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組織変革をいつも失敗させる“真の抵抗原因”

・「分からせているつもりだけど、なぜか変わらない。」

・「変化や変革をなぜか拒んでしまう社員の姿」

・「理念は掲げて、取り組みもしても、なぜか浸透しない。元に戻る。」

・「どんな改革・変革手法・ツールも、やる気も、その時限りで終わってしまう。」

やる気をもって会社を変えていきたい経営者が突き当たる壁は、やはり社員との問題ですよね。

変えるべきプロセスがわかったとしても、プロセスを担当する人が変わらないことで頓挫することは、会社だけではなく、地域でも政治でもよく見かけます。

今回は、変わらない原因を、マネジメント論やビジネス論ではなく、その土台にある心理学や意識哲学から考えます。社員も「人」である限り、この側面の理解こそが、突破口を開くカギになるからです。

目次

人間の問題解決への方向性を間違えない

人の問題は、物理的な問題とは違います。

たとえば、業務プロセスが非効率的だった場合、一般的には効率的で生産的な手法やツールや、制度を導入しようとします。昔は資料を複写するのにも感光紙を用意するなど大いに手間でしたが、今はコピー機でボタン一つです。手書きで定規あてて・・・という複雑な表の作成も、エクセルで一発です。

物理的な問題は技術やお金さえ何とかなれば、解決しやすい。
あたりまえのようですが、「人の問題」と比較すると驚くべきことです。
なぜなら、物理的なツールは、“抵抗”しないからです。

人は“抵抗”します。
物理的な問題解決手段があったとしても、それをすんなり採用したり使ったりするわけではありません。スキル的、金銭的理由だけでなく、感情的理由においても“抵抗”するのが人です。

物理ツールは、不便だったら取り替えても問題ありませんが、人の場合はなかなかそうはいきません。問題あるその人への対処次第で、他の社員たちにも波及するため、問題の質は物理の問題よりも大いに複雑です。

モノではない、制度や行動様式などの問題も同様です。それを実施するのは「人」なのですから、最終的には「人」こそが課題になってきます。

つまり経営者が考えなければならないのは、「物理的な問題解決法と、人間的な問題解決法は全く違う性質である」ということなのです。これを間違えて、実施する「人間を無視」した問題解決を強行しつづけると、会社はバラバラになってしまいます。

社員は「わかっていない」のか?

では、社員は、たとえば、さまざまな変革手法やツールの良さやメリットを「わかっていない」のでしょうか?

一見するとわかっていないから、意識も行動も変わらないように見えます。
そのため、何度も言ったり、強く言ったりして、なんとかわからせようとします。

もちろんそれが功を奏して、ハッと理解できて、すぐに変容する社員もいます。

しかし、大方の社員は、言われていることは実は理解していることがほとんどなのです。たとえば「顧客第一になろう」という理念があるとします。でも「顧客第一」が大切であることはだれでもわかっているものです。反対する理由の方が難しい。
しかし社員は、本音ではこう言っています。

「(わかってはいる。けど、…)」。

わたしは経営者だけでなく、社員と個別でセッションする機会もあり、本当によく感じるのですが、この「…」の部分を社員は、まず経営者には見せません。それにより経営陣と社員との間に意識のギャップが生まれ、バラバラになってしまう事態になります。

社員の多くはまじめで、充実した仕事をしたい人がほとんどと言っていいでしょう。たとえできないですとか、反抗する社員であっても、心の底ではいい仕事がしたいし、いい人間関係を築きたいと思っています。
だから悪意をもって抵抗しているのではないのです。

「わかってはいる。けど、変われない…。変わろうという気がおこらないんです…」

のです。

この「…」を理解することが重要です。
「わかっていない」で片づけてしまうと、見せないものが見えないままになってしまいます。
ときには社員自身も説明できない「…」。
本当は何を意味しているのか。ここに理解の目を向けることから、「人の問題解決」がはじまります。

人間は無意識の統一体として存在している

ここで少し心理学的、意識哲学的な話をします。

人間は、生まれてから亡くなるまでにさまざまな経験をし、知識を得て生きていきます。
その中では、「これが正しい」「このときはこうすべきだ」「こうすると危ない」そんなさまざまな基準や考え方を手に入れていきます。そんな基準や考え方(以下、観念と呼びますね)の網の目で「世界ってこういうことなんだ。生きるってこういうことなんだ。」とまとまったものを「メンタル・モデル」と呼びます。

もちろんそれは、絶対的で客観的な真理ではなく、あくまでも「その人にとっての世界への観念」です。史上世界最高の科学者でさえも、人間である限り絶対的で客観的なメンタル・モデルを持っていることはありません。

そんなメンタル・モデルのフィルターを通した見方で、わたしたちは毎日を生きているのですね。

このメンタル・モデルには特徴があります。
ひとつには、意識されていることはほんのわずかで、9割以上は意識されず自動的に働いているということ。「あの人は気が合わないからなんか避けてる」ですとか、「いつもこの道を通る」など、特別意識はしなくても、自然とやっている行動はありませんか? 意識されない部分でメンタル・モデルがわたしたちを自動的に動かしているのですね。

もうひとつの特徴は、統一体を保とうとする、ということ。わかりやすくいえば、自己保存の本能ですね。いままで持っているメンタル・モデルを、同じまま保ちたい本能です。なぜならば、わたしたちはメンタル・モデルによって世界を見て、行動しています。人間の本能的な部分で、メンタル・モデルが変わるとは、世界が変わるということと同じ意味であり、生命の安全性に危険を感じるのです。

よく高齢者は頑固。という風に揶揄されたりもしますが、彼らはこれまでの何十年築き上げてきたメンタル・モデルによってそこまでの年齢を生き延びてきたのです。だから彼らにとってはそれこそが「絶対的に正しかった」のであり、「生存できてきた根本要因」なのです。

そんな特徴をもつメンタル・モデルは、進化心理学の側面からいえば、わたしたちのエネルギーをロスすることなく生存させてくれるためにあります。メンタル・モデルがあるから、危険な行動や自分にとってしんどい状況など、わざわざエネルギーをつかって意識しなくても、自然と避けるようにできています。いつも陰で働く大切なパートナーであり門番のようなものですね。それは、ときには、変わるべきときに変わることも止めてしまうおせっかいさんでもあります。

抵抗している中身とは?

わたしたち人間は、アクセルと同時にブレーキを踏んでいる存在です。
メンタル・モデルは、外部環境の変化を感じて、統一体が壊れない限りさまざまな新しい観念を取り込んでいくのですが、同時に少しでも壊れそうになると抵抗を示します。

わたしは昭和52年うまれですが、わたしが子供のころの日本は、線路の草むらにはポイ捨てが多かった記憶があります。しかし、いつの間にか、日本社会はポイ捨ては罪悪感を感じるようになり、ごみ箱が無い場合は持って帰るのがあたりまえになってきました。外部環境の変化に応じて、メンタル・モデルは更新されていった例です。最近だったら、レジのごみ袋有料化などもそうでしょうか。まだまだ抵抗感を感じる人も大勢いるでしょうが、いつのまにかそれが当然のような意識になっていくのでしょう。

一方、日本人のお風呂好きはなかなか変わらないでしょう。水を節約することが大切だとはわかっている。だからと言って毎日お風呂に入っていたのを、3日にいっぺんにする日本人はほとんどいないのではないでしょうか。

メンタル・モデルには、自然に変わっていくものもあれば、いつまでも抵抗を示すものもあるというわけです。それは、自分自身への危険度と大いにかかわっています。

日常の仕事の場面でもでもいくらでもあります。
たとえば、

「社員全員でお客さまには元気よくあいさつをしよう」

という目標はとてもいいことですし、反対しようがありません。しかし、それまで内勤だけでパソコンだけに向かえばよかった社員からすれば、「元気よくあいさつ」自体が危険なのです。パソコンだけ見ればよかった日常を脅かされます。おとなしい自分というセルフイメージを脅かされます。だから適当に濁したあいさつでやりすごす、ということはよくある光景です。

会社の変革の場合、経営者は問題の全体像や緊急性が見えているだけに、ドラスティック(大胆で急激に)に、変革をしようとします。
一方、社員側からみれば、何もわからないままに、これまでの日常が壊されるわけです。自分が持っていた「会社で働くとはこういうことだ」という世界観。そんなメンタル・モデルが危機に陥る事態の発生です。抵抗するのがあたりまえといえるでしょう。

メンタル・モデルの抵抗に対処する4つの方法

それでは、会社の変革なんてできないじゃないか。
そう思われるかもしれません。

そんなメンタル・モデルに対処するには、大きく4つの方法があります。
ときに応じて使い分ける方がいいのですが、わたしの経験上は、3番目と4番目がオススメ。取り入れてほしい方法になります。

1、それでもドラスティックな変革をやる(ハードランディング方式)

まさに「千万人と雖も我往かん」ですね。
「こっちだ!」という方向へ向かって、覚悟して進むのです。

もちろん大きな抵抗はあるでしょう。
しかしそれでも、全体のためにそれが良いと決意したら、抵抗する人を絶つ覚悟でやり遂げます。決断とは、「決めて、絶つ」。絶つことこそが本質になります。

ときには「決-断」しなければならないときがあります。
返り血を浴びる覚悟で、道を切り開く。

実際、あなたの会社でいますぐそうなることを勧めるわけではありません。
ただ、この覚悟だけはつねにもっている経営者は、たしかに迫力が違います。

2、ゆっくり進める(ソフトランディング方式)

メンタル・モデルは自己保存の本能はありますが、先に見たように変わらないわけではありません。「急激に他人から変えられること」が苦痛なのです。

望ましい方向へ向けて、ある程度時間をかけながら進めることで、メンタル・モデルも抵抗を示すことなく、いつのまにか当たり前になっていきます。

小さな一歩を少しずつ少しずつ重ねていくのがよいでしょう。
いきなり「元気よくあいさつ」ができない社員にも、まずは「立って黙礼」、そして「口元は動かす」、「そして聞こえるくらいにはあいさつする」のように、少しずつ面談を重ねてステップアップしていくようなやり方です。

実際の組織変革の場面では、1、だけ、2、だけということはまずなく、1、と2、を社員や組織の状態を考慮して組み合わせながら進めていく形になります。

3、共感

この3、共感と、次の4、がお勧めです。
社員たちも、会社に対してひとつになっていく感覚を持ちながら、自分自身で変わっているという「自分ごと」としての意識をもって変わっていくからです。

共感とは、社員のメンタル・モデルから発せられる「…」に心を向け、受け止めることです。

いくら言っても仕事に身が入らない社員は、家庭でのトラブルが気になるからかもしれません。何度もミスしてしまう社員は、「教えてもらったけどわからなくて」が言えないだけかもしれません。社員たちが抵抗を示すときには、言葉に出ていない「(わかっている、けど…)」。この「…」に目を向けましょう。
「…」に共感して受け止めてくれた時、社員ははじめて、心を開いていきます。自分自身でいまの状況をなんとかしようと考え始めます。

共感をいつも念頭に置いておくと、目の前の現象に振り回されにくくなります。
いくら言っても仕事に身が入らない社員に、「最近、何かあったかい?」と親身になる余裕をもつことができます。それにより社員は信頼感を持つことができます。
何度もミスしてしまう社員に。「もしわからないことがあったら何度でもいいから遠慮なく聞いてほしい」と安心感を与えることができます。

そのたったひとつの「共感」を示すだけで、社員は信頼を寄せ、脅かされる危険性を感じることなく、「…」の部分を解消して本来の仕事ぶりになるのです。

共感は、ハードランディングでもソフトランディングでも、人間に接する限り「必須項目」です。人間は、自分のことをわかってくれる人や場所のために信頼を寄せるのです。

4、内省

4、は、経営者自身だけでなく社員たちにも内省の習慣を取り入れることです。
もちろん簡単なことではありません。ですが、内省が組織文化にまでなっていくと、どんな外部環境の変化への対応や変革でも、ハードランディングでもソフトランディングでも、全員が一丸となりやすくなります。
なぜならば、さまざまな変化をつねに「自分ごと」としてとらえることができるからです。

では、何を内省するのか。
それはメンタル・モデルに対してです。

自分自身のメンタル・モデルを、時間をとってあらためてじっくり掘り下げて認識していくのです。

「わたしたちは、仕事をどのようにとらえているのだろうか?」
「わたしたちは、なぜこの変化に抵抗を感じているのか?」
「この対応で、心がざわつくのはなぜだろうか?」

そのようなことを、時間をとって内省していくのです。
ときには一人で、ときにはグループになって。

メンタル・モデルは9割無意識であるため、意識して取り組まないと気づくことはありません。したがって、あえて時間をとってやっていきます。メンタル・モデルはわたしたちを自動的に動かしているものです。だから内省によって気づく機会がないと、メンタル・モデルによって引き起こされる同じような問題が、形を変えて何度も現れてしまいます。何が原因がいつまでもわからないまま、会社が低迷したり社員が離反したりする事態が起こるわけです。

主題的内省法

わたしたちは、「主題的内省法」というものを実施しています。
「表の目標」-やりたいことや目指したいこと、ビジョンや目標を掲げると同時に、「本音の目標」-自分たちの抵抗をすなおに見つめます。
抵抗の要因を探りながら、「いまわたしたちが取り組まなければならないテーマ=主題は何だろうか」という、メンタル・モデルや組織・行動の在り方全体のテーマを発見し、展開していく方法です。これを個人単位もやれば、チームや組織単位でも行うのです。

内省は、無意識領域のメンタル・モデルを浮かび上がらせ意識的なものにすることによって、みずから更新し、向上させていくためのものです。

「この問題はなぜ起きたのだろうか? その問題を起こしたメンタル・モデルはどんなことだろうか?」

そういった問いを重ねながら、言葉にならない・できない部分を認識していきます。

注意点としては、チームなど複数人でやる場合には、「信頼感の醸成」が何よりも先です。メンタル・モデルは危険性を敏感に察知しますので、信頼感のない状態では、そもそも内省もできません。何かに気づいたときにその人間を受け止められる場がなければ、その人はいたたまれず、去ってしまうことになりかねません。

ですので、信頼されている社員やファシリテーターとともに、少しずつやっていくとよいでしょう。

まとめ~変わりたくないのではない、変えられたくないのだ

「人間は変わりたくないのではない。変えられたくないのだ。」

この言葉は意識変革、行動変革を求める場合に記憶しておきたいものです。

「変わりたくなる」にはどうすればいいか。

そういう、メンタル・モデル自身が変化をよろこぶ観点から考え、取り組みをしていくと、意欲もわきながら、行動もどんどん変わるという好循環を作ることができます。

人や組織の問題は、「人間」の問題です。

共感によって信頼感ある関係を結びながら、内省よってどんな状況でも自分たちを自分たちでアップグレードできる会社になることを応援しています。

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P.S.

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執筆者紹介

オフィスオントロジー
代表 友成治由
組織活性化・人材育成コンサルタント
ベンチャーから上場実現企業でのトップコンサルティング営業から意欲心理学をベースとした組織活性化・人材育成へ。
本質価値意識による本質価値思考、価値創造、モチベーションアップで人材育成や会社業績向上を支援。
宮崎県出身。今もなまりはとれない。

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