経営者が一番つらい。社員からの社内批判
経営者・リーダー、組織やコミュニティの長など(以下、まとめて経営者)にとって、もっともつらく、仕事のエネルギーさえ奪ってしまうのは何か?
ありがたいことに多種多様なリーダーと出会うなかで、「これはつらいな」と感じるのが、わたし中でも少なくとも上位3位の中にはいるのが、「社内批判」です。
とりわけ社員やメンバー(以下まとめて社員)からのそれです。
目次
- ○ 経営者は「引き裂かれ」る
- ○ 経営者が人間学を学ぶ理由
- ○ 理想論
- ・執筆者紹介
経営者は「引き裂かれ」る
わたしの知る限り経営者の多くは、なんとか社員に「立派になってほしい」「一人前になってほしい」「思いっきり活躍してほしい」と願っています。
出発点は働き手不足など会社の都合から入ることがあっても、いったん社員になったからには、成長させてあげたいし守ってあげたいしイキイキしてほしい、と願っています。
会社を経営しながら社員の生活を守ることは、やはり社員側視点だけでではわからない相当な精神的プレッシャーを抱えていますから、「経営者は孤独」です。
経営者はその業種や仕事のプロではあっても、はじめから育成のプロであるケースはほとんどありません。だから、日々の経営と社員育成との間に溝ができてしまいます。それが時には社員の不満になったり、やる気のなさになったり、ときには種々問題になって現れます。
あえていえば育成に不器用がゆえに、社員との間に溝ができてしまうのですが、それは本来の動機とは別なのですね。
「本当はイキイキ、グングン、笑顔で伸びてほしい、働いてほしい。でもできていない、なぜなんだ」
この「引き裂かれ」は経営者ならば、多かれ少なかれ、“痛み”としてもっています。
そういう状況の中での、「社員からの批判」は実にこたえます。
もっとも目をかけていて、育てたいと思っているのが社員という存在です。
その社員から痛烈だったり、ときには自分勝手な批判が聞こえてくると
「だれのために頑張ってるんだ。」
と言いたくもなります。
経営者が人間学を学ぶ理由
経営者の多くは、よく学ばれています。
経営者同士の交流会や勉強会もそうですし、種々の金言に満ちた読書を重ねたり、神仏に手を合わせるようになる方も多いです。
これ、結構重要なことだとは思うのですが、今日本に残っているさまざまな文化や伝統や制度や街づくりなどなど、当たり前に存在するような社会的なものごと。もちろん現場で築き上げてきたひとたちとともに、見えないところで「最後の責任は自分にある」という経営者がいたのです。
孤独で、つぶされそうなプレッシャーの中、不器用だけれども「わたしがやらなければ、だれがやる」という気持ちの中、みずからを高めながらなんとか暗中の中模索する経営者がいたのです。
「社員からの社内批判」は、本当に心にこたえます。
経営者がとくに「心の学び」をする半分以上は、「内からの批判」に揺るがないようになるためではないかと感じています。
外からの批判や困難は、つらいことであっても、意外に「なにくそ」パワーが出るものです。
しかし、本来大切に思っているはずの社員からの批判は、「なにを、なんのためにやっているのかわからない」という疲労感、徒労感を生んでしまいます。
だからこそ「それでも揺るがない、全員のための大義や心の軸を確立する」。
そんな気持ちで日々学びを重ねているのではないでしょうか。
社員を怒鳴ったり、「社員は駒だ。」なんて言う経営者の多くには、その裏側にはこの徒労感の経験があります。徒労感は、ある種の「社員というもの」に対する拒絶を生み、結果「社員なんて」という感情へとつながっていくのです。
わたしはこれは不幸なことではないかと思います。
経営者にとっても、社員にとっても。
理想論
ここから先は、理想論です。
経営者と社員とは、本来は対立関係ではなく一種の運命共同体です。
おなじ目的にむかって、それぞれの役割で力を合わせながら、おなじ喜びを共有し合う仲間。
だから社員側も、あと10%だけでも経営者の気持ちをわかろうとすれば、経営者はどれだけ救われるかと思っています。
(今回は経営者の立場ですから話していますが、経営者もあと10%社員側のリアルな気持ちをわかろうとすることが、もう一方にあります。)
会社がひとつになる、というのは、形としては理念浸透であったりビジョン実現であったりするでしょう。またときには「泣いて馬謖を斬る」こともあるかもしれません。
根底にあるのは、
「なんやかんやいって、同じ仲間じゃないか」
という意識です。
それだけでも、会社にはいった初日から社員のひとりひとりが思えるようになれば、ずいぶんと社員育成は“楽”になりますし、成長も早くなり、会社としての生産性もあがるでしょう。
そのためには、経営者のほうから先に「社員は仲間じゃないか」とはじめることが必要だ、という、またまた経営者にプレッシャーを与える言葉になってしまうのですが・・・
ただ、強者と思われている経営者側の心のうちもまた伝えたいと思って、今回はお話しました。
公正にいえば、社員側の視点もとても大切です。
その視点が必要なときは思いっきり語り、伝えます。
根底には「同じ仲間じゃないか」です。
だから経営者の視点、経営者側の立場もまた思いっきり語り、伝えます。
経営者でも社員でも、最終的にお互いが心からよろこびあう、それが長く続くにはどうすればいいのか?
なかなか開拓しがいのある道ですが、忘れてはならないと思うのです。
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執筆者紹介
オフィスオントロジー
代表 友成治由
人と組織の可能性と創造性を引き出すメンター
人と会社を伸ばすメンタリングの専門家
10年超にわたる起業家育成や変革人財育成経験から得た実践知と、意欲心理学によるメンターメンタリングで人が本来持っている意欲、可能性、価値を引き出す。
主体性/リーダーシップ開発、メンター育成、メンター制度構築、チーム活性化などを支援。
哲学存在論専攻。
宮崎県出身。今もなまりはとれない。
経営メディア『経営プロ』にて執筆コラム掲載。
コラム「メンタリングで人や組織の可能性を引き出す」など
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