ビル・ゲイツ絶賛。自分の伸び方/社員の伸ばし方のバイブル
どうしたら自分は、人は伸びるのか。
どうしたら自分は、人は変わるのか。
わたしたちにとって深くつきまとう問題ですよね。
何人もの人が、夢や目標をあきらめていることでしょう。
どれだけの会社やリーダーが、社員や部下の「デキの悪さ」に悩んでいるでしょう。
能力や人間関係性をぐんぐん伸ばし、夢や目標を叶えていく人と、途中であきらめ挫折していくがいる。いや挫折するだけならまだしも、世間に呪い背をそむけた生き方になる人にさえなる。
その違いはいったいなんなのでしょうか?
目次
- ○ 「やればできる!」の研究
- ○ 二つのマインドセット
- ○ 成功と失敗
- ○ 社員や部下を育てるにはどうしたらいいのか?
- ○ さいごに
- ・執筆者紹介
「やればできる!」の研究
自分に「何があれば」、もっと伸びることができるのか。
夢や目標を叶えられるのか。
わたし自身にとっても、いつも大きな問題です。本当にそうなりたい。
かつ、わたしは人財育成の講師やメンターとしてリーダーや社員たちにそうなってもらいたいと、いつも頭を悩ませています。
きっとあなたも、会社で組織で、いつもどこかに頭にあるのではないのでしょうか。
何か大きな、シンプルな指針がほしい。
そう願っていたときに出会ったのがこの本です。
人の伸び方伸ばし方の決定的要素を学べるバイブルといっていいでしょう。
『「やればできる!」の研究~能力を開花させるマインドセットの力』キャロル・S・ドゥエック著。
ビル・ゲイツが絶賛し愛読書のひとつにしているこの本は、タイトルの通り、「マインドセット」がいかに人間の人生、生活に影響を及ぼしているかを、とてもわかりやすく教えてくれます。
キャロルは言っています。
「自分についてのある単純な信念―われわれの研究で発見された信念―が人生をどれほど大きく左右しているかがおわかりになるだろう。(中略)あなたがもし可能性を発揮できずにいたとしたら、その原因の多くはこの“マインドセット”にあると言っていい。」
“マインドセット”。この言葉は一度は聞いたことがあるでしょう。心の中で持っている信念や考え方、ですね。
よく「思考は現実化する」と言いますが、その意味をいわゆる不思議な世界の話ではなく、日常のひとつひとの生活や仕事、行動に役立つものとしてとらえると、まさにこの本は
「“マインドセット”は現実化する」
と伝えています。
ではどんな“マインドセット”を持てば、わたしたちの可能性はもっと発揮できるのか。
そして、社員や部下が可能性を発揮できる人になるのか。
それを見ていきましょう。
※ちなみに、下記のリンクで紹介しているのは新版です。出てたんですね。
わたしの持っている本は旧版ですので、それをもとに本記事はお話しています。
二つのマインドセット
いま、あなたはどんなマインドセットをもっているのか。
ちょっとチェックしてみましょう。
下記よりあなたの考えに近い番号を選んでください。
①知能は人間の土台をなす。それは生まれで決まっており変えることはできない
②新しいことを学ぶことはできても、知能そのものを変えることはできない
③知能は、現在のレベルはどうであれ、かなり伸ばすことができる
④知能は、伸ばそうと思えば、相当伸ばすことができる。
もうひとついきましょう。
①どんな人間かはすでに決まっている。それを根本的に変える方法はほとんどない
②現在どんな人間でも、変えようと思えばかなり変えることができる
③ものごとのやり方は変えられても、人間の根幹部分は変えられない
④どんな人間かという基本特性は、変えようと思えば変えることができる
まず最初のチェック結果です。
①②を選んでいたら、いま「こちこちマインドセット」の可能性大では?
③④を選んだあなたは、「しなやかマインドセット」です。
ふたつめのチェック。
①③を選んだあなたは、「こちこちマインドセット」。
②④を選んだあなたは、「しなやかマインドセット」。
これらはこの本によるチェックを一部改題しているものですが、もうお気づきのように、両者の違い、それは
「変えられない」と信じているか、「変えられる」と信じているか
この違いになります。
わたしたちの人生を大きく左右するマインドセット。
それはシンプル、かつ決定的に二つに分けることできます。
ひとつは、「こちこちマインドセット」
自分の能力は石板に刻まれたように固定的で変わらないと信じているもので、もちろん他人も同じように固定的で変わらないと信じている人です。
能力や資質が変わらないものだとしたら、周りに認められるためには、とにかく自分がいまもっているものが優秀であると示さなければならない。だから、自分の有能さを示すこと、評価を得ることばかりに心を奪われて、自分をガードし、人間関係も心から信頼をできない付き合い方になってしまいます。
キャロルは、もうちょっとだけキツイ言い方も紹介しています。
「しくじらずにうまくできるだろうか、賢そうに見えるだろうか、バカと思われやしないか、認めてもらえるだろうか、突っぱねられやしないか、勝ち組でいられるだろうか、負け犬になりはしないか、といつもびくびくしている。」
ところが、それとは真逆のマインドセットを持つ人がいます。
たとえ、今の自分は能力も劣る、手札もないとしても、ならばこれから身に着ければいい、これから手札を強くしていけばいい、変えていけばいいと思える人たちです。
ふたつめのマインドセット、それは、「しなやかマインドセット」。
その根底にあるのは、人間の基本的資質は努力次第で伸ばすことができるのだ、という信念です。
もちろん人は一人一人、才能や適性や気質は異なるでしょうが、努力と経験を重ねることで、だれでもみな大きく伸びていけるという信念です。
より短く言えば、「人は磨けば光る」というマインドセットですね。
「しなやかマインドセット」の人は、たとえ今はうまくいかない状態、状況でも、他人からの評価を気にするではなく、自分を向上させることに関心を向けます。
「うまくいかないときにlこそ、粘り強くがんばるのが「しなやかマインドセット」の特徴だ。」
キャロルはそう伝え、
「人生の試練を乗り超える力を与えてくれるのは、このマインドセットである」
と教えてくれます。
成功と失敗
「こちこちマインドセット」と「しなやかマインドセット」。
この違いを知ったここまでで、正直、この本の8割は制覇したも同然です。
この二つのマインドセット。
自分はどちらをもつと決めるか。
それだけで、仕事や人生への取り組み、そして最終的な成果はまるで変わってくるでしょう。
「こちこちマインドセット」、能力を固定的に考える世界は、つまづいたらもう終わりです。
持って生まれた才能だけがすべてで、努力しても無駄だ。だから目先の結果、結果、結果だけをもとめてしまいます。
「こちこちマインドセット」の人の成功の定義は、「結果」です。
それがたまたまうまくいっているときはいいですが、すこしでも結果が悪くなると、それだけで自分を否定しまうのですね。
努力をしてもし結果がでなかったらかっこ悪い、自分のプライドが傷つく。だから努力を避け、これまでもっていたものにしがみつくようになります。
自分だけならまだしも、他人に対してもそうですから、社員や部下の今の結果しか見ることができず、社員や部下のモチベーションを壊し、結果チームを壊してしまいます。
もちろん自分がチームを壊していることに気づかないので、出てくる言葉は「あいつらが悪い」という、他責思考になるわけですね。
ちょっと厳しめに申し上げましたが、これは自分自身への言葉としても記しています。
それくらい、人間はともすると「こちこちマインドセット」になりやすいものと、わたし自身実感しているからなのですね。
でも、「しなやかマインドセット」を持つと、世界が変わってくるのですね。
能力は伸ばせると考える世界では、失敗とは結果が出ないことではありません。
「成長できなければ」失敗なのです。
本来自分が大切だと思うことを追求しないこと。
自分の可能性を十分に発揮できないこと。
こういったことに、失敗を感じるのですね。
もちろん「しなやかマインドセット」でも、結果がでなかったら落ち込みますし、情けなさも感じます。
しかし、それは人間としての自然な感情がわき出ただけで、「失敗」ではありません。
結果が出なかった。ならば次はどうすればできるだろう、何を学べば、何を身に着けていけばいいのだろう。そう考え、行動に移していけるのが「しなやかマインドセット」なのです。
「しなやかマインドセット」の世界では、努力やがんばることは、うれしいこと。人を賢くしたり、有能にしたりしてくれます。
「しなやかマインドセット」の人の成功の定義とは「成長」なのですね。
挑戦すること、問題に立ち向かうこと、学習すること。
こういったことへ取り組めること自体が、成功そのものなのです。
人間関係でいえば、自分を変に賢く強くみせる必要もないし、部下に対しても部下の今だけをみて、こいつだダメだ、できないヤツだと思う必要もない。
自分も部下もいまがダメだったら、一緒に、学び、チャレンジし、成長していけばいいだけの話。
「しなやかマインドセット」、人は変わることができる、という信念は、わたしの思うに「未来を信じる信念」とイコールであると感じます。
社員や部下を育てるにはどうしたらいいのか?
そうはいっても、自分ではなく社員や部下を「しなやかマインドセット」にしていくにはどうすればいいのでしょうか。
この本はそれにも大きな指針を与えてくれます。
本の事例ではこども事例も紹介していますが、わたしの経験上、社会人でも「まったく同じ」ですので、本の内容を会社の場面として想定して、以下にお話ししますね。
昨今、社員を育てるには「ほめること」が大切だとよく言われます。
たとえば、以下のほめ言葉を聞いてどのように感じますか?
「こんなに高い売り上げをあげられて、君は優秀だ」
「君は効率的に成果をあげられて、頭がいいなあ」
「売り上げをクリアしたか、さすがわたしの見込んだやつだ」
よく職場でありそうなほめ言葉ですよね。
こう言われた社員は、モチベーションが上がって、もっと頑張りそうな気がします。
しかし、こういうたぐいのほめ言葉は実はキケンなのです。
社員たちは、こういったほめ言葉からは言外に次のようなメッセージを受け取っているからです。
・売上が低かったら、ダメなやつと思われるんだ・・・
・泥臭いことはしないほうがいい、頭の悪い奴と思われる・・・
・クリアしなかったらわたしは、見捨てられるんだ・・・
もちろん、このようなほめ言葉を受け取った瞬間はうれしさは感じます。
しかしそれは一瞬のことであり、「自分は結果でのみ図られている」という、という「成功=結果」という「こちこちマインドセット」になってしまうのですね。
だからほめられる程度に今できる範囲しかやらず、すぐには結果にならない可能性のある新しいこと、新しい学びにチャレンジしようとはしません。失敗が怖くなり、そこそこの現状維持に走ってしまいます。
でもそれでは、中期的にみて能力が伸びず成果も落ちていくことは目に見えますから、実際に落ちていく場面に遭遇すると、挫折し、嫌気も差し、会社や上司から気持ちが離れていくという事態になってしまいます。
では、社員や部下が、どんどん伸びていくメッセージとはなんでしょうか。
それは
「努力と成長に注目したメッセージ」
です。
たとえば、
「君は、あきらめそうなところをよく努力して成し遂げたな。尊敬するよ。」
「そうか、そんな泥臭いことまでやってくれたのか、ありがとう。」
「売上目標クリアのために、ここまでやってくれたんだな。おかげで無事達成できたよ。」
結果ではなく、努力したということ、成長を目指したことに対してほめ言葉や称賛、感謝の言葉を送るのです。
それにより社員や部下は、「しなやかマインドセット」を持つことができます。
たとえ結果に今はならなかったとしても、その努力の過程をしっかり見てくれていることは、チャレンジや学びへのモチベーションになり、中期的に格段の伸びを果たすことになります。
「しなやかマインドセット」をもったリーダーや上司は、「人は変われる」と信じています。
だから、つねに「どうやったらこの部下は伸びるのか」「どうしたらもっとモチベーションを高くして挙げられるのか」と、部下の成長や変化を自分事としてとらえることができます。
だからただ部下に投げっぱなしではなく、部下へのコミュニケーションや指導法なども、改善を続けます。
「部下は変われる」と信じ、そのために「自分も成長し続ける」。
なお、今の部下ができなかったとしたら部下に対する基準を、よかれとおもって、かなり低くしてしまうことがよくあります。
もちろん基準を低くするとその部下はクリアすることはできるでしょうが、それで自己肯定感などが上がるわけではありません。この部下はどうせ変わらない、できないから基準を低くした。そういったことが伝わるからです。
基準は低くする必要はなく、むしろ高くしても大丈夫。
今ではなく、本来の未来の君たちはこれくらいの可能性は十分にあるのだから。
一方それに至る、実行ステップはわかりやすくやりやすく、細かくしていけばいいわけです。
もちろん、どうしたら高い基準に至る実行ステップを作ることができるかが、リーダーや上司の腕の見せ所であり、「しなやかマインドセット」でチャレンジし続ける箇所になります。
実際に、生徒の学力を劇的上げた優れた教師の例が複数乗っていますが、共通していることは
「高い基準と温かい雰囲気」そして、教師自身が「しっかり導くこと」でした。
上もしたも、お互いが高い基準で、学びと成長のプロセスを共有することで、「しなやかマインドセット」チームは”劇的“に伸び、成果としても成長を遂げていくのですね。
さいごに
キャロルも述べているように、マインドセットを変えるのは、容易なことではありません。
変えようとした瞬間に、「こちこちマインドセット」でこれまで自分が隠し持っていた逃避感、挫折感、自己防御感などに気づくのは、本当に、本当につらいことです。
特にかつて夢や目標をもっていて、それに挫折した人ほど、きつくてたまらないでしょう。
わたし自身、大学に落ち、浪人しても落ち、就職活動もほぼ落ち、起業してからも挫折、借金、亀裂などの連続でしたから、それを認めるのは今でもつらいです。
ただ、それでも、それでも、起き上がろうとしてきたのは、歩み続けるよりも自分をあきらめる方が人生の失敗ではないか、そう感じているから。
いつかどこかで死ぬのならば、後悔はしたくはない。
結果はどうであれ、自分は精一杯生きた、とは言いたいなあという思いがあります。
もちろんそんな気持ちなれたのは(まだまだブレますが…)、たくさんの出会いがあったことが大きい。
そのうえで、この本はまさに自分が失敗してきた大きな原因「こちこちマインドセット」をずばりわかりやすく教えてくれているという点で、貴重なものです。
わかりやすい本ですので、ぜひ一度手にとってみてくださいね。
あなたもビル・ゲイツのようになれる!
かもしれませんよ(^^)
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執筆者紹介
オフィスオントロジー
代表 友成治由
人と組織の可能性と創造性を引き出すメンター
人と会社を伸ばすメンタリングの専門家
10年超にわたる起業家育成や変革人財育成経験から得た実践知と、意欲心理学によるチェンジメンタリングで人が本来持っている意欲、可能性、価値を引き出す。
主体性/リーダーシップ開発、メンター育成、メンター制度構築、チーム活性化などを支援。
哲学存在論専攻。
宮崎県出身。今もなまりはとれない。
経営メディア『経営プロ』にて執筆コラム掲載。
コラム「メンタリングで人や組織の可能性を引き出す」など
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