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人材育成/人材開発

即効飛躍の人材育成ができるカギは「問題への意識」の育み方

社員を育成する、という場合に、果たして何を育成するのでしょうか?

仕事のスキルを身につけさせる、思考力や判断力をつけさせる、人間力をつけさせる…

さまざまな身につけさせたい要素があり、どれも重要です。

しかしともすると、「どれも同じように重要だから、どれも同じように軽量」になりかねません。

身につけさせたい大切な要素、それは「何のためか?」。

これを結び付けるのが、「問題」です。

目次

企業活動を成り立たせているもの

企業活動は、価値をお客様にもたらし対価を得ることで成り立ちますよね。

ではなぜお客様は対価をくれるのか?
それはお客様の何かしらの問題を解決するからです。
対価とは「問題解決料」といってもいいでしょう。

だから社員の役割とは、「解決を担う」のが本分になります。
企業における社員育成とは、問題を解決できるようにすること。
それが第一の目的になります。

もちろん「問題解決」といっても、いろんなレベルや要素があります。
新入社員なら新入社員としての、マネージャーや経営者ならやはりその地位にふさわしい問題解決があります。

新入社員が笑顔で元気よく挨拶するのは、それにより会社の雰囲気を良くして、他の社員みんなも自分の役割を気持ちよく果たすことができるからです。
間接的に会社の問題解決を手伝っているのですね。

現場の社員は、直接的に顧客の問題を担当するでしょうし、経営者なら全社的な方向性を決断して、顧客への本質価値を定めたり、社員が思いっきり力を発揮できるようにしています。

つまり会社におけるどの人であっても、大きな「問題解決の連鎖」の中にいるのですね。

「問題」が会社を成り立たせ、顧客をよろこばせ、社員の生活を守っています。

「問題への意識」が仕事の質を決める

社員育成とは、だから、個々の業務スキルや仕事知識を教える前に「問題への意識」からはじめることが大切ですし、実はもっとも早く効果的な方法です。

「問題への意識」とは、まずは会社は「問題解決の連鎖」で成り立っているという事実、そのある部分をその社員が担っているという事実。

その上で、その自分の「問題」をどうとらえるか、というとらえる視点・捉える広さ・捉える深さへと導きます。

たとえばある若手社員が、

「元気よく挨拶する」

について、

「言われているからやる」

としか捉えていないとします。
その社員にとって「元気よく挨拶する」は、「上司に怒られないための問題解決」にしかすぎません。
そのようにしか「なぜ、元気よく挨拶するのか?」を捉えていなければ、お客様先や取引先で近いうちにトラブルを起こすことは、もう目に見えています。

しかし、ある若手社員が

「元気よく挨拶する」

を、「会社全体が気持ちよくなるために」「人間として器を大きくするために」のように捉えていたらどうでしょう。たかが「元気よく挨拶する」かもしれませんが、捉えている範囲が広く、深いため、他の場面でも仕事への姿勢がまるで違ってきますよね。

育成するというのは、「問題への意識」を育てることです。
そして「問題への意識」には質の差があり、それはより視点を広く深く育てることができます。

「元気よく挨拶する」だけに着目すると、「挨拶スキル」の良し悪しで終わります。
しかし広く深い「問題への意識」を育てると、挨拶以外のあらゆる仕事の姿勢や向上心へつながります。

つまり、目先の仕事を通して「仕事の本質」へとつながっているのですね。

このような社員は、未知の場面、見たことのない困難の場面でも動じることなく、むしろ「本質的」な姿勢と考え方と行動で問題解決への道を見つけ、切り開きます。

社員育成とは「本質育成」です。

はじめに「なんのためにその問題解決をするのか? その役割を担っているのか?」を教え、
私語とスキルや業務知識を教えつつ、つねに「なんのためにその問題解決をするのか? その役割を担っているのか?」に気づかせ続けることを言うのです。

松下幸之助氏が教える教訓

松下電器(現パナソニック)の創業者の松下幸之助さんは、経営者に「ダム式経営」を教えていました。景気が悪くなったときに備えて、余裕のある時に蓄えておきなさい。そんなつねに安全余裕のある経営をしなさい、と。

ある講演会でひとりの中小企業経営者が、質問しました。

「ダム式経営の話はわかりましたから(もうみんなわかってるから、というニュアンスで)、その方法を具体的に教えてください。」

すると松下幸之助さんは、困惑しながら、こう答えたそうです。

「いや、それは思わないとあきまへんなあ」

松下幸之助さんは、その経営者に「本気でその重要性を思っていない」ことを見抜いたのでした。

「ダム式経営」がなぜ必要なのか、どんな「問題への意識」なのか? そこまで切迫感をもって深く広く考えているのか?

「あなたは、そこまで思っているのか?」

それを問うたのでした。

人間は、とらえる問題のレベルに応じて、思考力や行動力が変わります。
問題と捉える質が、思考や行動の質になります。

仕事スキル、業務知識、ツールや問題解決「法」などなど、「やり方」はそれを捉える広さ深さ次第でまるで質が変わります。

その時限りの目先の問題解決、というより問題回避で終わるか、ひとつやるだけで関連するさまざまな問題を同時に解決してしまうのか。

表面的か、本質的か。

「問題への意識」をどう育てていくかに語っているのです。

名門灘高校の名物授業

いわゆる名門校、例えば灘高校の有名な授業で、1冊の本を高校生活3年間かけて読み切るという授業がありました。

受験知識、受験スキルを教えるだけならば、まったく無駄な授業です。
そんな45分があったら、英単語を30個も覚えられるかもしれません。

しかしその授業では、もっと大切で根本的なもの。
つまり「本質を読み解く」ことをやっていたのです。

本質がつかめたら、あらゆる文章を一度読んだら掴めるようになりますし、英単語や英文法に共通する法則もわかり、はじめての英単語の意味さえ、かなり精度で推測することができるようになります。
「本質がわかる」からこそ、「多数の学び」を一挙に理解できるのですね。

仕事でも、まったく同じです。
仕事の場合、受験偏差値は関係ありません。

日々の仕事を通して、いかに本質をつかめるか。
それは「問題への意識を育てよう」と「思う」ことさえできれば、どんな会社でもできます。

「思い」と、確かな育成方法と、社員みんなで取り組めるあたたかい人間関係さえあればいいのです。

人は本質に触れたとき、ものすごい能力を発揮する

「本質」への意識は、人を変えていきます。
どんな人でも、「本質」に触れたとき、ものすごい能力を発揮します。

目の前に現れるさまざまな現象。
それらがひとつの本質ですべてつながっていることに気づいたときの感動。

ひとつ学べば、数多くの問題が解決できるという武者震い。
これが「成長する」ということであり、人間にとってものすごい喜びです。

あなたの会社だからこそつかみ取れる本質が必ずあります。
それに社員が触れたとき、心から震えを感じ、「わたしは社会に貢献できるのだ」という志を持つことができるのです。

あなたの会社はどんな問題を解決していますか?
「問題への意識」を育てることからはじめませんか?


P.S
これからもお忘れないようブックマークをお願いします。

執筆者紹介

オフィスオントロジー
代表 友成治由

人と組織の可能性と創造性を引き出すメンター
人と会社を伸ばすメンタリングの専門家

10年超にわたる起業家育成や変革人財育成経験から得た実践知と、意欲心理学によるメンターメンタリングで人が本来持っている意欲、可能性、価値を引き出す。
主体性/リーダーシップ開発、メンター育成、メンター制度構築、チーム活性化などを支援。

哲学存在論専攻。
宮崎県出身。今もなまりはとれない。

経営メディア『経営プロ』にて執筆コラム掲載。
コラム「メンタリングで人や組織の可能性を引き出す」など

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