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コミュニケーション

コミュニケーションスキルに頼らない風土改革の方法

「コミュニケーションスキルは優先順位が下がる」

コミュニケーションに関するテーマは研修やセミナーでも大人気です。わたしも大好きですし、またわたしも登壇することもよくあります。

とはいえ、組織活性や人材育成場面においては「コミュニケーションスキル」から入るのは、なかなかしんどい。少なくとも経営者が考えるのは、先に別にあるのではないか? というのが今回の結論です。

どういうことでしょうか?

目次

コミュニケーションスキルがなぜ学ばれるのか?

社員がイキイキして協力して働き、自ら学び、成長し続けてくれることは、社員を抱える経営者の理想ではないでしょうか。そのために、経営者から社員へ、上司から部下へ、社員同士で、という形で、さまざま場面でのコミュニケーションスキルが学ばれています。ひとつひとつは納得したり役に立ったりすることも多い。

コミュニケーションそのものは、それがうまくいくことによって、メンバー間の意思疎通がスムーズになり、仕事とも生産的になります。ストレスも減り、心地よくもなります。
中でもコミュニケーションのスキルは、それを身に付け向上させることで、相手に対して上手により上手に働きかけることができるようになります。

目の前に具体的な出会う相手がいて、そんな相手との一対一の関係に悩まれていたり、それをよくすることで相手からの好反応を得たい人にとってはぜひとも学びたいスキルのひとつでしょう。

少し話を大きくすれば、現代ではあらゆることが細分化され、専門スキル化されており、そのスキルの習得が人生を切り開く武器となっています。そういった意味では、人間関係もスキルによって何とかコントロールできるものにしなければならないという、現代状況をよく現しているのかもしれません。

コミュニケーションスキルの負の側面

あらゆるスキルの本質は、「コントロール」です。
対象に働きかけて、自分の思うようにしたい、という意識が根底にあります。

コミュニケーションスキルであっても同様です。目の前の相手を、自分のスキルによって、自分の思う反応を出してくれるようにしたい、ことが根底にあります。そこには、「相手を操作したい」という欲求が隠れています。コミュニケーションスキルの原理は、心理学に基づくものが多く、心理操作術のように悪用する人さえ出てきます。
これを、「操作主義コミュニケーション」と呼びます。

もちろん90%以上の人は、そんなことは意識していないでしょう。目の前の人間関係をなんとか良くしたという純粋な動機があります。そして、それこそ重要であり、しっかりしたコミュニケーションスキルを学ぶならば、かならず講師自身や講師の教える「在り方」を確認することが必要です。わたしもかならず伝えているのですが、コミュニケーションスキルは、その負の側面を理解して本来の「善き力」を発揮させることが大切であり、スキル以前にある「在り方」次第で、天使にも悪魔にもなります。

コミュニケーションスキルはそういった意味で、あくまでも道具-ツールなのです。しかも、エクセルスキルや経理スキルなどとは異なり、人間に直接働きかけるものなので、影響が大きい。ツールという側面を忘れてしまうと、コミュニケーションスキルのもたらす表面的な効果だけにとらわれてしまい、理解が表層的になってしまいます。

それが行き過ぎると、「うすっぺらい」「中身がない」と感じ取られてしまいます。コミュニケーションスキルを学んでも、それほど効果が持続しないのは、スキルの根底にある「在り方」が薄いからだと言えます。

経営者が優先するコミュニケーションとは何か?

前に「少なくとも経営者が考えるのは、先に別にあるのではないか?」とお話しました。
会社全体ならば経営者ですし、より小さなチームであればチームリーダーや、その集まり良くしようとしている人だと思ってください。つまり、そのコミュニケーションの場全体を見渡してよくしていきたい人です。以下、経営者、と呼びます。

経営者は会社というコミュニケーションの場全体をつかさどるひとです。であるならば、コミュニケーションを「全体的」にとらえていくことがまず必要になります。

またそもそも、個人個人にコミュニケーションスキルが必要になるのは、その個人はそのスキルがないといい関係が結べないからなのです。生き抜く術なのですね。
会社という場において、ともに働く仲間がいるという場において、内輪で生き抜くための術を学ぶという発想そのものがそもそもおかしいのでは? と投げかけます。

コミュニケーションの場の本来の在り方を考えると、誰もが安心・安全であり、尊重し合いながら、みんなが全員がよくなるために自然とコミュニケーションしている、といったものではないでしょうか? そのような場であれば、傾聴や共感や、セミナーで学ぶようなスキルは自然とできるようになってきます。(自分のご飯のタネをなくすような話ですが…)

場が整えば、人間は自然に場にそった発想、思考、行動をするようになります。ひとつひとつの関係ではなく、全体としての「場」をいい雰囲気にしていくコミュニケーション。

これを「場(フィールド)型コミュニケーション」と呼びます。

日本人は日本人らしいふるまいを、両親や家族、友人知人、学校や地域、テレビなどの情報などから、自然自然と身に付けて、「日本人」となります。たとえ日本人同士の両親からうまれても、アメリがで育てられればアメリカ人らしくなります。会社でも同じで、会社という「場」がどうなっているか次第で、社員はそれにふさわしいふるまいを行なうようになっていくのです。

「場」を意識する重要性

場(フィールド)は、「コレさえやれば」というものはありません。メンバーの醸し出す雰囲気であったり、積み重なった習慣や文化であったり、複合的重層的に絡み合って感じ取られるものです。

だからこそ、「場(フィールド)型コミュニケーション」はとらえにくく、難しいと思われがちです。ただ、みんな一度は体験していることでもあり、それを思い出してみるとずいぶんやりやすくなります。

「この人がいる場はなんでも話せてしまう」ですとか、「このお店は居心地がいい」ですとか、「あそこに行くと元気になれる」などなど、これほど日常的なことも実はありません。

「場(フィールド)型コミュニケーション」とは、その日常の体験を、意識的にしていこうということなのです。

会社にとって、場(フィール)がまさに現れた状態を、「社風」や「組織文化」と呼びます。
なんとなく積み重なってできる、ではなく、「社風」や「組織文化」を意識的に築き上げていこうということですね。

それにより、「いるだけで社員が活性化しやすい場」「いるだけで自然と社員が自分で学ぼうとする場」「いるだけで自然と協力体制ができる場」を生み出すことができます。

「場(フィールド)」づくりのポイント

「場(フィールド)」づくりは、公式のようなものがあるわけではありません。
なぜならば、経営者を代表とした、メンバーの「在り方」がモロに現れるからです。

そのうえで落とし込むと、次のようなポイントなります。

-------------------------------------------------------------------
1、経営者自身の在り方を見直す
2、どんな「場(フィールド)」にしたいのかを意識的にする
3、その「場(フィールド)」に必要な、ふさわしい価値観や基準を決める
4、それらを意識的に共有する
-------------------------------------------------------------------

やはり会社は経営者の影響は大きいです。
厳しく感じられるかもしれませんが、経営者自身の在り方が、やはり会社の雰囲気となって現れてきます。「あの人はいるだけで安心感が違う」というような方が世の中にはいらっしゃいますが、会社でいえば経営者がその役割を果たすことになります。

経営者は、人間として成長するためのさまざまな学びをされている方々が多いのですが、影響力を自覚されて、場(フィールド)づくりも意識するとまた学びも深まるのではないでしょうか。もちろん、わたし自身も、これからも重ねてまいります。

その上での、2、3、4は、大きなところでは、経営理念の浸透です。重要性は周知のとおりですので、ここでは省きます。より日常的なこととして、一つ一つの会議や勉強会もそうしてほしいと思うのです。

たとえばわたしは研修講師を担当することもありますが、研修という数時間の場でも、「今日はこういう場にしていきましょう「そのために、これとこれを大切にしてくださいね。守ってくださいね。」といったような「グランドルール」を設けて行います。それで場がそのような雰囲気なれば、研修はとても実りの多いものになります。

日々の会議などでも、同じようなことをやっていただけたらとお勧めします。
目指す場の姿やそのために大切な共有価値観を共有化し、まずは自分自身がそれを率先することで、みんなにも促していく。何度かやっていくうちに、場づくりの、コツのようなものもつかめてくるでしょうから、それが普通になってくると、いつの間にか「社風」や「組織風土」として確かなものに変わっていきます。

まとめ~会社が楽しい、仕事が楽しい

最後に、上記、さらっと流しましたが、「自分自身がそれを率先すること」は必須、です。

先にも述べましたように経営者の姿で決まるのですから、まずは自分自身がそれを見せて―できれば楽しみながら―、社員もやりたくなるように「場(フィールド)になりきる」ことが大切です。

会社という「場(フィール)」自体が、もっと接したい、行きたいものになると、個人間で生き抜く術を負わせることなく、自然体でより前向きな仕事、能力開発にまい進してもらうことができます。何よりも、会社に行くことが楽しくなります。

経営者としては、「場(フィールド)づくり」を優先しながら、それをより促進するために「コミュニケーションスキル」で補強する、というのが適切な順番でしょう。

「うちの会社、いいんだよなあ。」

そんな社員のつぶやきが普通になる会社になることを、心から応援しています。

P.S.
これからもブログをお届けしますので
お忘れないようブックマークしてくださいね。

執筆者紹介

オフィスオントロジー
代表 友成治由

人と組織の可能性と創造性を引き出すメンター
人と会社を伸ばすメンタリングの専門家

10年超にわたる起業家育成や変革人財育成経験から得た実践知と、意欲心理学によるチェンジメンタリングで人が本来持っている意欲、可能性、価値を引き出す。
主体性/リーダーシップ開発、メンター育成、メンター制度構築、チーム活性化などを支援。

哲学存在論専攻。
宮崎県出身。今もなまりはとれない。

経営メディア『経営プロ』にて執筆コラム掲載。
コラム「メンタリングで人や組織の可能性を引き出す」など

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