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リーダーシップ

1分間マネージャー~最速で部下を成長させる3つの秘訣

「1分間マネージャー」

この本はとても実践的です。
一度は目を通しておかれることをお勧めします。

メンバーや部下をマネジメントするリーダーやマネージャーがやることとして、明快でわかりやすいのが特長。

そして、実際にマネジメントへの効果が高いと、わたし自身も実感する方法です。

目次

1分間マネージャーとは

「1分間マネージャー」は、アメリカの組織心理学者K(ケネス)・ブランチャードと、医学白紙でコミュニケーションコンサルタントのS(スペンサー・ジョンソン)による著作です。

日本で初版が発売されたのが1983年ですから、もう40年前の本なのですね。

時代時代の流行の方法は、そのときは盛り上がってもすぐに忘れられてしまうものですが、この本はいまだに刷を重ねて販売されています。それだけ中身が普遍的で役に立つ本だといえるでしょう。

この本の特徴、まず薄いんです。
わたしのもっている93刷(!)、2011年発行の本でもあとがき含めて145ページ。1時間もあれば読み終えることができます。

ではその中に理論や文字がぎっしりかというと、非常によみやすい。なぜならば物語形式だからです。

ただし中身については、マネジメント、とくに1対1マネジメントにとって最重要なことだけを、シンプルに明快に教えてくれています。


訳者まえがきによると、「より高い生産性と、組織成員のより高い充実感をもたらす画期的なこの新『バイブル』の登場により、アメリカの経済界には新たな衝撃と自信が生まれている-」と書かれています。

1970年代から1980年代のアメリカの産業界は、とくにわたしたち日本に押されっぱなしで、どのように生産性を確立し、あらたな繁栄を築くことができるか。その危機感であふれていた時代でした。

その時代背景の中多数のマネジメントやコーチング、メンタリングの研究とともに、アメリカでは従来の管理主義的なものから脱した、画期的なマネジメント論、育成論が研究されてきました。

その中でも画期的なものの一つとして今なお読まれているのがこの本です。
実際、その後から現代にかけてアメリカは経済興隆の一途をたどりましたので、わたしたちにも学ぶところはあるはずです。


なおこの記事は、最新刊ではなくわたしのよんだ2011年発行版をもとにしています。

1分間マネージャーが目指すところ

1分間マネージャーの目指すところは、生産性です。

「1分間マネージャー」と題していると、マネージャー側がたった1分でマネジメントできる、というようなマネジメントする側の生産性と思ってしまいがちですが、それは違います。

最終的に目指すのは組織の生産性、そのために部下の生産性の向上が必要不可欠。
そう伝えています。

しかし、その部下のマネジメントは、必要なことをシンプルにするだけでいい。
そちらの方が、部下の生産性が上がるからです。

結果として、1分間(ごく短時間)でマネジメントできる、というわけです。

このように言うと、「成果一辺倒の冷たいマネジメント方法なのかな」と思うかもしれませんが、それも違うのですね。むしろ人間の心理にそった、人間味のある方法といえます。

むしろ、人間の心理に通暁した著者だからこそ伝えられ体系化されたことがわかります。

本の中にこんな会話があります。

「なるほど、それでは生産性効率の必要を自覚しておられるわけですね。すると人間指向型というよりは、成果指向型というわけですか。」
「とんでもない!」
~中略~
「部下の力を借りることなしに、どうして業績をあげられるかね?わたしは部下と業績の両方に心を配る。この二つは、共に手を取り合ういわば車の両輪なんだよ。以下略」

そして、実践的心理として、いかの表を大きな文字で掲げています。

「気分のよい部下は、よい成果を生む。」

1分間マネジャーは、部下が気分良くなるように援助することが、より多くの成果をあげることがキーだと伝えています。

あたりまえのこと、ではありません。
いまでも非常に重要なキーです。
これができなくて、多くの経営者やマネージャーは「社員のやる気がでない」と悩んでいらしゃるのですから。

1分間マネージャーの3つの秘訣(ノウハウ)

1分間マネージャーになるために、3つの秘訣(ノウハウ)があります。
本当にこれだけでして、とてもシンプルだから、わたしたちも実際にやりやすい。

以下の3つになります。

1分間目標設定
1分間称賛法
1分間叱責法

①1分間目標設定

1分間目標設定とは、たとえば1週間の目標をシンプルにわかりやすくまとめて、部下とマネージャーで共有するというものです。

目標設定では、どんな行動をしてどんな成果を生み出すのかを250文字以内でまとめること、と推奨されています。これならたしかにお互いに1分でも読めますね。

ここで大切なポイントは、明確さにあります。
そして部下の意思決定を最大値尊重すること。(支援すること)

部下がなぜやる気が出ずに成果もあげられないのか。

それは「やることがわかっていない」ことにあると述べています。

もうそれほどマネジメントのいらないクラスにまで育つと、自分で自分のやることを見つけどんどん進んでいきます。しかしまだこれからの社員は、何をして何を目指せばいいのかがわかっていません。わかっていないから、業務周りをウロウロしてしまうのですが、それを見たマネージャーはいちいち細かく指示を与えてしまう、という破目になります。

「やることをお互いに共有していない」ために、部下もマネージャーも結果として手間もかかり生産性もあがらないという典型ですね。指示待ち社員を生むもとにもなります。

1分間マネージャーは、部下に目標設定をしてもらったあとに、一緒に確認しあいます。
そうしてから、やることや達成すべき成果を明確にします。つまり部下が明確な仕事の成果と行動指針を持つように支援するのですね。


ただし、それは250文字以内で表現される、シンプルな要点です、
ですので、途中のやり方はすべて部下の意思にまかせます。

ここが重要です。
1分間マネージャーは、部下の個人としての意思や能力を最大限尊重します。
彼らが最大限意思決定できるようにするために、成果と行動方針のみ明確にするのですね。
それだけあれば、その途中のやり方の試行錯誤は部下が創意工夫できますし、責任感ももてるからです。

仕事の最大の報酬は仕事そのものにある、と言いますが、自分の目標を自分で成し遂げたとき、たしかにわたしたちは仕事に喜びを感じますよね。

1分間マネージャーは、部下の充実を支援する、部下が迷わず自分の意思決定で持てる能力を発揮するために、その範囲としての成果と行動指針は明確にしてお互いに共有するというわけです。

1分間でまとまれるくらい、明確な目標(行動設定)を部下と共有して、実施方法はまかせる。

まずここからはじめてみましょう。

②1分間称賛法

これは目標に向かっている途中で「よい行動」があれば即座に称賛する(ほめる)というものです。

言い換えれば、「あなたの行動は目標達成に向かっている。そのまま進みなさい」とフィードバックを与えるということです。

よい行動は、その場ですぐにフィードバックしてあげる。
非常に大切なポイントです。

部下は自分で試行錯誤しながら目標に向かって仕事しています。
しかし、途中のやり方は部下にまかせるのですから、とくにまだ未熟なほど何をしていいか途方に暮れるときがあります。本当にこれでいいのだろうか、間違っていないだろうか。そんな不安を抱えています。

そんなときに、マネージャーから「これでいいよ。君はすばらしい」そんな風に言われたら、何よりも安心しますよね。このまま進んでいいのだ、と。そして、「マネージャーはわたしのことをいつも見てくれている」という信頼感も生まれます。

あまり良くないマネージャーの特徴は、「部下はできてあたりまえ」と思うところにあります。だから「できないところ」ばかりに目がいき、注意ばかりしてしまう。

でもとくに未熟な頃は人間不安だらけ、スキルも低い。「できないほうがあたりまえ」なんですね。だから、小さなことでも具体的に良い点、良い行動を見つけてあげることが、非常に大切になります。

1分間マネージャーでは、子どもに教えるのも、大人も一緒だと言っています。
小さな具体的なことを称賛していく。そうすると教えられた方は、自分のやっている自信が持てます。実際にまずその部分は身につけることができます。それが増えると、もう自分でできるようになりますから、それが益々加速していくのです。

あの将棋の羽生善治さん。
普通は初心者は10級からはじめるそうですが、かれの通っていた将棋道場では15級から始めさせたそうです。15級からだと、すぐに級は上がりますよね。級が上がる喜びをすぐに何度も味わうことができる。それによって、いつのまにか成長が加速していうというわけです。その後羽生さん以外にも複数のプロ棋士を輩出した名門道場になりましたから、理にかなった方法なのですね。

「気分のよい部下は、よい成果を生む。」

もう一度思い出しましょう。

③1分間叱責法

叱責する、叱る時の方法です。

人はミスをするものですし、目標達成もできないこともあります。
部下の誤った行動がそれを引き起こしたとき、部下に自覚してもらわないといけない場面もあります。

その時にどうするか、それが1分間叱責法です。
このポイントは「行動だけを叱り、人間は叱らない」につきます。

よくやりがちな叱責としては、
「あの行動はまちがっている。だからお前はダメなんだ。」
部下の「人間」にまで叱責が及ぶことにあります。

それで気持ちのよい人なんて、一人もいません。

「失敗の原因は誤った行動にある。だから行動について指摘をする。」

と、行動にフォーカスを合わせ指摘することを事前に述べてから叱責するのがいいと、推奨しています。

タイミングとしては、ため込むのではなく誤った行動が発生した時に、すぐにまっすぐ指摘すること。そしてマネージャー(あなた自身)が感じた感情もしっかり述べてあげること。

たとえば、
「君のその●●という行動はよろしくない。その行動を見て、わたしは悲しかった。」

しっかりと感情を込めて伝えることで、部下はすぐにその意味を自覚することができます。
しかもためこまず、その場は指摘したら、もうそれで終わり。
1分間のうち半分(30秒)くらいでいい。

だから、その後の感情のもつれはありません。
ため込んでため込んで、あとでまとめて一気に噴出させるから、部下にも抵抗感が生まれ、マネージャーと部下との関係という悪感情が残ってしまうのですね。

なおわたしの経験で言えば、叱責は大声で言う必要や怒鳴る必要はまったくない。(怒鳴りは相手の人間性の否定ですので逆効果。)むしろ穏やかに、でも真剣に言う方が相手にはしっかりと伝わります。

1分間のうちもう半分は何をするかといえば、それは、しっかりと部下への愛情や期待を伝えることです。つまり、行動は指摘するが、人間としては大切に思っている、認めていることをしっかりと伝えてあげるのです。

人間は、自分のために自分に愛情を持っている人の言うことを聞く生き物です。

「気分のよい部下は、よい成果を生む。」

1分間マネージャーと前提にある考えです。
これだけは忘れないようにしましょう。

まとめ~混迷の時代こそシンプルに大切なものを

人は、

・目的と行動方針が明確であること
・自分の意思でおこない、しかもそれが間違っていないと思えること
・愛情深い関係があること

これがあれば、よほど労働条件が悪くない限り、充実感をもって仕事に没頭することができます。

1分間マネージャーは、「明確な目標を共有した信頼関係」がもっとも成果をあげる。
そのように伝えてくれているように感じます。

「気分のよい部下は、よい成果を生む。」

わたしもはっとさせられました。

Less is More(より少ないほど、より多く得られる)

いまいちどわたしたちは、混迷で複雑な時代からこそ、本当に大切なことだけにシンプルになる時代に来ているのかもしれません。

執筆者紹介

オフィスオントロジー
代表 友成治由

人と組織の可能性と創造性を引き出すメンター
人と会社を伸ばすメンタリングの専門家

10年超にわたる起業家育成や変革人財育成経験から得た実践知と、意欲心理学によるチェンジメンタリングで人が本来持っている意欲、可能性、価値を引き出す。
主体性/リーダーシップ開発、メンター育成、メンター制度構築、チーム活性化などを支援。

哲学存在論専攻。
宮崎県出身。今もなまりはとれない。

経営メディア『経営プロ』にて執筆コラム掲載。
コラム「メンタリングで人や組織の可能性を引き出す」など

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