和顔愛語。人と組織を激変させる仏教の教え
意識するだけで誰でもできますし、これほど強力な取り組みも、実は他にはないのかもしれません。
目次
和顔愛語とは
穏やかな笑顔で、思いやりのある言葉をかける。
組織活性化に取り組むならば、
「和顔愛語」からはじめるのが
もっとも効果が高いと断言します。
しかもいまからできますし、
難しくもない。
やらない手はありません。
和顔愛語は仏教の言葉。
曹洞宗の道元禅師は、こういっています。
「愛語、よく廻天の力あることを学すべきなり。」
廻天とは、情勢を一変させることや、衰えた勢いを盛り返すという意味です。
つまり、穏やかな笑顔で
思いやりのある愛ある言葉には
人や組織をがらりと変える力があるということなのですね。
経営コンサルタントから教わった結婚式スピーチ
記憶が定かではなく恐縮ですが、
ある経営コンサルタントの著書で書かれてあった
「結婚式のスピーチの方法」
は、うなずかされました。
あなたはもし友人知人お世話になった方などに
結婚式でのスピーチを頼まれたら
どんなことを話しますか?
世の中にはスピーチが上手で
お話が面白い人もたくさんいますので、
自分のスピーチが見落としたらと思うと…
何を話していいか悩んでしまいます。
その経営コンサルタントも
色々な場でお話する機会があるそうですが、
彼は結婚式のスピーチはこれだけでいいと
言っていました。
「新郎新婦、そのご両親に感謝の言葉を述べるだけでいい。」
これを聞いてわたしは、
スピーチの本質を教えてもらった気がしました。
結婚式スピーチを依頼されると、
自分を良く見せたり、
会場を沸かせたり、
そんなことを考えてあれこれ言葉をいじります。
しかし、結婚式で伝えるのは2つだけだというのです。
おめでとう、そして、ありがとう。
ただひたすらに、
新郎新婦やそのご両親に愛ある言葉
―祝福と感謝―を
述べさえすれば、
あとは付けたしのようなもの。
新郎新婦、そのご両親も
それだけで心から喜んでくれると。
ひとに対して、
わたしたちが本来何を与えるべきかを
教えてもらいました。
思いやりの言葉ひとつで勇気は出てくる
和顔愛語の力は、
わたし自身、本当に強く感じています。
わたしはメンタルケアの活動で、
一対一でご家庭訪問をしたり、
市民相談会でお話を聞くことをやったりしていました。
対する方は、
さまざまな心の悩みを持たれている方です。
だれにも話すことができずにひとりで抱えられて、
何か突破口を見つけたいと話をしに来るわけです。
ごく一般論でいえば、一般通年では、
悩みを相談されたり、
元気がなさそうな人を見かけたら、
「こうしたほうがいいよ、こうすべきだよ」
と、うまくいく方法をアドバイスしたり、
「ここが悪いから、ここを直したらうまくいくよ」
と欠点を指摘して正常に戻そうとします。
新聞やラジオの人生相談でもよくありますよね。
しかし、わたしの一対一で対面で
対話してきた経験からいえば、
アドバイスや欠点の指摘は、
まずうまくいきません。
やるならば深い信頼関係ができてから行う
最後にとる手段であり、
それが無い中でのアドバイスや欠点の指摘は
相手の自己肯定感を下げる要因でしかありません。
深い悩みを抱えられたり、
元気がなさそうな人がいたら、
とにもかくにも、
話をそのまま受け止めて、
ほっとする思いやりの言葉をかけてあげることです。
「大変でしたね」
「大丈夫ですよ」
「頑張ろうとされているんですね」
そのような、
相手の心を軽くするような言葉ひとつで
相手の方が涙し、
それだけで前を向いて自分で進んでいく場面を
何度も見てきました。
わたしは企業の経営者や社員と
研修やコンサルティングでよく接しています。
わたしが呼ばれるときは、
その企業に問題や課題があるときであり、
たいていは緊張しています。
中には、頑張ってこられただけに、
わたしのような外部の人間の一言で
気持ちが落ち込んであきらめる人だっています。
そんなときだからこそ
穏やかな笑顔で、
思いやりの言葉かけることを心がけています。
それにより、抱えていた緊張やこわばりが溶けて、
「そうだ大丈夫だ。前に進もう。」
という勇気が湧いてくるからです。
和顔愛語は100万倍の価値
「勇気を与えることは100万倍の価値がある」
自分のポリシーのひとつにもしています。
ではその勇気を
どうやって相手に与えることができるか。
それが「和顔愛語」です。
穏やかな笑顔で、愛のある言葉をかける。
自分の示す顔で相手の不安を取り除き、
かける言葉で一歩前へ進む気持ちを与える。
どんなにすばらしいツールや方法があったとしても、
それを実施するのは人間です。
「よし、踏み出してみよう」
という勇気が湧いてくるだけで、
人間はどんな困難も、
自分自身で乗り越えられるようになります。
まさに。
「愛語よく、廻天の力がある」
わけです。
組織活性化も、
ひもといてみれば、ひとりひとり、ですよね。
ひとりひとりの「ひと」たちが、
イキイキとして、前向きな明るい気持ちで
それぞれの仕事を楽しんでいる状態。
ならば、お互いが、
穏やかな笑顔で、思いやりのある言葉をかけあえば、
活性化しないはずがありません。
理念やビジョンや、
そんなヤヤコシイトピックも
教えておきながら言うのもなんですが、
組織活性化は、本来、むずかしくありません。
「和顔愛語」を、
社員みんなで意識してやりあうだけでいいのです。
まとめ~迷ったら「和減愛語」
会社にいくと
いつも笑顔で仕事している上司や同僚がいる。
いつも励ましいつも支える言葉をかけあっている。
だから仕事も協力しあってどんどん進むし、
自分自身も一歩二歩でも成長しようと学ぼうと思う。
「おはよう、今日も元気だね」
「それ、いいね!」
「君ならできるよ」
「大丈夫だよ、僕らがついているよ」
「よし、またチャレンジすればいいよ」
などなど
もし、やることに迷ったら
「和顔愛語」からはじめましょう。
あなたの会社も、
どんどん廻天を呼び起こしましょう!
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執筆者紹介
オフィスオントロジー
代表 友成治由
人と組織の可能性と創造性を引き出すメンター
人と会社を伸ばすメンタリングの専門家
10年超にわたる起業家育成や変革人財育成経験から得た実践知と、意欲心理学によるメンターメンタリングで人が本来持っている意欲、可能性、価値を引き出す。
主体性/リーダーシップ開発、メンター育成、メンター制度構築、チーム活性化などを支援。
哲学存在論専攻。
宮崎県出身。今もなまりはとれない。
経営メディア『経営プロ』にて執筆コラム掲載。
コラム「メンタリングで人や組織の可能性を引き出す」など
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