心身一如。「体」から整える組織活性化法
人間は仕組み上、いわゆる理性的な意識や論理思考だけでは、「鈍る」ようにできているのです。
「体感覚」というキーワードを思い出すと、自分自身や社員の毎日の活性化になりますし、組織活性化のための面白くも効果あるヒントがいろいろと見つかってきます。
目次
- ○ 脳は脳だけでは動かない
- ○ センサーが高精度だと、処理結果も高精度
- ○ 体感覚が教えてくれる広い世界
- ○ 体感覚が活性化すると脳も活性化する
- ○ 組織活性化には体感覚の活性化を
- ○ まとめ~わたしたちは「全体」で生きている
- ・執筆者紹介
脳は脳だけでは動かない
わたしは脳の視点からお話する機会がよくありますが、その場合にわたしが想定している脳は、いわゆる頭蓋骨にはいっている脳だけを念頭に置いているわけではありません。
脳神経学の視点でいえば、脳とはいわゆる頭脳だけを指すのではないからです。
いわれてみれば納得ですが、あらためて気づかされたときには「自分を活性化させる」という点でブレークスルーが起こりました。
どういうことかといえば、「脳は大きな神経網の一部」だという事実です。
脳は脊髄神経につながっており、「脳+脊髄神経」で中枢神経と呼ばれています、
そして、脊髄神経から手足体の隅々にまで、いわゆる神経網である末梢神経がネットワークとして網の目のように張り巡らされています。
人間の大人の欠陥をすべてつなぎ合わせると、地球二周半分10万㎞になると言いますから、末梢神経網も同等かそれ以上の距離で全身に張り巡らされているでしょう。
(ちなみに、中枢神経である脳の神経細胞を全部つなぎ合わせると約100万㎞です。末梢神経は10万㎞では少なすぎるかもしれませんね)
脳はたしかに重要な臓器ですが、単体で機能するわけではありません。
全身の末梢神経がセンサーとなって外界の情報をつねに受信することで、その情報をもらうことではじめて脳で処理することができるのです。
パソコンでいえば脳は優秀なCPUですが、CPUだけでは動きませんよね。
キーボードやマウスから情報を入力することで、その情報に基づいて演算するわけです。
つまり、「脳は大きな神経網の一部」として、全身のネットワークとともに働くからこそ、その真価を発揮しているというわけです。
センサーが高精度だと、処理結果も高精度
なぜここまで脳の話をしているのでしょう。
それは末梢神経、つまり外部情報のセンサーが高精度であれば、高精度の情報が中枢に送信されるため、中枢である脳の処理結果も「冴えた」ものになるからです。
逆に言えば、センサーがピンボケしていれば、脳の処理結果もピンボケしてしまいます。
脳をフルに最高精度で働かせようと思ったら、センサーである末梢神経を活性化させておく必要があるということなのです。
末梢神経はどこに張り巡らされているか。
そう、手や足や、全身の皮膚や、内臓。
つまり「体全体」に張り巡らされています。
体とはわたしたちと外界の境界線であり、外界の情報を真っ先につかみとるセンサー。
そして、体内部の様子を時々刻々とモニタリングする、内部情報をまっさきにつかみとるセンサーでもあるのです。
わたしたちというのは、脳で処理するより前に、実は「体がわかっている」んですね。
わたしたちは「体の感覚」にもっと繊細になることで、実は外界や自分自身について、脳の一部で理性的・論理的に理解するよりも、もっと高精度の情報をつかみとることができるのです。
体感覚が教えてくれる広い世界
体感覚に敏感になり、体感覚からくる言葉にならない情報を大切にすること。
ふだんオフィスやパソコンやスマホの前で過ごす時間が多くなり、理性や論理や脳のごく一部だけを信仰している現代のわたしたちにとって、体感覚を大切にすることは非常に大切になってきています。
体感覚は、論理的に説明する前の感覚なので、たとえば「ぞわっとする」や「なんとなく嫌だ」や「うまくいきそうな気がする」などあいまいな表現になってしまいます。
でもその感覚は、最前線の現場にいる体が教えてくれる情報であり、広い目で見るとおおよそ正しい方向性を教えてくれます。
「この取引は一見メリットがあるんだけど、なんか危ない気がする」
「リスクは確かにあるんだけど、なんかいけそうな気がする」
「戦略はしっかりしてるけど、どうも今の経営の方向性は間違っている気がする」
のように、理性的判断を尽くしても、どうしても「もぞもぞ」する感覚があったら、それは体が全身で教えてくれているといっていいでしょう。
その場合は、その感覚に従った方が間違いありません。
将棋の羽生善治さんや、東京大学大学院工学研究科の藤田誠教授なども「直感の7割は正しい」と述べていますが、直感こそ、理性的に処理される以前の、体感覚そのもの。
いわゆる理性というのは、世界を「理性」という視点で切り取った限定的な見方です。
しかし世界というものは、本来もっと広く深いものです。
人間の眼で察知し、脳で認識できる可視光の範囲は限られていますが、認識はできなくても見えない光はわたしたちにつねに降り注いでいるわけです。
脳の意識にはのぼらなくても、そんな意識できない世界にも体はつねに触れてます。
わたしたちは、体感覚にもっと繊細になることで、これまで切り捨てていたさまざまな可能性に気づくことができるのです。
体感覚が活性化すると脳も活性化する
繰り返しになりますが、体はセンサーです。
だから体感覚が繊細になり高精度になればなるほど、脳への情報も繊細で高精度になります。それにより脳が本来持っている能力をフルパワーで活用できるようになります。
体感覚が活性化すると、いつのまにか創造性が高まり、発想力も高まり、意欲も出るようになります。注意深く意識すると、脳がフル回転していることがわかるでしょう。
このことは身近でもよく感じるはずです。
机の上でうんうん唸っているときは何にもアイデアがでなかったのに、ちょっと外に出て軽く散歩していると、とたんにアイデアや解決策がわき出てくる。
ビル街では気持ちが落ち込みがちだが、自然にふれて森林浴やハイキングなどをすると、心が元気になり、頭もさえてくる。
共通しているのは、「体」でそれらを体験しているということです。
体を動かしたり、体に自然など気持ちいいものに触れさせたりすると、体感額がよみがえり、活性化してくるのですね。それにあわせて、脳が本来もっている能力、想像力や創造力、論理思考力、意欲などもフル回転で活性化していくというわけです。
参考までに。
わたしは数年前幼児教室の取締役をつとめていましたが、幼児教育の世界では、「頭を良くするには、体を動かす」ことは、もう常識です。幼児教育を重視している機関は、かならずといっていいほど、「体を動かす」カリキュラムがあることに気づくはずです。
組織活性化には体感覚の活性化を
ここからいえるのは、あなた自身もそうですし、社員も活性化させたいのであれば、「体」をより重視していく取り組みが大切だという視点です。
これまでの組織活性化は、理性的な言語的なものに偏りがちでした。
たとえば、理念を考える・深掘りする、仕事の意味や目的を考える、指示・指導体系をはっきりさせるなどが代表的でしょう。
もちろん理性的な言語的な取り組みの重要性はこれからも変わりません。
ただし偏り過ぎると、脳の一部しかはたらかないことになり、全体としての活気は失われていくのです。
「体」を意識するとできることが増えてきます。
・仕事中でもできる範囲でぶらぶら外への散歩を許す
・社内でスポーツやハイキングする、温泉に行く、できるようにする
・社内に緑を増やしたり「五感」が活性化するものを取り入れる
・席替え、フリースペースなど、変化をつける
・マインドフルネスや瞑想など「体感覚に気づく」取り組みをする
・ぼーっとすることを奨励する(脳の働きをいったん休めさせる)
・あえて、直感で選択する機会を増やす
これらは単純な取り組みかもしれませんが、難しい講釈をしなくても、これだけでも創造力や思考力や意欲が高まり、組織活性化することがよくあるのです。
ひとつだけご注意いただきたいのは、「運動する」が目的ではないこと。
ポイントは「体の感覚を味わう」です。
体の隅々にまで感覚がめぐっていることを感じることが大事であって、だからこそ「外で会議をしてみる」や「ぼーっとする」などもあるわけです。
眠っていた「体の隅々の感覚」をよみがえらせるというイメージで考えてみてくださいね。
まとめ~わたしたちは「全体」で生きている
わたしたちは、脳も体もあわせて「全体でひとつ」なのですね。
本来切っても切り離せないわけです。
現代のわたしたちは、ちょっと脳に偏りがちなのかもしれません。
偏った針をもうすこし体側にも傾けていくことは、やっぱり健全ではないでしょうか?
個人的には、よく散歩をします。
とくにできるだけ緑の多い道、できるだけ人がすくないゆったりした道。
そのときには、できる限り「体全体」で風を感じ、匂いや光を感じ、ふだん気にしないところに目を向けながら、いろんな感覚を味わうつもりで歩いています。
散歩は気持ちいいですからね~
気持ちいいと、もう何でもかんでも活性化しますよね。
あなたやあなたの社員たちも、全身が弾むような、そんなイキイキとした毎日を過ごせるよう。今日のブログがヒントになればうれしいです。
P.S
これからもブログをお届けしますので
お忘れないようブックマークしてくださいね。
こちらも役に立ちます(「迷い打破。臨床心理学的問題解決法「フォーカシング」」)
こちらも役に立ちます(「一言で社員のやる気を変えられるリーダーの言葉術とその秘訣とは」)
執筆者紹介
オフィスオントロジー
代表 友成治由
人と組織の可能性と創造性を引き出すメンター
人と会社を伸ばすメンタリングの専門家
10年超にわたる起業家育成や変革人財育成経験から得た実践知と、意欲心理学によるメンターメンタリングで人が本来持っている意欲、可能性、価値を引き出す。
主体性/リーダーシップ開発、メンター育成、メンター制度構築、チーム活性化などを支援。
哲学存在論専攻。
宮崎県出身。今もなまりはとれない。
経営メディア『経営プロ』にて執筆コラム掲載。
コラム「メンタリングで人や組織の可能性を引き出す」など
シェアする