影響力の正体~社員たちを心から動かす技術
しかしここで悩みが。
「人は思い通りに動いてくれない」
という現実。
一方見渡してみれば、世の経営者やリーダーの中には、この人が少し話しただけで人がよろこんで自ら動いてくれるという「影響力」を持つ人もいます。
「影響力」とはいったいなんなのか・
どうすればわたしたちも、影響力を身につけて人を心から動かせる(動いてくれる)ようになるのでしょうか?
目次
- ○ ひとを動かす技術
- ○ 4つのリーダーシップ
- ○ 自分は相手に何を提供できるのか
- ○ 影響力の正体とは
- ○ リーダーの役割
- ○ まとめ
- ・執筆者紹介
ひとを動かす技術
この本は帯がすごい。
「人心掌握の至高の名著!」と銘打っています。
はじめて部下を持った人から大企業の社長まで、人望と信頼感に満ちたリーダーに生まれ変わる珠玉の一冊。
10年前ほど前でしょうか、気になって手にとったのですが、正直に告白すればタメにはなりましたが、その時にはあまりスゴさを実感できませんでした。
ストーリー形式でスルスルと読めますから、難しいどころかむしろとてもわかりやすい。
言っていることも、ネタバレをすれば、聞いたこともある。
そのまま本棚にしまっておいたのですが、とはいえ妙に気になって、いつでも読み返せるよう目立つところには置いていました。
最近ふと目にとまり、呼んでいる気がして読み返したのですが、当時スゴさを実感できていなかったのは、単にわたしが追いついていなかっただけに気づかされたのです。
『ひとを動かす技術~1人の部下も500人の反対者も自分から動いてくれる』ボブ・バーグ/ジョン・デイビット・マン著
おふたりのことはわたしはよく知りませんが、どうやらアメリカでは有名なリーダーシップの提唱者、教育者のようです。
この本では、M&Aとして買収交渉をするビジネスマンが、いかに相手先企業の経営陣や社員を説得し買収に賛成してもらうか、つまり反対者をどう動かすか、というストーリーになっています。
そこで問いかけられているのが、人を動かす影響力とは何か、というものです。
「ひとを動かす技術~1人の部下も500人の反対者も自分から動いてくれる」はこちら
4つのリーダーシップ
そのストーリーの中では、買収される企業も決して経営陣がダメな会社というわけではなく、むしろ経営陣たちも魅力に富んでいて社員たちも慕っている、とてもまとまりのある会社です。
買収しに出向いたビジネスマンは、逆に彼らに影響を受けることになります。
買収先のCEOは言います。
「この会社がここまでやってこられたのは、『原点』と『ビジョン』を持ち続けたからだ。」
彼が描き見せ続けるビジョンに創業以来社員はついてきていました。
副社長兼マーケティング部長は言います。
「うちは製品をつくっているんじゃない、人をつくっているんだ。信頼して任せるんだ」
彼のもとにいる社員たちは、自分の能力をつぎつぎと発揮して、充実しています。
NO3の製品開発部長は言います。
「人は言葉ではなく、仕事でついてくるんだ。仕事を知り尽くしているから部下はついてくる」
部下たちは絶大なる信頼感をもって彼に敬意を抱いていました。
NO4の経理兼人事部長は言います。
「数字は確かにとても大切。ただし数字には数字以上のものが現れている。」
彼女は、「する」ことよりも「いる」こと。そのビジネスマンに自分の在り方、価値観はいったいなんなのか、あなたが信頼できるのはなぜかを問うてきました。
もうすでにここまでで、グサリグサリと学ぶことだらけです。
この本の言葉をつかえば、
「ビジョン」を指し示し
「思いやり」で人を信頼し
「根拠」ある仕事で敬意を持たれ
「魂」で人を導く
自分自身を振り返ってしまいました。
あなたはいかがでしょうか?
この4つを意識すれば、影響力あるリーダーになれることは間違いありません。
・・・
しかし、最後の最後、どうにも胸のモヤモヤがとれません。
主人公であるビジネスマンは、これだけでは最後、何かが足りないと感じていました。
自分は相手に何を提供できるのか
実はそのビジネスマンは、ある不思議な老齢のご夫人とたまたま出会っていました。
そして彼女から買収交渉にあたる前に、こんな質問をされていたいのです。
「あなたは相手に何を提供できるのですか?」
ビジネスマンの会社は資金力もあり、種々の経営資源ももっています。買収を行なうことによって、それらをたっぷり提供できるでしょう。
でも、4人のリーダーたちとの交渉プロセスにおいて、はたして「それらを提供する」と訴えたところで彼らが本当に動いてくれるのか、わからなくなっていました。
わたしが提供できることはなにか。
それを探し求めるプロセスでもあったのです。
「魂」「ビジョン」を指し示し
「思いやり」で人を信頼し
「根拠」ある仕事で敬意を持たれ
「魂」で人を導く
そんなリーダーたちがいる会社に対して、自分は何を提供できるのか。
影響力の正体とは
クライマックスとその詳しい意味は、ぜひ書籍で読んでください。
端的に結論だけ言えば、
その主人公は、その会社の経営者や社員たちに「かれら自身(自分自身)」を提供したのでした。
相手が本当に望んでいることとは何か
相手の本当の問題とは何か
自分が望んでいることではなく、相手が望んでいること。
それによって、彼らは、本当の問題は「自分自身」だったことに気づいたのでした。
主人公は気づきます。
人を動かすとは、「相手自身に考えさせること」だと。
不思議なご夫人は、主人公にこう教えていました。
影響力とは「引く力」でできている。
影響力―influenceの語源は、目に見えない力の流れ。
目に見えない力の流れを引き寄せることが、影響力の本質である、と。
リーダーの役割
「ビジョン」を指し示し
「思いやり」で人を信頼し
「根拠」ある仕事で敬意を持たれ
「魂」で人を導く
すべてリーダーには必要不可欠です。
ただし、押せば押されるように、「自分」を押し出せば、「相手」もそれに負けじと押し出してくる。
自分の側の資質だけでは、自分とは別の存在である「相手」が本当に心から動くようにはなりません。
この本では言います。
人を支えることがリーダーの役割。
自分を第一に考えた瞬間、リーダーシップはなくなる。
影響力―influence、目に見えない力の流れ。
わたしたちが、真に人を動かすリーダーであろうとすれば、「自分」には目に見えないことをも大切にする力が必要なのかもしれません。
まとめ
この本は「サーバント・リーダーシップ(奉仕者としてのリーダーシップ)」としても読まれています。
とくに「社員ひとりひとりの自発的なやる気や力をどう引き出すか」が絶対命題になっている現代では、この本の内容やサーバント・リーダーシップは必ず学んでおきたいものです。
ただ・・・
この本の教えは、実はわたしたち日本では昔からよく教えてもらっていたように思います。
わたしも好きで海外の本はよく読みますが、それにつけてかえって、自分たちが大切にしてきたものの大切さやスゴさも身に染みてきています。
こちらも役に立ちます(信頼と共感のリーダーになる必須教科書。「サーバント・リーダーシップ」)
こちらも役に立ちます(「一言で社員のやる気を変えられるリーダーの言葉術とその秘訣とは」)
執筆者紹介
オフィスオントロジー
代表 友成治由
人と組織の可能性と創造性を引き出すメンター
人と会社を伸ばすメンタリングの専門家
10年超にわたる起業家育成や変革人財育成経験から得た実践知と、意欲心理学によるチェンジメンタリングで人が本来持っている意欲、可能性、価値を引き出す。
主体性/リーダーシップ開発、メンター育成、メンター制度構築、チーム活性化などを支援。
哲学存在論専攻。
宮崎県出身。今もなまりはとれない。
経営メディア『経営プロ』にて執筆コラム掲載。
コラム「メンタリングで人や組織の可能性を引き出す」など
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