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わかりやすく組織一体化「アーキタイプ法」~深層心理でつながる新方法

理念経営、パーパス経営、ビジョン経営…
呼び方はさまざまであっても、目に見えない大切なことを大切にする経営、という意味では一致していますよね。

会社単位でなくても、部やチーム単位で、大切な目的や価値観へ向けてひとつになろうとされているリーダーやメンバーたちもいるでしょう。

しかし、ここで問題が…

「どうにもわかりづらい」

「顧客満足」「環境のために」「挑戦」など、目指したい目的や価値観を示したなんらか言葉がありますよね。

では、それをどんなイメージでとらえているのか。
社員やメンバー同士、ひとによってそれぞれ違う。みなバラバラなのです。

だから「いざ、ひとつになって志事にまい進!」と掛け声をあげても、イメージが異なるので、解釈もことなり行動も異なり、結果、いつのまにかなんとなく一体感が薄れてしまう。

とても大切だけれども抽象的。
そんな理念や目的や価値観を、とてもわかりやすくし、かつより深く深層心理でつながることのできるもの。

それが「アーキタイプ」です。

目次

アーキタイプの提唱者と意識の三層構造

アーキタイプ。
一般にはなじみのあまりない言葉ですよね。

しかし「心」、とくに深層心理や無意識について学ばれたことがある人ならば、ユングという名前は聞いたことがあるでしょう。

カール・グスタフ・ユング。
ユング心理学の創設者であり、世界三大深層心理学者の一人としても有名です。(他は、フロイト、アドラー)

「コンプレックス」や、また「シンクロニシティ(一見関係の無いことが同時に起こる偶然)」など、今や普通の言葉。これらはユングの研究結果が広まったものです。

彼は深層心理学者として、人の「無意識」の研究および、それに基づき精神的な症状を抱えたクライアントたちへの心理療法をおこなっていました。

「アーキタイプ」、日本語訳では「元型」と言いますが、これもユングが提唱した非常に重要な概念です。

ユングはフロイトやアドラーとくらべて、いわゆる心理療法やメンタルトレーニングの世界以外にも、幅広い一般の関心や応用を集めています。

それは、彼の研究領域が、「神話」「易学」「曼荼羅」「宗教的意識」「UFO」など、ひとによってはオカルトとも揶揄されるような分野にまで及んでいたから。

もちろん彼はオカルティックなひとではありません。
人間の心理現象を研究すると、古代から現代まであらゆる分野を探究しなければその全体像をつかめないので、自然に領域がひろがっていったのでした。

かれは、人間の心には3つの領域があると提唱しています。

ひとつは「自我」。いわゆるわたしたちの意識の部分ですね。
あとのふたつはいわゆる無意識の領域です。(無意識は、文字通り「無」なので、深層意識、と呼んだりもしています。)

そのうちの一つ目、自我の次に深い領域が、「個人的無意識」。
自我では普段は意識されない部分です。

たとえば「コンプレックス」という言葉。自分の嫌な部分や見たくない部分など「影」となるものがありますよね。それらは普段は、自我では意識できない部分に隠されています。
そうすることで日常生活をなんなく過ごせるのですが、でもときには何らかのきっかけで、隠していた嫌な部分が刺激されてしまいます。

(わたしならば、たとえば昔ふられた経験。普段は忘れてなんともないけれども、ふと似た顔を見かけてしまうと、妙にうずいてしょうがなくなったり。)

PTSDなど重いトラウマ、こういったことは「個人的無意識」領域に格納されているわけです。その人の、個人の人格として普段は意識されない領域です。

無意識にはもう一つ、より深い、根源的な層があります。
それが「集合的無意識」。

わたしたちは、個人であると同時に、人間そのものです。
またたとえば、日本人であったりもして、ある大きな歴史を共有している存在でもあります。

わたしたちが生物、人間、集団生活者として存在し始めて以来のもっとも根源的なものが詰まっているのが「集合的無意識」という層です。

だから、もっとも古いものであれば、何億年前かわかりませんが生物としてこの地球上に現れたときから記憶が沈殿されています。
人間としても何十万、何万年前からのものがあるわけであり、それらは「わたし」を越えたところで、「わたし」を突き動かしているというわけです。

世界中の神話には話の内容はちがっても共通のパターンがあったり、地理も文化もことなるのに、ある深い意識状態にある人の描く絵にはひとしく「曼荼羅」が見られたり。これらは「集合的無意識」がはたらいているからと考えます。

「UFO」についても、UFOが宇宙人の乗り物がどうかは別にして、共通した「UFO」なるものを世界中で同時期に人間が経験しているとは、どんな集合的無意識が働いているのだろう、というわけです。

「アーキタイプ」は、そんな「集合的無意識」にまつわる部分の話なのですね。
ですので、「アーキタイプ」を理解し応用すると、深い部分で心のつながりができることが見込まれるのです。

では、アーキタイプとは?

「アーキタイプ」、元型とは何か。
わたしたち人間は、ただ子供から大人になり、老化して死ぬという肉体的、物理的な存在だけではありません。
その生きる過程で、心や精神的な変化や成長を遂げていく存在でもあります。

人生には人によってさまざまなステージや成長段階がありますよね。
その時々で、個人の思惑をこえて、妙に「これが自分の課題だ」「こうなりたい」「こうあらねばならない」と内側からわき出る衝動のようにうずくようなときがあります。

たとえば、こういったことはあなたにもありますよね。

「いまのわたしはもっと自分に純粋になりたい。ならないといけない」
「いまのわたしは戦わなければならない。嫌われてもいい、でもやらないといけない」
「いまのわたしは何かを生み出してしかたがない。表現したくて仕方がない」
「いまのわたしはとにかく今を楽しみたい。もっと人生を味わいたい。」

あなたでないものが、内側からあなたを動かしいるような感覚ってありませんか?
そんなとき集合的無意識である「アーキタイプ」-「元型」が働いているのです。

「元の型」とよぶくらいですから、人間の心理には、人類共通の型があるというわけなのですね。そのひとの成長や発達段階、人生のステージ段階に応じて、必要な「元型」が働いてきます。
それは個人の意識を越えたところ、「人類共通の普遍的なもの」として働いてきますから、わたしたちにとっては「なぜだかわからないけど、突き動かされている」ような感覚にもなります。人間の心の持つ本能といっていいかもしれません。

ユングは「元型」に気づいたというだけでも偉大なのですが、「元型」はイメージとなって現れることを指摘したのも偉大です。むしろわたしたちにとっては、だから奥の深いものをわかりやすく応用することができるありがたさがあります。

「元型」は「無」意識の世界の話ですから、言葉ではとらえられません。
しかし深く進んだ夢や特別な意識状態のときの文様などに「イメージ」として現れてきます。
それらのイメージを読み解くことで、その人の無意識の世界で何が起こっているのかをある程度掴むことができます。

ユングは、そんないくつかの「元型」に、「男性」「女性」「老人」「子供」などの「イメージ」を与えたのですね。
「男性」ならば、何かを断ち切って前に進むはたらき。
「女性」ならば、大きなものに包まれていく働き。
「老人」ならば、賢くものごとを見通して生きる働き
「子供」ならば、純粋にありのまま生きる働き。

などです。わかりやすいですよね。

その後ユング派の弟子たちが、「アーキタイプ=元型(以下は、アーキタイプで統一します)」論を発展させていきました。

その有名な一人キャロル・S・ピアソンは、人間はまるで物語の英雄のように、人生の中で心の旅を行ない何事かをつかんでいくとし、「英雄の旅」という著作も出しています。

心の旅とは、つまりその時その時に必要なアーキタイプを経験しながら、人生の真理をつかんでいく旅です。

物語もそうですよね。
最初は楽園のような世界にいた主人公。
困難に出会って成長してく中で、仲間との出会いや、問題へ立ち向かううちに、愛や知恵や創造、秩序や生きる喜びなど、次々と学んだり発揮したりしながら、宝物を得て戻ることで、ジ・エンドを迎えます。

ピアソンは、そんな人生の心の旅の中ではたらく12種類のアーキタイプを提唱しました。
自分の中ではたらいているアーキタイプを理解することで、自分の人生の課題や宝物をしっかり得ながら人生を進むことができます。

アーキタイプはブランディングでも使われている

アーキタイプの非常に面白いのは、企業や商品のブランディングにも大いに活かされていることです。

企業や商品を選ぶのはなぜか。もちろん、その商品が便利だったり費用対効果が高かったりすることもあるでしょう。

しかし値段の関係のない高価なブランドだけではなく、なぜかわからないけどコレが好き!という会社や商品ブランドがひとつやふたつはあるはずです。
わたしたちはそこに、そのブランドとの深い心の結びつきを感じています。

Apple好きなひとは、クリエイティブさや、スタイリッシュさ、他とは違うことなど
TOYOTAが好きな人は、信頼性や安全性などでしょうか。
NIKEには挑戦を感じますし、ハーレーダビッドソンには「俺の道」を感じたりします。

アーキタイプ・ブランディングは、深層心理ではたらくアーキタイプに沿ったイメージを、ブランドで表現しているわけです。

ピアソンの提唱による12アーキタイプは以下になります。

どんなアーキタイプがあり、その企業例にはどんなものがあるのか。
いかにざっと示しますね。細かいところよりも、「イメージ」をつかんでみてください。

アーキタイプは複数が組み合わさっていたり、とらえかたの違いもあるかもしれないので、「言われてみればこの企業はそんなアーキタイプイメージだなあ」くらいでとらえておいてくださるとありがたいです。

なお当該企業やブランド自体が「わたしたちはこのアーキタイプである」と宣言しているわけではないので、さまざまな方や私の感覚での推測になることはご了承くださいね。

(※「アーキタイプ ブランディング」で検索すれば、関連するサイトがいくつか出てきますので、それらも参考に)

1、幼子(Innocent)
他:子ども、夢見る人、理想主義者など
例:コカ・コーラ、DOVE
①モットー…「安心、安全、純粋」 わたしもあなたも無垢であること
②核となる欲求…楽園を経験する
③目指すゴール…幸せであること

2、探求者(Explorer)
他:冒険者、開拓者、探究者など
例:スターバックス、リーバイス、ジープ
①モットー…「自由」 わたしの心を妨げるな
②核となる欲求…世界を探求することで自分が何ものなのかを発見する自由
③目指すゴール…よりよく、より本来の、より充実した人生

3、賢者(Sage)
他:探偵、メンター、研究者など
例:マッキンゼー、新聞社、googleなど
①モットー…「理解」 真実があなたを自由にする
②核となる欲求…真実の探求
③目指すゴール…世界を理解するために知恵と分析を使うこと

4、英雄(Hero)
他:アスリート、戦士、レスキューなど
例:NIKE、BMW、ダイソンなど
①モットー…「卓越」 意志あるところに道あり
②核となる欲求…勇気の必要な難しいアクションを通して自分の価値を高めること
③目指すゴール…世界を進歩させる卓越した道を示すこと

5、反逆者(Outlaw)
他:活動家、リフォーマー、反体制など
例:ハーレーダビッドソン、レッドブル、マルボロなど
①モットー…「解放」 ルールは破られるためにある
②核となる欲求…逆襲と革命
③目指すゴール…自分たちにとって役に立たないことを破壊すること

6、魔術師(Magician)
他:科学者、エンジニア、イノベーターなど
例:Apple、ピクサー、ディズニーなど
①モットー…「パワー」 起こすことができる
②核となる欲求…世界や宇宙の法則の根本を知ること
③目指すゴール…夢を叶えること

7、普通の人(Everyman&woman)
他:市民、奉仕者、ネットコミュニティなど
例:IKEA、雪印おいしい牛乳、ユニクロなど
①モットー…「一体感」 すべてのひとは同じなんだ
②核となる欲求…他者とつながること
③目指すゴール…人と一体となること

8、恋人(Lover)
他:情熱家、ロマンチスト、快楽主義者など
例:ハーゲンダッツ、午後の紅茶、アルファロメオなど
①モットー…「親密」 あなただけを見つめている
②核となる欲求…より親密に、より感性的な喜びを味わうこと
③目指すゴール…愛につつまれた人や仕事や経験を味わうこと

9、道化師(Jester)
他:エンターテイナー、挑発者、変身する人など
例:ファンタ、エム&エム、トイザらスなど
①モットー…「楽しさ」 わたしもあなたも自由であること
②核となる欲求…楽園を経験する
③目指すゴール…幸せであること

10、援助者(Caregiver)
他:天使、保護者、ヒーラーなど
例:ボディショップ、ピジョン、植物物語など
①モットー…「奉仕する」 隣人を愛せよ
②核となる欲求…困難から人々を保護すること
③目指すゴール…人をたすけること

11、創造者(Creater)
他:アーティスト、アントレプレナー、ビジョナリーなど
例:レゴ、テスラ、アーティストなど
①モットー…「イノベーション」 想像できることは創造できる
②核となる欲求…永遠に価値あることを創造すること
③目指すゴール…ビジョンを形にすること

12、統治者(Ruler)
他:権威者、裁判官、主権者など
例:マクロソフト、メルセデスベンツなど
①モットー…「支配、管理」 権力はただ一つ
②核となる欲求…支配、管理
③目指すゴール…しっかり秩序づけられて成功している、家族、会社、共同体


面白いですよね。
あなたの会社や商品からイメージされるアーキタイプは何でしょうか?

組織一体化でアーキタイプはとても有効

さてこのアーキタイプですが、組織のメンバーの意識をひとつにするためにとても有効なのです。

アーキタイプを人格的なキャラクター化することで、そのイメージが誰にでもわかりやすくなります。

「わたしの会社は、顧客満足を第一にします」

よりも、

「わたしの会社は、道化師のように顧客を楽しませることを第一にします。」

と共有した方がわかります。その「言わんとするイメージ」がつかみやすいですよね。

自分たちは何を目指し、どんな価値観を大切にし、自分たちがどのように振る舞えばよいのか、すんなりとイメージできます。

また、あなたの会社や商品を求めているお客様とはすなわち、その深い価値観や心のつながりを求めているお客様のことです・

同じ目的や価値観を共有したいお客様におって、アーキタイプのイメージによって心の深いところでつながることができるので、「なぜだかわからないけどあなたの会社が好き。強く支持する」

となってくれるわけです。

わたしたちはよく

「スティーブ・ジョブズのようになりたい」
「松下幸之助のようになりたい」
「マザー・テレサのようになりたい」

など、共鳴・共感する人たちの「イメージ」を思い浮かべながら、自分の考え方や行動のやり方、ときには人生の道さえ決めていきますよね。

その「人格化されたイメージ」を思い出すだけで元気や勇気が湧いてくる。
そんな経験ももっているはずです。

会社によっては伝説的な創業者の顔をつねに思い浮かべて、日々の仕事に取り組んでいる会社もあります。

組織一体化を促進するために、会社、組織、チームが目指したい目的や価値観などを、一瞬でわかる「人格化されたイメージ」にして共有するのはとても有効です。

その「人格化されたイメージ」として、メンバーが考え、行動していくことによって、同じ気持ちと行動の方向性をもって、目的や価値観を叶えていくことができます。

あなたの会社なりに、「元型」となるキャラクターをつくりあげても大丈夫です。

ピアソンの12種類にこだわる必要はありませんし、12種類のいくつかを組み合わせても大丈夫ですが、その際は「わかりやすい」ことに注意してくださいね。

一瞬にしてそのキャラクターの目的や価値観がイメージできるくらい、輪郭がくっきりしているものにしましょう。

アーキタイプは、奥が深いのにキャラクター化されておもしろいため、わたしたち自身が興味をもって取り組めることがうれしい理論です。

社員やメンバーたちとも、アーキタイプの議論は楽しんでくれますので、ぜひまずは気軽に取り組んでみてくださいね。

もし今まで難しく「お固い」ものをもとにして、組織一体化をしようとして悩んでいたら、社員がわかりやすく取り組めてやる気になれる組織一体化ができてびっくりされることでしょう。

しかもわかりやすく深く、顧客やクライアントに、自分たちの目的や価値観を伝えられるものにもなるため、共感・共鳴をもった信頼関係を築くことができます。

最後に

いかにして、心の深いところでつながりながら一つになっていくのか。

複雑化し、流動化し、不安が大きくなっている現代は、この課題には使命感をもって取り組まなければならなくなっています。

「集合的無意識」としてアーキタイプ(元型)は、人類として積み重なってきたものであり、現代という一瞬だけにふりまわされない「普遍的なもの」があります。

本当に目指したいものは何か。
本当に大切にしたものは何か。
わたしたちが、今こうやって生き、経営や仕事をしているのは、いったいこの短い人生でどんな普遍的なものを表現使用しているからなのか。

そんなことも思い返してみると、アーキタイプはただわかりやすいだけでなく、わたしたちにとっての明確な指針ともなってくれます。

あなたの会社にいまこの社員たちいるのは、そこに集まったもの同士、なんらかの共通のアーキタイプがはたらいているから。

あなたたちが、今ここで集(つど)っている意味とは何か。

そこから浮かんでくるイメージこそが、あなたの会社のアーキタイプであり、あなたの会社が本当に目指すことなのかもしれません。

執筆者紹介

オフィスオントロジー
代表 友成治由

人と組織の可能性と創造性を引き出すメンター
人と会社を伸ばすメンタリングの専門家

10年超にわたる起業家育成や変革人財育成経験から得た実践知と、意欲心理学によるチェンジメンタリングで人が本来持っている意欲、可能性、価値を引き出す。
主体性/リーダーシップ開発、メンター育成、メンター制度構築、チーム活性化などを支援。

哲学存在論専攻。
宮崎県出身。今もなまりはとれない。

経営メディア『経営プロ』にて執筆コラム掲載。
コラム「メンタリングで人や組織の可能性を引き出す」など

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