わたし自身の目で見て、心を揺さぶられるものでした。
わたしの大きなテーマのひとつに、「人を動かす人」とは何か? があります。
今回は、高市早苗さんに見る「人を動かすプレゼンテーション」を見ていきます。
目次
- ○ 反響のすごい高市早苗さんの記者会見
- ○ 人の心を動かすプレゼンには違いがある
- ○ 「人の心を動かすプレゼン」3つの特徴
- ・①わたしとはなにものか?
- ・②誰よりも考え抜いてきた
- ・③引き受ける覚悟
- ○ 人の心を動かす「プレゼンテーション」の本質とは何か?
- ○ あなたのプレゼンテーションを探究しよう
- ・執筆者紹介
反響のすごい高市早苗さんの記者会見
高市早苗さんの記者会見は、youtube上で全編見ることができます。
わたしも全編見ましたが、その記者会見は引き込まれて、つい全部見たという方が正確です。
わたしと同じ感想を抱いた人は多いようで、youtube上のコメントは、「心を揺さぶられた」「涙が出た」などの感想が政治家の語るものでは記憶にないくらいに多くありました。
これまで高市早苗さんを別の目で見ていたひとたちも、その記者会見を見て認識をあらためた方も多くいらしたようです。
公正に書くために、わたし自身の信条を述べると、政党はどうであれ「歴史や文化を大切にしたい」側です。
が、ここから以下はわたし自身の信条と叶うかどうかは関係なく、「人の心を揺さぶるプレゼン」について、わたし自身ビジネスとして何百もの商品プレゼンをし、企業様や個人向けにプレゼンテーションを教えるコンサルタント、講師として感じたことをお話します。
高市早苗さんの記者会見(“プレゼン”と呼びますね)は、そういった「なぜこのプレゼンは人の心を揺さぶるのか」という観点でも聴いていました。
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人の心を動かすプレゼンには違いがある
ビジネスプレゼンから今回のような記者会見まで、人に何かを伝えるというプレゼンテーションは、相手や社会に対して何かを伝え動かしていこうとするならば避けて通ることはできません。
そんなプレゼンテーション、プレゼンにはたしかにさまざまなスキルやテクニックがあります。話しの仕方から構成の組み立て方など、ポイントもいろいろにあります。
これらは確かにプレゼンテーションを学ぶ際には必要なことですし、わたし自身も教えていますし、それを知るだけで相手への影響力が変わることもよくあるから大切です。
しかし今回述べたいのは、「人を動かす」だけでなく「心」までも動かすプレゼンテーションとは、上記とは別のところにあるという話です。
わたしは起業家・事業家が「まだ無い夢」を「事業」にすべく、利益で釣るのではなく、夢として事業として共感して応援してくれるひとたちをプレゼンで募っていくという、「ドリームプラン・プレゼンテーション」を支援し続けています。
プレゼンターのプレゼンづくりや事業計画書づくりを、裏方のメンターとして支援してきました。
そのプレゼンは事業プレゼンにもかかわらず、「売上いくらになります」「利益はいくらになります」「ニーズ割合は●●%です」というような、数字で語ることはあえてルール上禁止にしています。
なぜか。
それは「売上や利益」で集まった人は、「売上や利益」がなくなると去っていくからです。
「売上や利益」のみを目的とするプレゼンならばいいのでしょうが、「夢」であったり「思い」であったり、社会的に誰かがやらなければならないからやるのだという「使命感」であったり、「売上や利益」だけには還元できない事業はそれでは成り立ちません。
どこかに「夢、思い、使命感」などに「人として」共鳴することがなければ、やはり人の心は動かないからです。そういった人でなければ、ときには困難なことも多いであろう事業を、永く応援して協力してくれる人にはならないからです。
では、そんな「売上いくらになります」「利益はいくらになります」「ニーズ割合は●●%です」のようなプレゼンにおける翼のもがれた状態で、それでも相手の心にまで伝わるにはどうすればいいのか?
そこであらためて落とし込みたいのが、「人の心を動かすプレゼンの本質」です。
世の中で教えられているプレゼンテーションの多くは、「プレゼンの本質」をそこまで強調して教えているところはありません。(あってもごく少ない)
「どう語るか」「何を語るか」「どんな順番で語るか」という「やり方」がメインなのですが、実は「プレゼンの本質」はそこにあるわけではありません。
高市早苗さんのプレゼンは、本人が意識しているかどうかはわかりませんが、「プレゼンの本質」にかなっていた。だからこそ、彼女を知らなかった、または違った目で見ていた人たちにも認識を改めさせているのです。
以下、一見プレゼンの「やり方」のように見えてその裏にある、「本質」とは何かを見ていきましょう。
「人の心を動かすプレゼン」3つの特徴
高市早苗さんのプレゼンを全編みて感じた、「多くのひとの心を動かした」特徴をあえて3つ挙げて見ていきましょう。
①わたしとはなにものか?
高市早苗さんはご存じのように自民党の政治家であり、その政治信条は保守として知られています。今回のプレゼンでは、あらためて自分の信条や信条に反映された政策案を語られていました。
高市早苗さんは自分の信条を明確に堂々と述べています。
信条の中身には賛否両論あるのでしょうが、少なくともここまで堂々と語った迫力があることには、賛成していただけるのではないでしょうか。
表に見える「プレゼンのやり方」という意味では、やはり自分の立ち位置を明確にすることで人は安心しますし、同様の立ち位置を持っている人の信頼をより強めていきます。
政治家の多くが、重要なところでは言葉を抽象的にしたり、保留にしたりするものでしたから、高市早苗さんの明確さ、堂々さは新鮮でこれまでにないものにも映りました。そういった意味で、初頭効果も大いにあったことでしょう。
「ポジショニングを明確にすることで刺さりやすいメッセージになった」という人もいるかもしれません。
すべて「やり方」としてはその通りなのですが、「心」まで揺さぶったのはその裏にあります。
それは高市早苗さんは
「わたしとはなにものか」
「わたしたちの国とはなにか」
を誰よりも深く考えて自覚していることにあるのです。
「わたしという政治家は、だれのために、なんのためにあるのか」
「わたしの日本における役割はなにか、何を果たすべきか」
そういったことを、人生のどこかの段階で深く自覚したときがあったのでしょう。また問いかけ続けながら、政治家を続けてきたのでしょう。それはそのひとの言葉の力強さや迷いのなさ、姿勢に現れてきます。
耳に聞こえるカタチとしての言葉を通して、その人の思いの強さや本物さが伝わってくるのです。
政治家に期待する多くの人の思いは、支持する立場はどうであれ「この政治家は本当にわたしたちや日本国のことを考えてくれているのか」でしょう。だから感じられない政治家たちには失望を重ねてしまいます。
すくなくとも高市早苗さんからはそれがこれまでにないくらいに伝わってきた。
そこに心が動かされるのです。
政治家だけでなくビジネスでも同じです。
「わたしたちの会社とは何か」
「だれのために、なんのためにあるのか?」
「何を果たすべきなのか?」
そんな
「わたしとはなにか?」
を、深く深く考えていくこと。
それが思いの強さや言葉の説得力となって現れ、人に安心感や信頼感、ときには感動でさえもたらしていくのです。
②誰よりも考え抜いてきた
高市早苗さんのプレゼンは、「具体的だった」という感想をよくみかけます。おなじニュアンスで「博識でよく勉強していてすごい」とも。
他の方々が抽象的であいまいな言葉にしているところを、具体的な問題点の指摘から対策案まで、「何が問題で、何をするのか、その結果どうなるのか」をあらゆる分野にわたって述べていました。
具体的に提示をすることで、相手に深い納得感が生まれていきます。
もちろん個々の政策には反論したり別意見があったりもするでしょうが、提言が具体的であるために論点がわかりやすく、前向きで生産的な議論ができます。
仮に提示された政策が違っていた場合でも、高市早苗さん本人に対する信頼感が揺らぐことはなく、「本人否定」ではなく「全員で目指す解決策」の方に焦点を向けることができます。
またここまで幅広いテーマを国という視点で具体的に提示されることで、とくに政治に関心がなかったりあまり知らなかったひとたちにも、「わたしたちの日本にはこれだけの課題があったのだ」「もっとわたしたちも興味をもって、考えなければならない」という興味関心や意識向上を引き起こしています。
具体的に提示すると、相手にも具体的な興味関心を引き起こします。
だからよりそのテーマ深くコミットすることができ、そのテーマに対してもっとも信頼できる人を選ぼうという意思が働いていくのです。
「プレゼンは具体的に」
「やり方」としても鉄則のひとつになります。
ただ、重要なのはその裏にある本質ですね。
「心」にまで伝わったのは、その本質です。
高市早苗さんという人は、ここまで幅広い分野にわたって具体的かつ深く考えてきたのだ。
「この人はここまで、考え抜いてきたのか!」
その姿勢に、多くの人の心は動かされているのです。
たとえば高市早苗さんの主要テーマが国防ですが、わたしも含め、多くの方が国防について。表舞台でここまで堂々と具体的に語ったひとを知らないのではないでしょうか?
国防というものは、漠然としてほとんどの人にはつかみづらいものですが、それでも強い不安を感じるテーマです。しかしそのことについて、誰よりも真剣に考え抜いてこられた人がいた。この安心感は、ものすごいものがあります。
どんな質問にも答えていく姿は「わたしは誰にも負けないくらい考え抜いてきている」という自信をかんじささせました。
決して総裁選に出るから、総理大臣になりたいからという付け焼き刃ではないことは明白でした。長年、ずっと取り組んできた。考え抜き、悩み、勉強も重ねてきた。こういったテーマに対する揺るぎない一貫した姿勢に、わたしたちは心を動かされるのです。
ビジネスでもまったく同じです。
あるビジネステーマや課題について「ただ儲かりそうだから手を出したそれなりのものです」と感じられる人や企業を信頼することはないはずです。
自分たちが不安に思い悩んでいることに対して、自分以上に悩み考えてきてくれた人がいる。そういった人や企業だからこそ、心から任せ信頼しようと思えます。
もちろんそれはいわゆる「問題」だけではありません。デザインであったり、商品づくりであったり、企業姿勢であったり。
具体的に目に見えるデザインや商品や企業姿勢などを通して、わたしたちはその裏に見える人の真摯さや情熱を感じ取ります。
「ああ、この人は、ここまで考え抜いているのか!」
ここに魅かれ、強いファンになっていくのです。
わたしたちは、プレゼンだけを見ているのではありません。
プレゼンというカタチを見ながら、同時に見えてくるものをみているのです。
③引き受ける覚悟
「決意」に人は心を動かされます。
「決意表明」はプレゼンの「やり方」としても必要な“パーツ”です。
政治であれビジネスであれ、迷いがあったりあきらめる言い訳を感じる人や企業ではなく、やはり責任をもってやり抜く方に任せたいと思います。
だから「決意表明」ができることは、まず何よりもの第一条件です。
そういった意味では、高市早苗さんだけでなく他の方々も「決意表明」をしています。
しかしそれでも高市早苗さんの「決意表明」が他の方々とは違ったと感じたのも率直なところです。
それはなぜなのか?
これらは①、②とも密接に一体となって関わってきますが、なぜ他とは違っていたのか?
それは、他の方は
「自分がしっかりやる」
という決意表明だったのですが、
高市早苗さんは、現代のわたしたちに加えて、これまでの日本の長い歴史に生きたひとたち、未来にうまれていくひとたちも含めて、全員のためにしっかりやる。
という決意表明だったからです。
「何を自分は引き受け、背負っていくのか。」
この重みが全く違いました。
多くのひとにとっては、自分だけでなく自分以外に大切なひとがいます。それは今生きている家族だけでなく、すでに亡くなっている祖父母や両親などもそうです。また多くのひとはこれから生まれてくるひとたちに幸せになってほしいと願うでしょう。できれば、自分が生まれた場所のことを誇りに思ってほしいと願うでしょう。
ひとによってそのスパンは異なるのでしょうが、率直な思いだと思います。
高市早苗さんは、そういったことを、明確に自分のこととして認識して自分の言葉として話していました。
ひとはやはり敏感に感じ取ります。
もちろん政治家もビジネスも同じです。
この人は、
「自分のために、エゴのためにやっているのか」
「だれか大切なひとたちのためにやっているのか?」
そうして、それを自分のこととして
「引き受ける覚悟」
が、あるのかどうか。
「プロジェクトX」について話すまでもなく、多くの企業や組織で会社が一体となり、困難や挑戦に挑もうとする時、そこには必ず「引き受ける覚悟」をもったリーダーがいました。
それには立場の上下は関係ありません。
「わたしが、引き受けるのだ。」
こういった全員のために覚悟をもてるひとに信頼を寄せ、尽くすのです。
家族を守ろうと奮闘する全国のお父さんやお母さん。
子どもたちに一人前の立派な大人になってもらいたいと悩み続ける先生たち。
街をきれいにしていきたいと黙々と花を植え、育てていく市井の人たち。
わたしたちは、そんな人たちの「引き受ける覚悟」に心を動かされ、応援し、協力したくなります。
「自分のために、エゴのためにやっているのか」
「だれか大切なひとたちのためにやっているのか?」
真摯に振り返り、胸に手を当てたいものです。
人の心を動かす「プレゼンテーション」の本質とは何か?
プレゼンテーションは、英語“Presentation”と書きます。
「Pre(前に)」 +「sense(感覚、存在)」 (の動詞形)」
つまり、
「存在を前に」
です。
言い換えればその人の存在、在り方が前に出ること、前に出すことがプレゼンテーションの本質です。
あなた自身の「存在」です。
何をしてきて、何を考え、どうしたいのか、どうしようとしているのか。
プレゼンテーションとは、あなた(ひと、企業、商品…)の在り方そのものを相手に伝えることであり、またその在り方そのものが相手に伝わっているのです。
さまざまなプレゼンスキルやテクニックは、あなたの在り方をより伝わるようにするための手段であり、スキルやテクニックだけでなんとかしようとすると、その不一致には相手には「不誠実さ」として伝わってしまいます。
商品を心から買ってほしければ、まずあなた自身が商品にほれ込み愛することであり、いい人材を会社に集めたければ、まずあなた自身が会社を誇りに思い愛することです。
その在り方が相手に伝わり、相手の心を揺さぶるのです。
もちろん、いきなり完璧な人や商品になることはできませんし、そもそも完璧だなんてありえません。
でも、そうなっていきたい、そう在り続けたいと努力し続ける在り方を「プレ+センス」することはできます。
そのためにも、つねに自分自身の在り方を見つめ続ける必要があります。
具体的には①②③を、自分のテーマや分野に対してつねに考え続ければ続けるほどの、あなたのプレゼンの説得力は大いに増していきますし、プレゼンのカタチもそれにふさわしく洗練されていくでしょう。(洗練していきたくなるでしょう。)
あなたのプレゼンテーションを探究しよう
今回は高市早苗さんを“題材”にはしましたが、政治的な応援とは別、であることは念のため。
欠点・批判・非難にあたる部分は捨象しています。わたしが支持しているかどうかも含めて、別の話です。
あくまでも焦点は、
「なぜ心を動かされたのか」。
プレゼンテーションという場合に、折ににふれ振り返る人たちがいます。
たとえば、尼将軍といわれた北条政子であり、キング牧師であり、本田宗一郎であり、わたしが営業時代に育ててもらった人であり、わたしのコンサルティングの先生でもある福祉正伸であり、さまざまな企業やドリプラで出会った人たちです。
あなたにもきっと誰かあることでしょう。
そういった人たちの何に自分は感じ入ったのか。
それを真摯にすなおに受け止め、見つめることで、自分の在り方も見えてきたりします。
あなたがビジネスや、社員活性化、営業等で「人を動かしたい」。
そう思うときには、「プレゼンテーションの本質」を思い出してくれるとうれしいです。
あなたのプレゼンテーションを、楽しんで探求していきませんか?
わたしのプレゼンテーションは、今日のブログのような感じです。
あなたには、どう評価されるのかな。
なんて思いながら、またわたしの探究するひとりで在り続けます。
P.S
これからもお忘れないようブックマークをお願いします。
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執筆者紹介
オフィスオントロジー
代表 友成治由
人と組織の可能性と創造性を引き出すメンター
人と会社を伸ばすメンタリングの専門家
10年超にわたる起業家育成や変革人財育成経験から得た実践知と、意欲心理学によるメンターメンタリングで人が本来持っている意欲、可能性、価値を引き出す。
主体性/リーダーシップ開発、メンター育成、メンター制度構築、チーム活性化などを支援。
哲学存在論専攻。
宮崎県出身。今もなまりはとれない。
経営メディア『経営プロ』にて執筆コラム掲載。
コラム「メンタリングで人や組織の可能性を引き出す」など
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