「Q思考」~コレだけで社員がものすごく変わる「問う」技法
「美しい質問」だけが美しい思考を生む。
劇薬かもしれません。
しかし、コレを社員に許し始めたとき、会社はものすごく変わることは保証しましょう。
それくらい「問う」には、社員と会社を激変させるパワーがあります。
目次
- ○ 質問が9割1分7厘
- ○ 子どもの質問は、○歳から急激に減少する
- ○ イノベーションを生み出す公式
- ○ 「美しい質問」を自分のものにする3ステップ
- ・①「なぜ?」
- ・②「もし~だったら」
- ・③「どうすれば?」
- ○ それでも「問いの力」を取り入れますか?
- ○ まとめ
- ・執筆者紹介
質問が9割1分7厘
「Q思考~シンプルな問いで本質をつかむ思考法」の著者、ウォーレン・バーガーは、まえがきでこう話しています。
自分はプロのジャーナリストとしてあらゆる成功者を取材してきた。しかし彼らが取り組む方法には、成功のための魔法の公式も、「これしかない」というたったひとつの説明もなかった、と。
ところが世の中のルールを変えるほどの偉業を成し遂げた人たちには、このことだけは共通点としてあった、というのです。
それが、「疑問を抱くこと、質問をすることが、抜群にうまい」というということ。
以下、これを「問うこと」と呼びます。
スティーブ・ジョブズは、ボタンだらけの携帯電話をみてこう問いました。
「なんで『スマートフォン』といいながら、あんなにボタンだらけでスマートじゃないんだろう?」
(いわゆる現代のスマホが出る前からスマートフォンという言葉はあり、そんな、たくさんのボタンだらけのスマートフォンが世界の常識でした。)
この問い一つで、世界のメディアを激変させたi-phoneという形の本物のスマートフォンが生まれました。
アインシュタインの名言とされるものの一つに、このようなものがあります。
もし人生に直結するほどの難題の解決に対して、1時間しかないとしたら、そのうち55分は正しい問いを生むことに費やすだろう」
60分に対して、55分。
ものごとの重要性に占める割合は、実に、問うことが、9割1分7厘なのです(91,667%)
子どもの質問は、○歳から急激に減少する
「Q思考」に紹介されている研究によると、幼稚園児は日に100回の質問をする。
しかし中学になると見事に質問をしなくなります。
4、5歳までは質問だらけですが、6,7歳くらいからは急激に減少します。
アメリカの調査ではありますが、日本でも同様ではないでしょうか?
もちろん成長にしたがって物事の知識が増えるため、質問しなければならないことも現象するとも言えます。
実際この調査でも、質問回数は減るが、作文や読解などスキルを使う割合は増えることが示されています。
とはいえ重要なのはここからなのです。質問の回数が減少するにつれて、なんと勉強への関心度は薄れる一方なのですね。学校生活に身が入らなくなる。
たしかにわたしたちは、さまざまな知識やスキルをみにつけることによって、社会生活を営み、仕事も上手にできるようになります。
し一その過程で失っていく大切なこともあるのです。
それが創造性であり、イノベーション力であり、そして何よりもものごとに取り組む意欲。
もし現在が安定していて、安定をいかに上手に効率的に持続させていくか。
そのような状況ならば、「答え」を効率的に継承していく仕組みがあればいい。
「正しい知識」、「正しい方針」、「正しいベキ論」etc
「問うこと」はさほど重視しなくても回っていくでしょう。
しかし現在が不安定で、つねに環境や状況へのすばやく適切な変化が求められるとき。
また、違った発想やみずみずしい意欲でみずから新しい局面を生まないといけないとき。
「問うこと」なくしては、まず100%といっていいほど、物事は生まれません.
今の状況は変わりません。
「問い」は、生み出すパワーがあるのです。
あなたの会社はいかがでしょうか?
新しく、突破できる、意欲が止まらない状況をみずから生み出せる会社でしょうか?
それとも、自らの運命は他者や環境に委ねる会社ですか?
イノベーションを生み出す公式
ブレークスルーを生み出す公式。
それは
「Q(問い)+A(アクション)=I(イノベーション)」
です。「問い」ながら、その「問い」を行動へ移していく。
これは同時に、この公式にもなります。
「Q―A=P(フィロソフィー)」
つまり、あなたの「問い」から「行動」に関する部分を除いたとき、そこにあなた自身が何を大切にしているのか、どういう風に世界を観ているのか、そんな「あなたの哲学」がある、というわけです。
「問い」は「行動」と結びついたとき、イノベーションを生みます。
「問い」を純粋にしたとき、そこにあなたの哲学(信念)が現れています。
「美しい質問」は、シンプルで具体的で力強い行動になり、ときには世界を変えるほどのイノベーションを生み出します。
「美しい質問」には、その質問ができる人の、他にはない想い・視点・信念が詰まっています
「世界はもっと美しいはずだ」「会社はもっと伸びるはずだ」「お客様はもっと快適になるはずだ」「社員は本来もっとすばらしいはずだ」etc・・・
「美しい質問」と」は、自由であり、パワーがあり、想いが詰まっており、世界(社会、業界、会社、お客様、社員等々)を変えるものです。
「美しい質問」を自分のものにする3ステップ
「Q思考」では、そんな「美しい質問」を自分のものにするために、3つのステップを紹介しています。
この3つの「Q(問い)」を投げかけることによって、自由で、パワーがあり、想いが詰まっており、世界(社会、業界、会社、お客様、社員等々)を変える、そんな「美しい質問」ができるようになります。
わたし自身、「哲学」を大学時代から専攻しており、今もベースとしておりますが、この3つの質問のシンプルな力強さには目を見開かされました。
たしかに世の中の偉人でも、わたし自身でも、物事を動かした、」生み出した、変えていったとき、この3つの質問を(無意識に)していたのです。
これをいつも意識的にもっておくことで、ブレークスルーがはるかに起こりやすくなると実感しています。
3つのステップは以下になります。
①「なぜ?」
「なぜ?」は、物事の前提に疑問を投げかける問い。
「なぜ?」と問うことで、いまのあたりまえの見方、枠組みが取り払われていきます。
「なぜ、電話とインターネットとメールがバラバラなのか?」(i-phone)
「なぜレンタルビデオを延滞すると延滞料金がかかるのか?」(Netflix)
「なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ」(TOYOTA 5回のなぜ)
など、その時点であたりまえと思われていることに問いを投げかける。
するとその前提は、かならずしも「絶対」だとは限りません。
むしろ絶対はない、こともみえてきます。
また、「なぜ?」によって、物事のもっとも大切なことに気づくこともできます。
わたしの例ですが、あるプロジェクトに参加したメンバーがいました。わたしはメンターとしてかかわっていましたが、そのメンバーはなぜか身が入らず、やや斜に構えたような態度をしています。このままでは、彼にとってもプロジェクトにとってもよろしくない。
彼の話をきくと、さまざまな言い訳をしていましたが、要は何かを見失っているようでした。彼自身ももがいているように見えました。
そこで、ひとこと、穏やかにこう投げかけたのです。
「あなたは、なぜこのプロジェクトに参加したのですか?」
彼はその問いかけで、はっと気づきました。
自分は、このプロジェクトを通して実現したい想いがあったことを。本来の大切な目的があったことを。プロジェクトの進行の中でのさまざまな実務や人間関係に振り回されていて、逃げたい気持ちだけだったのです。
彼は自分の本来も目的にあらためて気づくことで、プロジェクトに魂が入り、細かいことはなんのその、彼らしく突破してすばらしい成果を生み出してくれました。
②「もし~だったら」
「もし~だったら?」は、物事の枠組みをずらしたり、なくしたりした新しい世界像を見せてくれます。それによって、ブレークスルーとなるアイデアが生まれます。
「もし、電話とインターネットとメールを一緒にしたら?」(i-phone)
これによって、すべてが一体となった現代スマートフォンができました。
「もしビデオをレンタルして延期しても、延滞料金がかからなかったら?」(Netflix)
これによって、定額制でレンタルし放題というビジネスモデルが生まれました。
「もし~だったら?」
アイデアを生み出すために、こんなにすばらしい質問はちょっと見当たりません。
「もし、寝ているだけで答えがみつかったら?」
「もし、一言だけで社員がやる気になったら?」
「もし、オフィスがなくても業務が成立したら?」
「もし、業務を3分の1に減らしても、2倍の成果を出したら?」
「もし、機能の9割を全部削ったとしたら?」
さまざまな発想が湧いてきますよね。
なかでも会社変革や、業務変革、商品改革など、劇的に成果を生み出したいとき、上記の例で言えば、最後の二つのような問いは有効です。
一見無理だと思われる状況を、無理やりにでも問いにしてみるのです。
それによって、いままでこびりついた常識の枠を、やはり無理やりにでもはがすことができます。
「もしガラケーのボタンを全部取り外してみたら」
わたしは,i-phoneという製品ができたことよりも、この問いをしたこと自体に感銘をうけています。
③「どうすれば?」
「どうすれば?」つまり実現可能性への質問です。
ここで重要なのは、「どうすれば?」は3番目であるという順番です。
「なぜ?」「もし~だったら?」のあとにつづくのが「どうすれば?」。
「どうすれば?」から先にはいると、まず新しいアイデアは出てきません。
なぜならば、自分たちの枠が取り貼られないままだからです。
だから既存の枠のまま、これまでのあたりまえの枠の中からアイデアを探すだけになってしまいます。
「なぜ?」「もし~だったら?」で枠が外れ、新しいアイデアやイメージが出るからこそ、
ソレを「どうすれば?」を問うことで、新しい物事や状況が生まれてくるのです。
「Q思考」によると、「どうすれば?」がより実現できるかといえば、ひとことでいえば「ありとあらゆることをやってみる」です。
一つの方法論に絞らず、さまざまなことを考え、試し、やってみる。
試行錯誤、試して学び、形にしていくのですね。
「Q思考」では、イノベーションを生み出すひとほど、「無知」だと自覚しているといいます。
「無知」だからこそ、自分の知っていることを絶対視せず、さまざまなことを問い、試し、そのたびに学びを深めていくことができる。
ソクラテスは「無知の知」と言っていますが、「知らない」という自覚がからこそ、頭も子心も開いて、ありとあらゆる可能性を見つけ出すことができるのですね。
それでも「問いの力」を取り入れますか?
わたし自身は、「問う力」はぜひどの会社にも取り入れたほしいと願っています。
「問う力」は、問題意識をはるかに高め、気づかなかった視点の解決法を生み出し、会社全体にすばらしい効果をもたらすからです。
「問い」は探究心、好奇心、創造性の源ですから、社員一人一人が「問う力」を身につけると、目の前の仕事、業務、お客様への対応、商品開発、マーケティング等々が、イキイキと輝いて見えます。
比ゆではなく、輝く。
なぜならば、目の前の仕事の本質がわかり、自分たちの力ではるかに良くでき、お客様や社会をよろこばせられることを心から実感するからです。
自分の能力を発揮して、仲間たち(会社)にもお客様にも社会にも喜ばれる。
仕事をしていてこんなに充実感を感じることはありません。
だからわたしは、ぜひ取り入れてほしいと願っています。
ただし「問うこと」は劇薬でもあります。
とくに、組織をまとめる経営者やリーダーにとって。
社員は「問う」ことでイキイキするでしょう
しかもその「問い」は日を経つごとに鋭く、本質的で具体的になっていきます。
もしその主因たちの問いを、経営者やリーダーが受け止められなかったら。
多くの場合は、問う社員たちを押さえつける方向に行ってしまいがちです。
「そんなこと考える暇があったら、業務をやれ」
「そんな実現性が低いことはダメだ。」
「わたしの言うとおりにやっていればいい」
要は経営者やリーダーが受け止められないのです。
「問う力」を会社に取り入れるときは、同時に経営者やリーダー自身も身につける、または社員たちを受け止める力をもつ必要があります。
経営者やリーダーの器量や成長の意志が求められてくるのですね。
まとめ
「問うこと」本当にすばらしいし、楽しいです。
かつ充実感でいっぱいになります。
少し前にちょっと厳しそうに述べましたが、これもまたわたしの願いですが、経営者やリーダーも社員も、みんなで一緒になって「問うこと」を楽しんでほしい。
それぞれの立場からさまざまな問いが出る。
視点がでて、みんなで一つになって会社をよくしようとする。
「Q-A=P」、哲学でした。
つまり、「問うこと」によって、それぞれの良き思いや信念を通わすことができます。
「問うこと」自体が、一人一人が充実し、一つになるプロセスになるのですね。
「問い」を楽しみましょう、味わいましょう。
自分の問いで新しい世界が見えたよろこびは、言い難い恍惚感を感じるほどです。
こちらも役に立ちます(「一言で社員のやる気を変えられるリーダーの言葉術とその秘訣とは」)
執筆者紹介
オフィスオントロジー
代表 友成治由
人と組織の可能性と創造性を引き出すメンター
人と会社を伸ばすメンタリングの専門家
10年超にわたる起業家育成や変革人財育成経験から得た実践知と、意欲心理学によるチェンジメンタリングで人が本来持っている意欲、可能性、価値を引き出す。
主体性/リーダーシップ開発、メンター育成、メンター制度構築、チーム活性化などを支援。
哲学存在論専攻。
宮崎県出身。今もなまりはとれない。
経営メディア『経営プロ』にて執筆コラム掲載。
コラム「メンタリングで人や組織の可能性を引き出す」など
シェアする